三十四話 謁見の場
初めて王城に行ってから一週間後今日は国王様から正式にアースドラゴン討伐報酬を貰う日だ。
「二人共、朝だぞ」
俺はベッドに寝転がる下着姿のメリアとスカハを見て言った。
「ん?、朝ー?」「ふわぁ」
案の定メリアは寝惚けていて、スカハは大きな欠伸をしている。
この一週間俺たちは鍛錬をしたり冒険者ギルドの依頼を幾つか受けていたが二人は少し寝不足気味かもしれない、理由は分かる。
多分昨日の夜のせいだ。
(考えないようにしよう、そうしよう)
俺は考えるのを止めた。
「今日は王城に行く日だぞ、そろそろ起きて着替えてくれ」
「了解よー」
「分かった」
二人はベッドを降りて浴室に向かった顔を洗って着替えるのだ。
俺は部屋の窓際まで行き王都を見渡した。
「流石に一週間も経てばアースドラゴンの解体を始めるか」
三日程前にアースドラゴンの死体を王都まで運ぶ依頼が冒険者ギルドにでてたくさんの冒険者が受けるのを見た。
今は王都の郊外で解体を騎士団と冒険者総出でやっていてその光景が部屋から見えるのだ。
アースドラゴンの素材は半分は冒険者ギルドの物にもう半分はアドモス王国が貰うそうだ。ちなみに俺はアースドラゴンの鱗三十枚とアースドラゴンの血を貰った。
どうやらドラゴンの血はとても凄い薬になるそうだが今のところ使う予定はないので数本の瓶に入れて腕輪に入れてある。
「お待たせよ」
メリアとスカハがキッチリと着替えて出てきた。
メリアはアースドラゴン戦で鎧がボロボロになって修理不可になってしまったので今は王女様から貸してもらった緑色を基調に銀色の花の刺繍が入った服を着ている、新しい鎧は王国から貰える報酬から貰う予定だと言っていた。
スカハは藍色を基調として胸に金色の交差した二本の槍の紋章(おそらくレヴィアタンの紋章)が入っている服だ、スカハ曰く一族に伝わる魔導服で動き易くて重宝していると言っていた。端的に言ってかっこいい。
「良しそれじゃあ行くか」
ちなみに俺の服装はいつも着ている紺色に紅い流線が入っている魔導服だ、王女様に聞いたところ上質な魔導服なので王様に正式に会う時にも着ていいと言われたのだ。
俺たちは迎えの馬車に乗って王城に向かった。
「アレス、謁見の場では王様に頭を上げてと言われるまで絶対顔を上げたら駄目だからね」
「そうなのか?、礼儀作法って難しいな」
俺は馬車の中でメリアから最低限の礼儀作法を教わっていた。
スカハは隣で俺の肩にもたれかかって寝ている、やっぱり寝不足だったみたいだ、そして寝顔がとても可愛い。
「王様ってたくさんの貴族をまとめる立場だからそういう格式も大切なのよ、それを怠ると貴族に舐められるからよ」
「王様には王様なりの苦労があるってことか」
「そう言えばアレスは貴族の爵位については知ってる?」
「爵位?重要なのか?」
俺は知らなかったがメリアが聞くということは大切なことではないかと思った。
「とても大切よ、基本的に爵位は一番下から男爵、子爵、伯爵、辺境伯、侯爵、公爵の計六つあって上に行くほど権力が強い傾向にあるわ、確かノイスを治めてるガエリオ家は辺境伯よ」
(辺境伯!?、上から三番目ってことはガエリオ様って結構偉かったのか知らなかった)
「私もアドモス王国の貴族全員を知ってるわけじゃないけど辺境伯より上の人とは仲良くして損はないと思うわ」
「分かった、出来るだけ努力してみるよ」
「《雷光》の皆様そろそろ王城にお着きになります」
馬車の御者の人が教えてくれた。
「分かりました、スカハ起きろ、そろそろ着くぞ」
「ん、ふわぁ、おはようアレス」
スカハは目元を擦りながら言った。
(これから近衛騎士団団長と戦うにの緊張感がないな、まぁ変に気負うよりはマシか)
俺はスカハの様子に若干呆れながらそんなことを思った。
前に王城に行った時にはきちんと見ていなかったが王城は中心にある城を基点に東西南北と区画が別れており王城に務めている人の宿舎がそれぞれ部署ごとにある、それ以外にも魔法研究所などがあるらしい。
俺たちは大きな扉の前に居た。
「これってまさか…」
「謁見の場の扉でしょ?」
(大きいな!?、何でここまで大きいんだ?)
