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【完結済】異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第五幕 反撃編~対四天王~後編

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第185話:四重螺旋と自然の錬金術

地下基地の静寂な朝。


目を覚ますと、すぐ隣には安らかな寝息を立てるミーシャの顔があった。

昨夜の甘い熱の余韻が、冷たいシーツの中で確かな温もりとして残っている。


俺はそっと彼女の髪を撫で、その柔らかな唇に、おはようの代わりの軽い口づけを落とした。


「んっ……ふふっ。おはようございます、アドルさん」


ゆっくりと青い瞳を開いたミーシャが、嬉しそうに微笑む。

その笑顔を見つめながら、俺は昨夜から胸の内に固まっていた決意を口にした。


「ミーシャ。一度アリアに話をして、リーネ師匠のところに二、三日行きたいと思っている。どう思う?」


ゴリアスとの戦いで痛感した己の限界。

これからの激化する王都奪還戦を生き抜くためには、どうしても今の枠組みを超える必要があった。


俺の提案に、ミーシャは少しも驚くことなく、楽しげに目を細めた。


「アドルさん、貪欲ですね。いいですよ、私どこまでもついて行く覚悟あるんで。それに、私もリーネ師匠に戦力アップのアドバイスをもらいたいと思っていましたし」


「よし。じゃあ早速、ルルも連れて反乱軍の拠点に向かおう」


まずはリビングにいたカミラに事情を話し、ミーシャと共に二、三日ほど師匠のところで修行してくることを告げた。


「カミラの事、頼んだぞ」

「任されたなの! カミラさんと二人きりなのは久しぶりなの!」


ルルは元気よく胸を張り、小さな拳を突き上げた。


「アドルさん達が修行してる間は、アリアさんの指示に従ってるなの。シルヴァも召喚して、絶対ここを守るなの! 頑張ってなのー!」


頼もしいルルの言葉に見送られ、俺とミーシャはマリアの教会の地下にある反乱軍拠点へと足を運んだ。円卓で指揮を執っていたアリア王女に、数日ほど前線を離れたい旨を申し出る。


