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エルは驚く。
クレシア家の奉る創造主ーー、それは世界を生み出した偉大なる魔法使いであり、全ての魔法の始祖だ。
この世界は大いなる二つの存在によって生みだされた。
一人は剣神の先祖。つまり剣技側の創造主であり、剣技の始祖だ。
そして、もう一人の創造主が、彼女ーーアル・クレシア。
クレシア家に代々伝わる伝承によれば、創造主は白の力を使い、黒き愚者を討ち滅ぼす者とされている。
白の力。それは白い魔力のことだろう。
エルが先祖返りと言われ、崇められる理由も全てはその伝承のせいである。
その白い力。創造主の魔力が使えるのは歴代のクレシア家の巫女の中でもエルただひとり。
つまり目の前の血塗れの女が使ったその力こそが、彼女が創造主ということの証明だった。
だが、エルは一つ疑問を抱く。
それは恐らく誰もが当然のように至る疑問だ。
「何故、まだ生きてる」
微かに震えた声でエルは言う。
動揺。
闘いの最中に動揺を見せた事など、今まで一度もない。
それに対してアルは吹き出した。
「ぷっ、やっぱりまだまだ子供だ」
そして、その真っ白な両腕を広げ、言う。
「まだ闘いの最中なんだからあまり感情を出さない方がいい。これはお姉さんからのアドバイス」
アルのその言葉に、傍らの狐面の少女が
「ババアでしょ」
と小さく呟いた。
「まったくひどいなあ」
感情を出さないように忠告をした直後に泣き真似を始めるアル。
それにエルは心底不快な気分になった。
元々エルは創造主のことを嫌悪していた。
この下らない世界を作り、孤立無縁の道をエルに歩ませることになった元凶。
憎悪すら抱く。
エルは奥歯を強く噛み、その両腕に力を込める。
「っ!?」
その膨大な力の奔流に、アルは一瞬驚き、感嘆の声を上げる。
「おおっ、これはこれは」
そして、アルは笑う。
「あはは、やっぱり君は凄い」
アルは目の前で膨れ上がる力の存在に拍手を送る。
それに対し、エルも驚いたように自分の手の中を見て、忌々しげに言う。
「お前、私に何をした」
エルもアルと動揺に驚いていた。
何故かは分からない。
だが、おかしなことにエルの魔力の質が各段に上がっていた。
元々時間をかけて練り上げれば魔力の質を上げる事は出来る。
だが、今エルはただ魔力を開放しただけで、特に何かしたわけでもない。
それなのに膨大な魔力を圧縮したかのような濃度の魔力がエルの手元に奔流していた。
ありえない。
アルが何かしたとしか思えなかった。
そんなエルの疑問にアルは答える。
「私の両腕を取り込んだんだ。力の上昇は当然、起きるさ」
それに対し、エルは嫌悪感たっぷりの表情になる。
「あー、そこまで嫌そうにされると流石に傷付くなあ」