「自分はこれだけ力があるんだぞって示す為よ」
メリアが俺の表情から疑問を読み取ったのかそう言った。
「銀鉄級冒険者パーティー《雷光》の入場です」
扉の奥からそんな声が聞こえて扉が開いた。
入った瞬間大量の視線を頂戴した。
謁見の場は思わず見上げてしまう程天井が高く正面を見ると先日会った国王様が玉座に座り俺たちが歩く両脇に豪華な装飾の服装をした太ったり何か武術をやっていたり若かったり歳をとっていたりと様々な風体の男たちが並んでいる。
(この人たちが貴族か、視線が凄いな)
俺は思わず表情が引き攣りそうになった。
一人俺を驚いた目で見ている人が居た。
玉座の一番近いところに居る茶髪の壮年の騎士だった。
俺は疑問に思いながらも玉座の前まで歩き跪いた。
場に静寂が満ちた。
「面を上げよ」
静寂を破り威厳のある王様の声が響いた。
言葉に従い王様を見た。
「此度のアースドラゴン討伐大義であった、その功に報いて王金貨六枚と国宝を三点授ける」
俺は喋らない。メリア曰く謁見の場では王様に話しかけてはいけないのだそうだ。
文官と思われる男性三人が国宝を乗せたカートを押して俺たちの前に来た。
「立ち上がり、品を確認せよ」
王様から声がかかったので立ち上がり国宝とやらを手に取った。
俺たちは事前に何を貰うか決めていたので迷わず手に取った。
俺が決めた報酬はちょっと特殊な魔道具だ。
正三角錐型の魔道具で魔力を流すと野営に使うテントを一瞬で張れて更に流す魔力量によって中の大きさが変わる仕様で魔物が嫌がる匂いを出すらしく弱い魔物は近づかないのでとても便利だ。
俺は魔剣や魔槍などの武器には興味が無かったので便利そうなこれにしたのだ。
メリアは銀色の額当てを手に取り身につけた。
「"銀光よ、我が身を覆え”」
そしてメリアが何事か呟いた瞬間メリアの姿が光り服装が緑色の服ではなく銀色のドレス甲冑に変わっていた。
「よし、成功ね」
メリアは全身を見渡して呟いた、そして再びメリアの姿が光り元の緑色の服に戻った。
「「「おーーーー」」」
周りの貴族たちの驚く声が聞こえてきた。
俺も驚いた。
スカハが手に入れたのは魔力を流すと伸びたり短くなったりする魔槍だ。スカハは限界まで短くして左胸のボケットに入れて予備の武器として使うようだ。
「静まれ」
王様の声が謁見の場に広がりザワザワと騒いでいた貴族たちが静まった。
「メリア殿、あまり派手な演出で貴族たちを興奮させないでやってくれ」
「失礼しました、国王陛下」
メリアは美しく頭を下げた。
「よい、これから始まる余興の前座にはちょうど良い、皆も聞いていると思うが彼らは王都アドモスを滅ぼそうとしていたアースドラゴンを討ち取ったが我らは彼らの戦いを直接見たわけではない、そこで《雷光》のメンバーで槍使いのスカハ殿と近衛騎士団団長レムスの模擬戦を行ない、その力を見てみようではないか」
王様が宣言した瞬間貴族たちの目が変わった、主に好奇に闘志、羨望と言ったところだ。
俺とメリア、貴族たちが後ろに下がり玉座の後ろにいた騎士たちが準備を始めた、使う武器は流石に本物の剣と槍は使えないので刃が潰された模擬剣と模擬槍だ。
先程俺を見て驚いていた壮年の騎士が模擬剣を受け取り前に出てきた。
おそらく彼が近衛騎士団団長なのだろう。
スカハも騎士から模擬槍を受け取った。
「アドモス王国近衛騎士団団長レムス・フォン・アスカードだ」
二人は向かい合うように立ち壮年の騎士レムスが剣を中段に構えて名乗った、正式な決闘のルールだ。
「銀鉄級冒険者パーティー《雷光》のスカハ・レヴィアタン」
スカハも槍を構えて同じく名乗った。
「それでは立ち会い人は近衛騎士団副団長の私、ハロルドが行ないます、、それでは始め!」
二人は同時に動いた。




