9
ーー両腕を失い、見に纏う白衣を真っ赤に染め上げ、地に伏せる女の無様な姿をエルは天から俯瞰していた。
(おかしい)
とエルは思う。
あまりにも呆気なさすぎる。
ここまで手の込んだ仕込みをしておきながらこの結末だ。
エルは地に伏せる女の元に舞い降り、その眼前に立った。
「何を企んでるか」
エルの手中に純白の粒子が湧き上がる。
「答えて」
エルは女の頭を思い切り踏み付け、手中の粒子を槍の形に圧縮し、それを足元の女の喉元に突き付けた。
「っぐっ」
エルの足に縫い付けられるかのように抑えられ、女は思わず苦痛に喘ぐ。
「早く」
エルは純白の槍を足下の彼女の首筋に這わせた。
槍の先端が触れた箇所から血が流れる。
「答えてくれない?」
しかし、血塗ろの女は何も答えない。
「そう」
エルは呆れたように息を吐く。
「それじゃあさようなら」
エルは純白の槍を足下の女に目掛け、振り下ろした。
ーーガキン。
しかし、その刺突が女の元まで届く事はなかった。
何故なら大剣の刃の表面に阻まれたからだ。
「なんだ、随分と早かったね」
と女は口角を歪め、大剣を握り、エルの槍を受け止める者に視線を向ける。
「そっちは、やられるのが随分早かったみたいですね」
そして、それにその者は笑って答える。
顔は狐のお面(文化祭の出店に売ってる手作りのお面)に隠され、見えない。
だけど、その声からその者が女の子だということは分かる。
「何者?」
エルは問いを投げるが、それに狐の面の少女は答えず、エルの槍を払い除け、大剣を振るう。
「っ!」
真横一線に振るわれた大剣にエルは真後ろに吹き飛ばされた。
普通の人間ならば脚と胴体が分離してるだろう。
だけど、エルには効かない。
攻撃の衝撃に飛ばされただけで、無傷だ。
擦り傷すらない。
この一閃でエルがどうにかなるなどとは誰も考えてはいない。
一秒、二秒、エルの意識を逸らすことが目的だった。
「アル、これが例のものです」
狐の面の少女は、その手の中にある純白の石を地に伏せる女に向けて放り投げ、それを血塗ろの女ーーアルは口で受け取った。
「!」
エルは驚きに目を開いた。
(あれは私の魔法ーー、まさか!)
そこでようやくエルは目の前の者達の目的を理解した。




