4.塔の魔法使い、エーリング=フェランプレヴォ様の攻略を妨害しますわ
お昼です。
今、派閥の皆……いえ取り巻……いえお友達とお昼を取っています。
お昼を優雅に取りながら、雑談を楽しむ時間。
「あの平民上がりのピンク頭、性懲りもなく、またアレクサンドル殿下にまとわりついてましたわ。」
……雑談……
「相変わらず、アレクサンドル殿下も迷惑していますでしょうに。」
……雑……
「本当にべたべたと、目障りですわ。」
……
愚痴を言うのもストレス解消の雑談のうちです。
ただ、エスカレートすると、取り巻きにいじめられるヒロインを、攻略者が見かけて、助けるイベントが始まってしまいますし、結構その手のイベントは多くあるのですわ。
結構愛情度が上がったり、きっかけのフラグになったりしますので、止めないといけませんわね。
「野良猫が一匹じゃれついているようなもの、あまり騒ぐのも見苦しいだけですわ。」
「まあ、アルフィオーネ様おやさしい。」
「あんなに目障りな真似をしていますのに。」
「気付いてしまいましたの。あんな野良猫一匹に目くじらを立てて追い回すなんて、それこそ私の品格を疑われてしまうと言う事に。」
そのまま沈痛な表情を作ります。
「アルフィオーネ様……」
「あなた達もね、あまりあんな野良猫一匹に構っていると、私達の品格が疑われてしまいますわ。あの猫と同格に騒ぐなんて……と……。」
だから、ヒロインをあまりいじめないで下さいね。
「アルフィオーネ様……わかりましたわ。」
「とっても目障りですけれど……あれと同格はごめんです。」
「わかっていただけて良かったわ。」
皆さんを見ながらにっこりと笑います。
そのまま話を変えてしまいましょう。
「今度、中央広場に飲み物を売るカフェを開きますの。」
細かい打ち合わせは学校に来る前に済ませて来ました。
あとはカフェの皆さんに頑張っていただきましょう。
「まあ、カフェですの。」
「あの場所にお店を開かれるなんて流石アルフィオーネ様。」
「皆さまたち専用のテーブルも用意いたしましたので、仲良く順番に飲みにいらして下さいね。」
「もちろん。」
「仲良く、順番に伺いますわ。」
「お願いね。」
ゲーム内では、席を占領したり、取り合いの諍いを起こしたことを表向きの理由に、悪役令嬢の取り巻きは使用禁止を言い渡されてましたもの。
攻略者とヒロインには専用席が有りましたの。
ですから今回は逆に私たちが専用席を作りますわ。
「そういえば、新しく中央劇場でかかった劇、見られました?」
「いえ、まだですの、どんな劇でしたの?」
「ちょっとした喜劇なんですけれど、これが面白くて……」
普通の雑談になりましたわね、後はゆっくりとしていましょう。
それにしても、中央広場に私たちの居場所が出来たのは良い事ですわ。
中央広場はアレクサンドル殿下との密会の場、薔薇の迷宮から他の場所へ行く場合に通らなければ他に行くことが出来ませんの。
ですから、殿下との逢瀬の行き帰りに、ここで取り巻きたちと絡んで時間を使ってくれれば……って絡まないようにみんなに言ってしまいました。
作戦失敗ですわ。
「……ですわね。」
「あら、もうすぐお昼休みが終わりますわ。」
「ではみなさんまた明日。」
「ええ、また明日に。」
考え事をしている間に、今日のお昼の雑談もお開きになるようですわ。
今から一仕事をしませんと。
そう、塔の魔法使いことエーリング=フェランプレヴォ様の攻略を妨害しますの。
エーリング様が断罪ステージに登場すると、断罪と共に捕縛されます。
捕縛されてしまうと、修道院や外国を自分で選べず、戒律の厳しい修道院に送られたり、北国の強制労働に変わったりします。
反省して二度と二人の前に現れない事を誓えば(魔法で誓いを破れないようにされます)、解放されるので、修道院や外国はまた選べるようになります。
私は二人に会う気もないので、喜んで誓いますが、もう一人、マイケル=ビーテルセ様が一緒にいると、誓っている間に、彼に捕縛されてしまいます(結果は同じ)。
