ヒメ「視聴者としての、義務と権利の話」
ザキ……アニメオタク。監督や制作会社、声優なども含めてアニメだと思っているからこそ、「〇〇が関わっているから見る」というスタンスは基本とらない。すべて勘案したうえでどの作品を見るか決めている。優先順位があるだけで、可能ならすべて見たいと思っている。
モヒ……マンガオタク。作者買い上等。でも基本は「目に触れた“面白そうなモノ”すべてに手を出す」という雑食派。好きな作品のアシスタントに入っていた人の連載作とかも取り敢えずチェックする。暗記しているわけではなく、都度調べている。
ロキ……ラノベオタク。新人賞受賞作のチェックから始まり、好きな作家は作家買いするし、仮に処女作がハマらなくても新シリーズは試し読みくらいはする。作品の内容だけではなく「作家固有の書き方の癖」が自分に合っているかも考慮するため、作品名と作家名はセットで覚えている。
ヒメ……ヲタクオタク。メディアによって作品の解釈が違っていたり、原作者が監修していても微妙に解釈に差があったりするので、しっかり見たいときはひとつの作品を複数のメディアで見比べる。人に勧めるときは自分が気に入ったものを勧めるが、基本的には勧められる側の人間。
ザキ「ちょっと聞いてはくれまいか」
モヒ「やだ」
ロキ「もう導入から面倒くさい」
ザキ「塩対応すぎる」
モヒ「なんかもう毎度のことやしな」
ロキ「俺らもアホちゃうからな。慣れてきたわ。あ、これめんどいやつやって」
ザキ「さっきまで『面倒くさい』やったのが『めんどい』になってるやん。もうそこから言うのが面倒になってるやん」
モヒ「細かい」
ロキ「めんど」
ザキ「…………わかった。俺が悪かった。もう掘り下げへんから、俺の話聞いてくれ」
モヒ「聞き流してええんやったら」
ロキ「聞いてるふりでええんやったら」
ザキ「………………まあええやろ。実はな、俺の友達にアニメを海外の無料サイトで見てるやつがおってな」
モヒ・ロキ「「ギルティ」」
ザキ「……めっちゃ素早い反応ありがとう。バリバリ聞いてくれてるのは嬉しいけど、否定が強すぎてその友達がおったら泣いてまいそうやぞ」
モヒ「そんなもんは友達とちゃう」
ザキ「そこまで言う!?」
モヒ「そうやなくて。それを知ってても止めへんようやったら、そんな関係性は友達とは呼ばれへんやろってこと」
ザキ「ああ、俺の方か。……いや、一応言ってんで? でも、そしたらお前が金払ってくれるんかとか、カード持ってないのにサブスクに登録なんかできへんとかさ」
モヒ「言い訳乙ー。無料サイトは得てして違法やねんから、何言うても――」
ロキ「まあまあまあ。その辺にしとけって。リテラシー的にな?」
モヒ「……リテラシー的に?」
ロキ「そう。リテラシー的に。人にはいろいろ事情があるからな。……それはそれとして、その友達がどうかしたん? 話したかったんはその先やろ?」
ザキ「おお、せやねん。その友達が言うにはさ。『この作者、前作のラブコメは面白かったのに、今作のシリアス、スベリまくってるやん。編集何しとんねん。ラブコメだけかかせとけや』って」
モヒ・ロキ「「ギルティ!!」」
ザキ「……なんかさっきより前のめりとちゃうか?」
モヒ「そらあかんやろ」
ロキ「せやで。誰やったかも言うとったで? 『読者にあるのは作品の話を変える権利じゃない。その作品を読むか読まないかを選択する権利だ』って」
ザキ「久保さんやな。名言」
モヒ「つまらんねんやったら読まんかったらええねん。親切面して『おもんない』とかわざわざ言わんでも、誰もオススメせんようなったら勝手に消えてくねんから。おもろい思って読んでる人を不快にさせるだけでしかない」
ロキ「微妙に話ズレてんで? 作者に『もっとこーせぇ』言う権利なんかないって話とちゃうかった?」
ザキ「でも、作品そのものの方向性とかは論外としても、『もっとこういう絡みが見たい』とか、『誰それの出番がもっと増えてほしい』とかはよくない?」
モヒ「……それは別にええ気がするな」
ロキ「要は、読者の声がまったく聞き入れられへん作品も作者の独りよがりになるし、聞き入れすぎてもその人の作品じゃなくなるって話やろ。……そう考えるとめんどーやな」
ザキ「ロキ今日ずっと面倒くさがってるやん。そのうちナマケモノなって、身体からコケとか生えるんとちゃうか」
ロキ「泳ぎだけ得意という点から鑑みて、もっともナマケモノに近いのはモヒ」
モヒ「流れ弾――と思ったけど、一日に葉っぱ四、五枚で活動できるんやから、コスパええよな。バイト帰りに腹減って買い食いして、結局マンガのための資金が飯代に変わったことなんか数え切れんほどあるし」
ロキ「あー……金銭的な問題は常にあるよな。金がないからって海外のサイトでアニメ見るやつとか」
ザキ「おっとここで帰ってくるか。よっぽど腹に据えかねてんな」
モヒ「むしろアニメ勢なザキが一番怒ってると思ってたんやけど?」
ザキ「小一時間ほどガチ説教しただけで、そんな怒ってないって」
モヒ「怒ってるの基準って何やっけ……?」
ヒメ「まあ、今回はいろいろな要因が重なっていたものね。怒るのも無理ないわ」
ロキ「ほう。いろいろな要因とは?」
ヒメ「金銭を支払っていないのに『客』のように振る舞うこと。サブカルチャーに対してのマナーやモラルが理解できていないこと。何より、相手が重度の『ヲタク』だったこと。…………とかね」
ザキ「最後のが『何より』の括りになるあたり、ヒメって感じよな」
モヒ「むしろ遠回しにオタクがディスられた気すらしたけどな?」
ロキ「まあ、オタクの厄介さは今に始まったもんでもないし。オタク相手に一般人がサブカル語るときは気を付けなあかんっていう、いい例やな」
ヒメ「そんなことを言っているから、オタク文化への敷居が高くなるのよ? もっと誰もが楽しめるような環境作りをするべきだと思うわ。ヲタクから、率先して」
ザキ・モヒ・ロキ「「「めん……」」」
ヒメ「……それって、『面倒くさい』を言うのすら面倒くさがった結果? ねえ、揃いも揃って目を逸らすのはなんで?」
ザキ・モヒ・ロキ「「「め……」」」
ヒメ「ミス・メ〇ークリスマスみたいになってるわよ!? ねえちょっと!?」
ザキ「おお! ヒメの方からそんな例えが出てくるとは!」
モヒ「珍し! 嬉し! やったあ!」
ロキ「我が子の成長を喜ぶ親の気持ちがわかった……」
ヒメ「……こんの、オタク共!!!!」




