ハゲアリハゲナシケナシさん、あんた何してんの!!
今回も、時代から大いに遅れた勇者様と、愉快な仲間たちは登場いたしません。
が、タイトル通り、ハゲの話にさせてもらってます。
ちなみに彼のハゲアリハゲナシケナシには元ネタがあってですね、それはトゲアリトゲナシトゲトゲという、かなりふざけたネーミングを付けられた虫です。
トゲがあるのか無いのかどっちなんだ!
これが刀禰ことハゲアリハゲナシケナシを表現することに打って付けだと思い、彼のニックネーム?にさせていただいた次第です。
まあ彼は、まごうことなくハゲまくってますが(笑)
では、お待たせいたしまして申し訳ありません。第十話をお楽しみくださいませ。
「なんだってわしが、こんなにも多量の書類を書かなければならないのか」
ハゲアリハゲナシケナシこと、刀禰長一郎は嘯く。
『ほら、地下街の例の騒ぎですよ。どうもわしはコスプレとやらに縁が深くなりましてな』
などと言い残し、かっこよく署長室を後にしようとした瞬間に、『逃がさないよ?』と、署長にグッと肩を掴まれてソファーに押し戻されたハゲは、毛の前に、いや目の前にドッカと置かれた各種書類の書き方マニュアルの束を見せられた途端、気がめいってしまったのだ。
「始末書に顛末書の書き方って、何ですかコレ?」
「何ってチョーさん見たまんまだよ。あんたが仕出かしたことわかってる?」
「そりゃ、まあ」
「得体に知れない男共の留置所脱走を許し、おまけに勝手に留置していた少女を誘拐され、あまつさえ生死不明だったとはいえ、同僚の頭が木っ端微塵だよ?これね、普通ならクビだよ。ク・ビ!」
わしとは違い白髪ながら髪ふさふさの署長が、その髪をゆさゆさ揺らしながら畳みかける様に言い放つ。
「あたしだって引責辞任モノだったんだからね。これ書いて貰わないと困るんだよ。ね、ここはあたしの言うことを聞いてね?捜査は超優秀な本庁の捜査員と超優秀なうちの捜査員に任せて、ね?」」
「へいへいへい」
「あと、署内でしばらく謹慎してもらうからね。そこのところよろしく」
署長によれば、これだけの大事件をマスゴミ、いや、マスコミの自称インテリが放っておくはずもないらしく、視聴率と部数を荒稼ぎする為にぞろぞろとココに集まって来ているらしい。
本当ならばわしはとっくに署を離れ、警察とつながりがあるどこぞのホテルか旅館に軟禁されている身分らしく、先程面会した少女御一行様が現れなければ、前後左右を屈強な機動隊員辺りに警護という名の拘束状態に置かれて運ばれていたそうな。
「だからね、ここは自重して貰わないとヤバいの、特にあたしの未来が!」
一年もすれば定年退職が待っていて、その後の天下り先も、有力警備会社の重役という将来が保証済みのふさふさ署長が懇願して来る。
わしとてコイツとは長年の付き合いだから、聞いてやらなくもない気持ちでいっぱいだったが、でもあんなコスプレ野郎にしてやられたことが無性に腹立たしく、とてもではないが言うことを聞く気になれなかった。
「あ、そう。じゃ、好きにすればいいじゃない」
「好きにしていいのかね」
「かまわんよ。速攻逮捕してやるんだから」
「うへ」
世間的には人の好さげな爺さんと云っていい署長が、口をとがらせてそっぽを向く。
「わかった。で、わしは何処の部屋にねぐらを構えたらいい?」
「あ、分かってくれた?嬉しいな♪それならいい部屋があるよ。いっちゃう?」
で、連れて行かれたのがココ、重要物品保管所横の小部屋である。
「好きに使ってくれていいから、ご飯は留置所配給の余りで、お風呂は署内のシャワーを三日に一回使えるように手配してるからね。では、ごゆっくり~♪」
わしによって将来が担保された署長がウキウキ気分で出て行った。アホだなアレ。昔から知ってたが。
やれやれ、しかしコスプレ野郎と似た境遇に置かれるなんざ考えもしなかったわ。
部屋を見渡して思った感想は、これって取調室と留置所の合体技じゃねぇか。だった。
「さて、しこしこ書くと致しましょうかね」
部屋の真ん中に簡易ベットと供に置かれたデスクに向かい、手渡されたマニュアルを見ながら下書きを始める。
「警察庁長官と警視総監宛に一通づつに、方面総監向けにも一通。それに、なんだよ署長宛まであるじゃねぇか」
一体わしは何人宛に書けばいいのか、最早訳が分からない。
「こりゃ、肩がこるな」
コキコキ肩と首を鳴らしながら机に向かい続ける。すると何やら隣の部屋のドアが開き誰かが入る気配がした。
「なんだ、こんな時間に」
気になったハゲアリハゲナシケナシこと刀禰は、自室のドアを開け様子を窺う事とした。
「ん、アレは鑑識課の連中か」
隣の重要物品保管所から、段ボール箱を幾つかラックに乗せ出てきたのは署内に勤める鑑識の奴らだった。
「うわ、チョーさん!」
「あ、えっと、この度はご愁傷さまで…」
帽子を脱ぎ礼をするこいつらに、おお、御苦労さんと声を掛け、おもむろに近寄る。
「で、お前ら何してんの?」
「ああ、これですか?例のチョーさんが取り逃がした。いえ、あの」
「気にするなよ、で、どうするんだこれ」
気を使う鑑識の若いのの肩をポンと叩き、これは何なのか、どこに運ぶのかと聞いた。
「上からの指示で、あのコスプレ野郎が所持していた物品を本庁に運ぼうとしていたんですよ」
「ほう」
ハゲハゲのツルツル…刀禰は若いのの言い分に興味を持った。
「それにしてもこんな夜更けに運び出そうなんざ、おかしいだろう」
「そうなんですが、命令なもんで」
「そうか、ちょっと中覗かせてもらえないかい」
「いや、それは」
「ちょっと、ちょっとだけだよ」
無図がる若い奴らを押しのけて、段ボールの蓋をこじ開ける。
「わしがアンニャロを取り調べる際に見たまんまだな」
覗いた段ボールは三つ。
一つには変な匂いがこびり付いた古めかしい鎧と、鍛えられた鋼で作られたとおもしき直刀の剣。それに木を束ねて作られた強靭な弓と鏃の大きさが違う弓矢。
「これといっておかしなところは、ないか……。うん?」
「もう、チョーさんは強引なんだから。あとでバレたら僕らが叱られますから閉じますよ!」
サッと段ボールの蓋を閉じた鑑識が、またやられては大変だと、そそくさと階段を駆けるように上がって行った。
「成程、これがかぎかもしれないわ」
ニンマリ微笑んだわしは、やれやれと自室に引っ込んだのだ。