なので妨害いたしますわね。
エーリング様は学園の北西にある塔に住む、若くして凄腕の魔法使いで、ほぼ毎日塔にこもっていますの。
彼との出会いは、塔の近くの森、通称妖精の森で一人でいるところから始まりますわ。
妖精の森にふらりとやって来たミリアナ嬢に興味を持ったエーリング様は、気まぐれに姿を現し、会話を楽しみます。
それからも良く妖精の森にやって来るミリアナ嬢と秘密の出会いを重ねるうち、思いが募りプロポーズをするのが流れですわ。
ゲームでは、妖精の森に一人で入ると、エーリング様が(中確率で)出現し、攻略開始です。
何度も妖精の森で出会い、適切な選択肢を選ぶ事と、森で誰かと会っていることをしゃべらない事の二つを守っていれば、やがてプロポーズを受けて、攻略は完了しますの。
妨害方法としては、二人が出会ったことを確認した後、妖精の森でのことを噂として学園中に流せば、妨害できそうなのですが、エーリング様は自分の塔を超えて、塔の周りの妖精の森にいる人間を把握してしまいます。
なので、妖精の森に影はつけられないので、二人が出会ったかどうか確認できません。
なのでまた、二人きりにさせないようにする事で、妨害することにします。
みんなでの食事が終わった後、解散しようとしている皆様のうち、ポーリーヌ=ラブース様の所へ向かいます。
「ラブース様。少しよろしいかしら。」
ポーリーヌ=ラブ-ス伯爵令嬢様。
物静かでおとなしいエーリング様好みの女性です。
間違ってもエーリング様の嫌いな、空気を読まず積極的にぐいぐい迫る様な行動をして、森の外に追い出されることは無いでしょう。
「ア、アルフィオーネ様。な、なんでございましょうか。」
「ちょっとお願いしたいことがございますの。」
と言いながら人気の少ない方に誘導します。
大勢の人の前で企み事は、ちょっと。
「ア、アルフィオーネ様、な、何かいたしましたでしょうか。」
ちょっとびくついてますね。
別に何もしませんのに。
「ラブース様、妖精の森についてご存じですか。」
「はい、学園の北西にある森だったかと。妖精が出るという噂を聞いたことがあります。」
あら、びくついていたのが収まりましたわ。
これでゆっくりお話ができますわね。
「その噂を確かめたいんですの。」
という建前…いえお願いとしては真実でしたわ。
「確かあの森に一人でいると、妖精が出てくるという噂でしたが。」
「ええ、ですからラブース様に、あの森にいて欲しいのです。」
一人であの森に。
「私が自分で確認しようとしても、一人で行くのは難しいので。」
「お知りになったら皆様が付いて来そうですね。」
ええ、取り巻きの皆さんが、エーリング様の嫌いな騒音をまき散らしながら。
間違いなく森の外に飛ばされてしまいますわ。
「ですから、ラブース様にお願いしたいのです。」
あなた一人なら森の外に飛ばされることは無いでしょう。
「ただでとは申しませんわ。」
持ってきた2~3冊の本を取り出します。
「確かこの前こちらの作家の本が好きなのに手に入らないとおっしゃってましたわね。」
「はい。覚えていて下さったんですか。」
瞳がうるんでいるわ。そんなにこの本達が読みたかったのかしら。
「こちらのほかにも、同じ作家の本が手に入ったらまたお渡ししますわ。ですから…」
「はいっ。妖精が見つかるまで、しっかりあの森にいますっ。」
凄い意気込みだわ。そんなにこの作家が好きなのかしら。
「じゃあお願いね。誰かに何か言われたら、私の名前を出して良いから。それと他にあの森にどなたか来たら知らせていただけないかしら。」
例えば、ミリアナ嬢とかミリアナ嬢とかミリアナ嬢とか。
「はいっ、わかりましたっ。お任せくださいっ。」
「お願いね。」
これで、妖精の森で二人きりにはなれませんわ。
それでは、教室に行かないと。
遅刻はまずいですわね。
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