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百合園の誓い  作者: 川島
第二章〜百合園の舞踏会 Ⅲ〜
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10

 彼女たちの狙いは、エルの魔法。


 校門で自立稼働するその魔法こそが彼女たちの狙いだったのだ。


 エルがこの学校に通えるのは、彼女に自由な時間が与えられたからという理由だけでは不足していた。


 彼女は魔導師協会の中でも重要な立ち位置にある。


 魔導師協会最強の魔法使いというだけではなく、魔導の巫女クレシア家の者。それだけでエルの言動には、悠子以上に制限がかかることになる。


 悠子も派遣協会の象徴的役割を担ってはいるけどそれはあくまでも悠子の言動ひとつが協会のイメージに直結する故に象徴的立場である。役割までは担ってはおらず、派遣協会の政治的な象徴は剣神だ。それに引き換え、一方のエルは、象徴としての役割まで担っていた。



 そんな彼女だ。いくら自由な時間があるからと、異端のこの学校で自由気ままに過ごせるはずもないだろう。


 それなのに彼女がこの学校で過ごすことに、魔導師協会が何の意も唱えないのには、相応の理由がある。


 それこそがその魔法だ。


 それはエルが開発した魔法。


 入学式のあの日、悠子にも説明した通り、情報を魔力に変換するという馬鹿げた魔法。


 エルはこの学校に通う為に、この場所をその魔法の実験場所として、選んだ。


 その魔法は、元々無限にも等しい魔力を有するエルにとっては、不要の産物だが、他の魔法使いの手に渡れば、どうなるか想像に容易いだろう。


 それほどの魔法だ。平々凡々の魔法使いでも最強クラスの魔法使いになれる。


 そんな魔法を元々能力の高かった者が手に入れたらどうなるだろう。


 間違いなく脅威になるはずだ。


 目の前の女は純白の結晶を口に含んで笑い、


はひはほ(ありがと)


 ごくりとそれを飲み込んだ。


「っ」


 その様子を見つつ、エルはまんまとやられたと思う。


 エルの足止めをしたのも、悠子と引き離したのも、警備が頑丈なあの学校に潜入者を紛れさせたのも、悪魔を製造したのも、何もかもが自分たちの狙いを曖昧にして誤認させるための計画だったのだろう。


 能力は飛び抜けてるもののエルと悠子はまだ幼い。それはそんな二人の弱点(心の脆さと経験不足)すら計算に入れた作戦だった。


 しかもこの計画の裏にはまだ何十何百と罠を仕込んでいる。


 知性だけならばアルは完全にエルと悠子を凌駕していた。


 そして、知性と経験と高い魔法の技量。それに加え、無限の魔力を手に入れた。


「ふふ、これは凄い」


 アルの血に濡れた白衣が消滅し、それが魔力に変わり、彼女の手中に集まった。


「まずは実験。エル・クレシア、君ならこの力を試すのに丁度いい」


 刹那ーー、エルの体を純白の波動が弾き飛ばす。


「なっ!?」


 エルは思わず驚愕に声を発する。


 別に吹き飛ばされたことに驚いたわけではない。


 むしろ、それは当然の結果だ。


 別に吹き飛ばされたところで自動防護の力によって護られ、傷を負うこともないから基本的に大地と体を固定することをしてはいない。


 だから吹き飛ばされたこと自体に驚いわけではない。


 それにエルを吹き飛ばす程の力を使ったアルに驚いたというわけでもない。


 エルが驚いたのは現存では唯一無二の力を、アルが使ったことにある。


 純白の魔力。それを使えるのは今はエルだけだ。


 エルは後方の木の面に背中から激突し、目を見開いたまま地に落ちた。


「驚いた? これが私の魔法。そして、これが私の魔力」


 アルは口角を歪める。


 純白の魔力。歴代でもそれを持っていた者はエルを除けば創造主ただひとりーー。


 はっとエルはその思考に行き着いた。


(ま、さか)

 

 そんなエルの表情に彼女は心底楽しそうに笑った。


「ようやく私の正体に気付けたみたいだね、エル」


 アルの両肩から失った腕を補完するかのように雪のように真っ白な腕が伸びる。


「私はアル・クレシア。あなたの家が崇め奉る創造主よ」


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