七十四話 寝不足と帝国入り
投稿が遅れて申し訳ございませんm(_ _)m
「んん、、んー、スカハか?」
心地好い手で頭を撫でられているような気配がして起きると俺を見るスカハの端整な顔が目に入った。
「ん、おはようアレス」
どうやらスカハが俺を膝枕して頭を撫でていたようだ。
俺は顔を動かして昨日近くで寝たメリアと輝夜の寝袋を見たがいなかった。
「メリアと輝夜はテントの外で朝ご飯の用意をしてる」
俺の表情を見て内心の疑問を察したか、スカハがそう教えてくれた。
「メリアが?、少し寝坊したか」
メリアは俺たち四人の中でも一番寝起きが悪いので自分が寝坊したことを理解した。
その事実に頭を掻きつつ起き上がろうとした時あることに気付いた。
「スカハ、少しだけだけどクマがついてるな、最近寝てないのか?」
きちんと顔を見ないと分からないほどだったがスカハの目元に薄くクマがついているのに気付いた。
「ん、少し寝付けてないだけ大丈夫」
「カーズ・オルテイシアのことが気になるのか?」
鋭く返した俺の言葉にスカハは目を丸くした。
「何故分かった?、私が奴のことで頭がいっぱいだって」
「いや、流石にそこまでは分からなかったけどいつも寝るのが比較的早いスカハが眠れないほどのことってそれくらいしか無いと思ったんだよ」
俺は起き上がりスカハを見て言った。
「うん、アレスの言う通り、帝国に近づくにつれて奴のことばかり考えてる、アレスやメリア、輝夜と一緒に居る時は気にならないけどいざ一人になると考えてしまう」
スカハは視線を下に向けて言った。
「私は奴を強く憎むと同時に恐れている、奴は"覚醒”している魔族、その実力は本物、父にこそ及ばなかったけど強さだけだったら魔族随一、今の私では勝てる気がしない」
「ーーー、そうだ」
震える拳を見詰めるスカハに対して俺は少し考え、実行した。
「アレス?」
「いつもメリアやスカハがやるんだからたまには俺がやったって良いだろ?」
俺は正座に座りスカハの頭を自分の腿の上に乗せて頭を撫でた。
「俺の個人的な意見だけどスカハがカーズと戦うことはすなわち恐怖との戦いだと思うんだ」
俺はスカハの頭を撫でながら言い聞かせるように言った。
「スカハは意識を変えたとは言え親を、家族を殺した奴と戦おうとしてるんだ、怖いと思うのは当然だし当たり前の反応だ、けどもし出来ないと言うのなら止めてもいいんだ」
俺はスカハの青色の髪飾りを撫でつつ続けた。
「スカハはもう俺の一部なんだ、朝起きて、もし隣にスカハがいなかったら俺は生きていける自信がない、だからここで帝国に行くのを止めてそのままイグザード聖王国に向かってもいいだぞ?」
諭すように言ったアレスの手に自分の手を重ねたスカハはいつもの無表情を崩して微笑みながら言った。
「そこまで言ってくれて私は嬉しい、多分アレスがいなくなったら私もそうなる、私は"アレスいないと死んじゃう病”にかかってる」
「そんな病気があったら困るぞ」
ふざけたスカハの額を軽く小突いて俺は言った。
「私のためにそこまで言ってくれたことには感謝、でもやっぱり私は帝国に行って彼奴を倒さないとダメ、私スカハ・レヴィアタンの時間は父と母が死んだ時に止まり、アレスと出会ってちょっと動きだした、いつまでも過去には囚われない、もし今は奴の方が格上でも私は奴を超える、いや超えてみせる」
その瞬間スカハの双角が淡く紫色に光り身体から紫色のオーラがふわりと立ち上り消えた。
「どうしたのアレス?」
それを見て思わず固まった俺を不思議そうにスカハが見て言った。
「え?、いや、何でもない、何でもない、ほらほらクマがあるってことは身体は睡眠を求めてるんだから眠れ眠れ」
俺は咄嗟に誤魔化してそう捲し立てるのだった。
「スース、スースー」
しばらく頭を撫でているとスカハが寝息をたて始めた。
「おはようー!、朝ご飯出来たーーアレス?」
大きな声を出してテントに入って来たメリアに俺は素早く人差し指を唇に当てて"静かにしてくれ”と言外に示して俺の腿の上で寝るスカハを指さした。
「ああ、スカハが寝てるのね」
「最近少し寝れてないらしくてな、寝かして上げたいから出発するのはスカハが起きてからでもいいか?」
「別に構わないわよ、王国と帝国の国境にある砦には後半日も歩けば着くしね」
「助かるよ、メリア、後朝ご飯は持って来てくれないか、こんな状態だし?」
