2.北の国から来た皇子、ウルリケ=ツヴァイス=フル=フロスト皇子の攻略を妨害しますわ
前世の記憶が戻った以上、ここにいる必要はありません。薔薇の迷宮を抜け出して、屋敷へと帰って来ました。
屋敷で制服から着替えたら、まずは影達、わが家の諜報部隊に指令を出します。
ヒロインの行動調査です。
とにかくヒロイン複数攻略をする気が有るのか、有るのなら誰を攻略するかを調査します。
結果が分かるまでは、全員を攻略している前提で、対処していきます。
タッチの差で失敗なんて嫌ですからね。
まずは北の国から来た皇子こと、ウルリケ=ツヴァイス=フル=フロスト皇子の攻略を妨害することにしましょう。
ウルリケ皇子が断罪シーンに参加すると、結果が修道院行きから国外追放に変更されます。
修道院選びから、移住先選びと資金の事前持ち出しに変わるだけなので、妨害しなくても良いのですが、彼が二人以上の攻略に絡むとちょっと寝覚めが悪いことになるので一応妨害しますの。
ウルリケ皇子は北の国、フロストランド皇国から留学してきた皇子で、留学の目的は結婚相手を見つける事ですわ。
彼とは学園内の人気のない場所で、一人佇んでいる彼に出会う事から始まりますの。
その時の会話が忘れられない二人は、学内ですれ違うごとに思いが募り、ウルリケ皇子の侍従の反対にもめげず、ついにはプロポーズとなるのが流れです。
ゲームでは、初登場場所の3か所のうちの一か所に向かうと、ウルリケ皇子が(低確率で)出現し、攻略開始です。
後はどこかですれ違うだけで何もしなくても愛情度がアップして、(たとえ他人が居ても)お話は進みます。
そのままどこであれ、(人が居なければ)恋愛イベントや皇子の侍従の妨害イベントが起こります。
妨害イベントはパラメータが一定になるまで恋愛イベントが進まなくなるのですが、アレクサンドル殿下を攻略できるだけのパラメータが有ればクリア出来、進みます。
そして何処か二人きりの場所でプロポーズイベントが起これば攻略完了です。
つまり、出会って攻略が始まれば、後は学校に通っているだけで勝手に話が進んでプロポーズまで一直線です。
妨害方法を思いつきません。
なので、出会いイベントを邪魔させていただきますわね。
学園の平面図を携えて、お父様の執務室へと向かいます。
折角お父様にお会いするので他の事も一緒にお願いします。私には甘いお父様なので、多分お願いは叶えていただけるでしょう。
(コンコン)「お父様失礼いたします。」
「イザベルか、入りなさい。」
そのまま執務室に入るとお父様の方へ向かいます。いつもながら、落ち着いた雰囲気の中に羊皮紙の香りが漂っています。
「イザベル、どうかしたのかい? 手に書類などを持って。」
お父様がこちらへ顔を上げました。私そっくりの吊り上がった目が私を認めてやわらかくなります。不思議ですわよね、お父様だと精悍な目なのに、私だといじわるそうな目ですのよ。
「お父様、お願いが有りますの。」
「なんだい?」
お父様の目の前に立ち、学園の平面図を広げます。
「ここと、そこと、あそこの三か所ですが、行き止まりで、人通りもなく死角になっていて、治安上良くないと思います。それぞれ他の場所と繋げることで、人の流れが生まれて、問題が解消されると思いますの。なんとか出来ないでしょうか。」
平面図の上で、それぞれの場所と繋げる場所をを指さします。
「そんなことか、かまわないが、完成するのはイザベルの卒業後になってしまうよ。」
「かまいませんわ。後からはいる人たちが心地よく過ごせるのでしたら。」
ええ、3月までそこに人が居ればいいんです。
二人っきりでイベントが進まなければ。
「イザベルは優しい子だね、わかった。そうしよう。」
「ありがとうございます、お父様。他にもお願いしたいことが有りますの。」
「なんだい?」
「ここにある噴水を撤去してほしいんですの。そうすれば、通路をもっと広く使えますし、噴水の水で服が濡れることも無くなりますわ。」
噴水のある通路を指さします。この噴水、私がヒロインを突き飛ばすイベントがあるのです。冬ですし水浸しから肺炎なんて嫌ですわ。
「そうかい、それは邪魔な噴水だね。撤去するように言っておこう。」
これで、噴水でびしょ濡れになるイベントが無くなりますわ。突き落とす気が無くても念のため。
「それから、ここの階段、幅が広くて、一直線なので、足を踏み外すと一番下まで落ちてしまいますの。とても危ないので何とかしたいのですわ。」
中央階段を指さします。ここ、一番上から私がヒロインを突き落とすイベントがあるのですよね。一つ間違えるて大怪我させるなんて嫌ですわ。
「わかった。その階段も安全になるように改装しよう。」
「ありがとうございます、お父様。」
これで、階段から突き落とすイベントも無くなりますわ。こちらのイベントも起こす気は有りませんけれど、何が有るか分かりませんからね。
「他には何かないかい。」
「お父様。あと一つ有りますの。この中央広場に飲み物を売るカフェを開きたいんですの。」
中央広場を指さします。ここ、地図でもわかるくらい移動の要ですのね。
「ふうん、それはまた変わったお願いだね。」
「この辺りまで歩いていると喉が渇いて来るのですわ。それにつかれた時に、ちょっと座りたいんですの。」
それ以外にもいくつかありますわ。ちょっとした嫌がらせや、意趣返しが主ですけれど。
「そうかい、じゃあカフェを開こう。うちのカフェの支店を出すから、細かいことは、カフェと打ち合わせてくれるかい。」
「分かりましたわ、お父様。有難うございます。こんなに沢山叶えて下さって、とても嬉しくて、感謝してもしきれませんわ。」
ええ本当に、ウルリケ皇子の攻略の邪魔から、イベントの抹消まで色々進みましたわ、お父様有難うございます。
「なに、かわいいイザベラの頼みだ、いくらでも叶えよう。」
「ありがとうございます、お父様。これにて失礼しますわ、お仕事頑張って下さいね。」
「ああ、もう行ってしまうのかい、またいつでも訪ねておいで。」
寂しそうなお父様を残して、そのまま部屋から下がりました。相変わらず私には甘いお父様で助かりましたわ。今日できることはこれで終わりかしら。
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