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記憶が戻ったら、断罪が確定していました。婚約破棄は受け入れますから重労働や死罪は勘弁して下さい  作者: 九幻琴


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1.前世の記憶を取り戻しましたわ

 秋晴れの気持ちの良い日、前世の記憶を取り戻しましたの。



 放課後に薔薇の迷宮を歩いている時に、二人の会話が聞こえたのですわ。


 一人は私の婚約者でありこの国、オルトアーノ王国の第2王子様である、アレクサンドル=オルトアーノ殿下。

 もう一人は最近アレクサンドル殿下と良く一緒におられる男爵令嬢、ミリアナ=ラング嬢。


 アレクサンドル殿下が丁度ヒロインのミリアナ嬢に告白をして、ミリアナ嬢が丁度それに答えている所でした。


 怒り狂った私、イザベルは、二人の所に乗り込もうと薔薇の迷宮を移動しているときに、偶然薔薇の生垣の隙間から、二人の姿を見ましたの。


 アレクサンドル殿下は片膝をついているのか、低い位置に頭が有り、真摯な青い瞳でミリアナ嬢を見上げています。その額には金の巻き毛がはらりとかかり、何かを訴えているようなその表情は恋の殉教者そのものです。

 ミリアナ嬢はその零れ落ちそうな紫の瞳に喜びの光をたたえています。見下ろす形になっているので、顔全体にピンクの髪が、ふわりと掛かっていましたわ。

 その二人を、薔薇が縁取り、プロポーズと言う題の絵を現していました。


 その絵の様な光景を見た瞬間、『これは「ぼくしん」のアレクサンドル殿下のプロポーズシーン』だと判りました。そして、前世の記憶、主に「ぼくしん」の情報が脳内に流れ込みましたわ。



 「ぼくしん」とは、前世で私が自由時間の殆どを費やしていた乙女ゲーム「僕達のシンフォニー」の通称です。

 「ぼくしん」は主人公のヒロイン、ミリアナ=ラング嬢が、4月にエヴェルシーク学園の3年に編入してから、次の3月までの1年で、次の6人の攻略キャラと恋に落ちる乙女ゲームです。



 一人目は、優等生キャラの、第2王子アレクサンドル=オルトアーノ殿下。金髪に青い瞳、癖のない整った顔立ちに均整の取れた体格です。

 特徴と言えば、誰にも優しい笑顔で接するところと押しに弱いところでしょうか。

 それで迷惑だと思っていても、イザベルにはっきりと言えなかったんですわよね。



 二人目は、ヒロイン以外には絶対零度。フロストランド皇国の第3皇子ウルリケ=ツヴァイス=フル=フロスト皇子。白銀の髪に感情のこもらない紺色の瞳、透き通った白い肌で氷の彫像の様な見た目です。

 冷徹で感情を軽視し、能力だけで人を判断する方ですの。 



 三人目は、学園の隣の塔に住む魔法使いのエーリング=フェランプレヴォ様。紫の長髪に金の瞳の仏頂面、中肉中背でいつも黒ローブを着ています。

 頑固で気難しくて人嫌い、気に入らない人が塔の周りの森に入ると魔法で吹き飛ばして追い出しますわ。 



 四人目は、体育会系で脳筋キャラ、騎士団長の息子のマイケル=ビーテルセ様。短い茶色の髪と緑の瞳で細マッチョ。

 明るく爽やかな性格で、か弱い女性をつい守ってしまう癖が有りますのよ。

 

 五人目は、頭脳派で眼鏡のインテリキャラの悪役令嬢の兄シュテファン=アルフィオーネ様。悪役令嬢と同じウェーブがかった黒髪、緑目でちょっと細身の体格です。

 勉強や努力をする人を尊び、人と集まってわいわい騒いで遊んでばかりの人を軽蔑します。

 それでお茶会ばかりしながら、アレクサンドル殿下をおっかけて勉強しないイザベルを嫌っていたのですわ。



 六人目は、大商人の息子のイエンセ=ザンペリーニ様。クリンクリンと真っ赤な長髪を一つに束ね、表情豊かなオレンジの瞳をしてます。

 いつも賑やかなで、彼の周りでは陽気な会話が絶えないのですわ。



 彼らから一人を選んで、1年をその一人と過ごすもよし、2人、3人と選んだキャラを攻略していくのも、もちろんハーレムエンドを目指すのも自由ですわ。

 ただし、1人ならば、そう難しいことも無く、サクサクと攻略も進むのですが、2人、3人と、同時攻略人数を増やす程、どんどん難しくなり、ハーレムエンドはほぼ不可能と言われていました。


 そして、エンディングも攻略人数と共に変わり、1人ならば甘く幸せそうなハッピーエンドですが、2人、3人と増えた攻略対象によってエンディングも変化し、苦みを増していき、最初に到達するハーレムエンドは必ずハーレムバッドエンドですの。

 苦労して、やっとハーレムエンドにたどり着いたらバッドエンド。その時の感想はね、もう、何とも言えませんわよ。



 私、悪役令嬢の扱いも、アレクサンドル殿下一人のルートであれば、3月の卒業パーティで断罪された後、身を引き、選んだ修道院に入って、生涯引きこもりルートですみます。

 ですが2人、3人と増えていく人によっては断罪の後に、厳しい修道院行、北国での重労働、死罪なんてものが出てきます。



 アレクサンドル王子とヒロインのルート攻略はもう決まっています。自分に合う修道院を探して、そこで一生を過ごしましょう。

 記憶が戻った時に王子への愛情も消えましたし、前世も1人暮らしだったので、身の回りのことを自分でするのも平気です。今なら社交界で疲れる仮面を被っているよりも、住み心地の良い修道院で引きこもっている方が良いかもしれません。


 

 ですが、私は死にたくありません。辛い人生もごめんです。



 アレクサンドル殿下はミリアナ嬢に差し上げますから、厳しい修道院行と北国の重労働、死罪は回避させてもらいますわ。権力、財力、人脈、持てる力を使って!


 

 

読んでいただき有難うございます。

もしも少しでも面白いと思っていただけましたら、

★を少しでもいただけますと、喜びます。

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