5-3:水槽
拠点に戻ったところで、若桐は考え込んだ。
「どうしたんですか?」
「いや……、おまえは俺が一人で水汲みに行くの嫌がるだろ? だが、この拠点には水槽がないし。おまえが寝てる間は、ホエールから水を出せないから、どうしたもんかなって考えてた」
「水槽? 水族館の巨大なやつみたいな?」
「もっとこう……、防火水槽みたいなサイズのが良いんだけど」
「防火水槽って、なんですか?」
「え、そっから……?」
若桐は、説明を待ってワクワク顔の真壁を見やり、溜息を吐いた。
「ジェネレーションギャップを感じる……」
「えっ?」
「別にここでマグロとかマンボウ飼いたいわけじゃないんだし。生活するのに、ちょこっと水が使えたらなって話じゃん」
「……そっか。じゃあ、雨水タンクぐらいでいいってことですね」
「そうそう」
「それなら、僕が木を切り出せば良くないですか?」
「はっ?」
「だってほら、かまいたちみたくスパッて切れますから。加減すれば材木えぐるぐらい出来ると思うんです」
「そうなの?」
「はい! ……ちょっと、練習は必要かと思いますが……」
「うん。森林破壊しない程度にしてね」
「守さん……、僕を災害かなんかだと思ってます?」
「だって、一旦これって思い込むと、スゲー集中力を発揮して、思い詰めるからさぁ」
「そもそも、森林破壊するほど大量の練習しなきゃ習得できないとか、僕が納得できません」
「わかった、わかった。悪かった」
若桐は真壁の頭を撫でながら、額にキスをする。
「許します」
「じゃ、水槽は百合緒に一任するから、よろしく頼むな」
「はい!」
真壁は、嬉しそうに笑った。
「あと、鍋なんだけどな」
「はい」
「粘土こねて、作るか……」
「えっ……? 鍋と粘土に、なんの関係が?」
「だから。縄文式土器ちゅーの? 粘土こねて形にして、焚き火で焼き固めて器にするんだよ」
若桐の提案に、真壁は些か混乱しているような顔をしている。
「土器……」
「だって、海水が入手できる目算がついても、結局はそこで立ち往生だろ? 泉の周辺に、結構ねっとりした土があったし。あの辺の土壌を精査すれば、粘土ぐらいあるんじゃないかと思うんだよな」
「異世界に来たら、ダンジョン攻略とかするんじゃないんですか?」
「そういうセオリーだか、お約束は、俺にはわからんからなぁ。……てか、ダンジョンなんてあるの?」
「北東東の洞窟とか、めちゃくちゃ怪しくありません?」
「あ〜、イノシシみたいな嫌な感じのする穴か……。洞窟探検は、明かりの確保と、道中の食料を用意してからだろ?」
「明かり、必要かなぁ? イーグルで夜間飛行する時、目視はしませんよ?」
「俺は飛ばないよ?」
「コントロールタワーなんだから、レーダーぐらいあるんじゃないですか?」
「書いてなかったじゃん」
「僕を肩車してる時、レーダーだって言ったのに!」
「そうだっけ?」
真壁は「もう! 適当なことばっかり言うんだから」と言って、若桐をぽかぽか殴る。
「わかった、わかった。じゃあ、肉がすぐに食えるように焼いておいて、そんでその洞窟っての、見に行こう」
「やった!」
ぎゅうっと若桐をハグして、真壁は嬉しそうに笑った。