俺は俺の膝枕で寝るスカハを見て言った。
「いいけど、ねぇ、今度私もアレスの膝枕で寝ても良い?」
俺はその言葉に驚きメリアを見るとスカハのことを羨ましそうに見ていた。
「別に構わないけど、スカハが羨ましいのか?」
俺が揶揄うように言うとメリアは頬を赤く染めて言った。
「う!?、恋人に見透かされるなんて恥ずかしい」
「いや、結構分かりやすかったぞ、今にもスカハを退かして自分が入りたそうな空気を出てたぞ」
「そんな空気出して無いわよ!、、スカハが羨ましかったのは事実だけど…」
メリアは尻すぼみに言った。
そんなやり取りはいつまでも戻って来ないメリアを心配した輝夜がテントにやって来るまで続くのだった。
◆◆◆◆
二時間後にはスカハが目覚めて俺たちはテントを仕舞い街道に戻り歩き始めた。
「アレス!、あれは何でござるか!!」
興奮した様子で輝夜が指し示した方向に視線を向けると広大な山脈が広がっていた。
「あれか、あれは王国と帝国、更に魔法王国の国境を隔てている"カールゼルリトラス山脈”だよ」
輝夜が指さした広大な山脈はカールゼルリトラス山脈と言って王国と帝国、魔法王国の三カ国の国境となっている山脈であり数千メートル級の険しい山々が数多く連なり天然の要害となっており、三カ国の間で長い間戦争が起きていない理由の一つでもある。
「数百年前に各国が一部の山を魔法で削って街道を整備したことで国境を越えることは難しくなくなったのよ、それとカールゼルリトラス山脈は三カ国の国境を隔ててることでも有名だけど一際有名なのはあの山よ」
メリアが山脈の中でも一際標高が高く雲を突き貫く山を指さした。
「"霊峰テリュティオン”はいろんな伝説がある山、巨大なドラゴンが住んでいるとか古の遺跡が眠ってるとか沢山ある、けど行った人はいない、上の方に近づくにつれて息苦しくなって最悪死ぬ」
太陽の光を遮るように眉元に手を置き霊峰テリュティオンを見てスカハが言った。
「え、そんな危険な山なのでござるか?」
「全部口伝だからどこまでが本当か分からないけどな、元々カールゼルリトラス山脈自体登るのが危険な山だしその中で一番険しく標高が高い霊峰テリュティオンなら何が起こっても俺は驚かない」
若干驚きを浮かべた輝夜に俺はそう返した。
そろそろお腹が減ったのでお昼ご飯を食べようか考えていると大きな石造りの建物が見えてきた。
「あれが王国と帝国の国境砦か」
砦の通過門に向かって馬車や人が列を作っているのを見つけ俺たちもそこなら並んだ。
「ここもある意味懐かしい」
一緒に並ぶスカハがふとしたように呟いた。
「私が仇から逃げた時に通った場所で忌むべき場所」
「少しずつ、一歩ずつ越えればいいのよ、焦らないでスカハ」
恥じるように言うスカハにメリアがそう優しく言った。
「そうでござるよ、人は何もかも駆け抜けることは出来ぬでござる、メリアの言う通り一歩ずつでござる」
メリアと同じように輝夜も優しく微笑みながら言った。
「おい三人共、入国審査だぞ」
列が進み前の人が審査を終えたのを見て俺は三人に声を掛けた。
俺たちの入国審査を担当した兵士は俺たちのギルドカードと顔を確認して俺、メリア、スカハ、輝夜と確認して何故かスカハを見た時顔を酷く顰めた。
「魔族か、まだ生き残りが居たのか、異種族の分際で中々にしぶといな、そこの魔族以外は入国税銀貨一枚、魔族貴様は金貨一枚だ」
「おい!、ちょっと待て、何でスカハだけそんなに高いんだよ」
あまりの違いに思わず突っ込んだ俺に兵士は可哀想なものを見るように言った。
「はぁー、いいか、帝国の法律では人間以外の劣等種である異種族からは税金を多くとるんだ、異種族は俺たち人間に貢ぐために存在しているからな」
あんまりな言い方に俺は頬が引き攣りかけて背後から絶大な殺気を感じて思わず背筋が伸びた。
「あなた今、何と言ったのかしら?」
「よく聞こえなかったからもう一度とお願いするでござるよ」
殺気全開で微笑むメリアと輝夜は兵士を見て言った。
「ひっ!?」
あまりの殺気の密度に兵士は腰を抜かした。
「あー、その死にたくなかったらこれでいいよな?」
俺はアイテムボックスから銀貨四枚を差出して言った。
「そ、それは帝国法に…、ひっ!?、分かったそれで通っていい!!」
反論しかけてメリアと輝夜の殺気が増して言葉が続かなかった兵士は銀貨四枚を殴り取って俺をそれを確認して帝国内に足を踏み入れた。