「わかりました。まぁ元々アドルさん達はいなかったわけですし……二、三日なんて誤差の範囲です」


アリアは嫌な顔一つせず、あっさりと了承してくれた。


「それに、ルル殿もいてくれるので力強いです。どうか、ご自身の力を高めることに専念してきてください」


アリアの理解を得た俺とミーシャは、王都の喧騒を抜け、再び北西の禁忌の森へと向かった。


もう二回目だ。

道に迷うことはない。

なんなら、精神生命体であるリーネが、森に入った瞬間から気配を察知して、俺たちを最短ルートで家まで誘導してくれているようにすら感じた。


森の奥深く、見覚えのある小さな家の前に辿り着くと、すでにドアの前にリーネが立って腕を組んでいた。


「やっぱりきたわね」

「リーネ師匠、こんにちは」

「王都付近にあなた達がいれば、私の目が届くから大体何してたかわかってるわよ。とりあえず、家の中で話を聞きましょうか」


促されるままに家の中に入り、木製の椅子に腰を下ろす。


リーネは紅茶を淹れながら、見透かしたような視線を俺たちに向けた。


「さて、それで何しに来たのかしら? 大体察しはついてるけども」


「実は、自分の戦闘力に限界を感じているんです。時間はあまりないですが、稽古をつけて欲しい」


俺が単刀直入に頼み込むと、リーネは呆れたように息を吐いた。


「まぁそうよね、あなたの気の乱れ、分かりやすいもの。そうくるんじゃないかと思って、実は少し考えていたの。ミーシャ、あなたもじゃないの?」


「はい、お見通しなんですね。私もアドバイスが頂きたいです」


ミーシャが背筋を伸ばして頷く。


「わかったわ。時間はどれくらいあるの?」


「二、三日で王都に戻りたいです」


「了解よ。早速、白の空間にいくわよ」


「「はい!」」


リーネが指を鳴らすと、視界がぐにゃりと歪んだ。


次に目を開けた時、俺たちは前回も修行をつけてもらった、上下左右の感覚すら曖昧になる果てしない「白の空間」に立っていた。


「そうね、前回と同じくミーシャからいこうかしら」


「はい!」


「ついでなのでアドルも聞いてなさい。さて、ミーシャ。どうなりたいのかしら」


「強くなりたいです」


ミーシャの迷いのない即答に、リーネは満足げに頷いた。


「まぁそうよね。今はどういう戦闘をしているの?」


「片手二重螺旋を軸に、最近は右手に常に魔力を溜め込んで、いざと言う時に放つ方式で戦っています」


「なるほど。でもそれだと、いざと言う時以外は右手が使えないわね。戦いにくそうね」


「そうなんです。しかもこの前、一度右手の魔力を意図せず放出してしまって……溜め直しなんです」


ゴリアス戦での消耗を思い出し、ミーシャが苦笑いをする。



「それならあなた、その溜め込む方式、捨てなさい」



「え?」


「そんな制約が多い戦闘方法、強いのか弱いのかわからないじゃない」


「やめて、どうすれば?」


ミーシャが困惑する中、リーネは少し意地悪に笑った。


「あなたもアドルもそうだけど、実は進むべき道って、自分たちで少し気づいている気がするのだけれど?」



「…………」



「まぁ、師匠らしく導いてあげましょうか。ずばり、ミーシャ。あなたは『片手二重螺旋を両手で出来るようになればいい』のよ。まぁ、こんなこと未知の領域すぎるけどね」


俺はその言葉に息を呑んだ。


右手で二重、左手で二重。


「それなら、事前に溜めずに、いざと言う時は両手で片手二重螺旋を展開して『四重螺旋』にすれば、火力は溜めずに即時火力がだせるはずよ」


「そ、それは理論的にはそうでしょうけど……! 三重までなら、実は擬似的にはやったことあるんですよね……。でも、相当の負荷でした」


「まぁでも理屈はわかってるんだから、あとは脳内の負荷軽減と反復練習じゃないかしら。背中押して欲しかったんでしょ?」


「…………実は、それしかないかなとは思ってました」


ミーシャが覚悟を決めたような表情になる。


俺は隣でそのやり取りを聞きながら、思考を巡らせていた。


(ミーシャの負荷を減らせる何かを考えないと……あのままじゃ、ミーシャの脳内血管が破裂してしまいそうだな)


俺の錬金術で、彼女の魔法構築のプロセスを補助するデバイスや薬品を作れないだろうか。


「ミーシャ、あなたの修行内容は明確よ。すぐに二日間はそれに取り組みなさい」


「わかりました」


ミーシャが空間の端へ移動し、早速両手での魔力構築の姿勢に入る。


「さて、アドルね」


リーネが俺の方へ向き直った。


「アドルもミーシャと同じなんだけど……薄々勘づいてるわよね?」


「…………」


「あなたは少し鈍感だから、無意識かもしれないけど教えてあげるわ。実は、直近の王都での戦いぶりはなんとなく見えているからわかるのだけれど」


リーネは俺の顔をじっと覗き込んだ。


「前にも言ったけどあなた、随分世界に気を使っていないかしら? なりふり構わなければ、もっとやれるはずよ。現に前回の戦闘では、その片鱗を見せてたじゃない」


「え? 片鱗?」


「やっぱり気づいてないのね。自覚できるように教えてあげる。あなたの錬金術は、基本的にはミーシャの異空間か、近くに自分が所持している素材を使って錬成しているわよね」


「あぁ、そうだ」


「でもあなた、最近そうじゃない錬成したことない?」


俺の脳裏に、地下排水路でのゴリアスとの戦い、そして狼の使い魔を消し去った戦いがフラッシュバックした。

「思い出したかしら? あなた結構、自然にある水、空気中にある気体とか、そういう自然の言わば科学的なものを使って錬成して戦い始めているのよ」


「そういえば……いわれてみればそうだ」


空気を異空間に飛ばして作った「真空」


泥水の中の金属イオンと環境を利用した「電気的なショート」


言われてみれば、俺は無意識のうちに、手持ちのアイテムではなく、そこにある環境そのものを素材として利用し始めていた。


「これをおもっきり自覚して意識的にやれば、まぁそれこそ世界を壊すつもりくらいでやれば、ハチャメチャな戦闘力になると思うけどね?」


「すまん、もっと具体的に教えてくれ」


「ほんと勘が鈍いわね、あんた。自然の力を素材にしろっていってんのよ」


「自然の力……」


「そう。空気中にある物質はもちろん、風、水、土、太陽、まぁ光? とかかしら。他にも大自然の要素なんて、考えればいくらでもあるわよ。それを意識的に戦闘に組み込んで、変な気さえ使わなければ、強くなれるはずよ」



俺は目から鱗が落ちる思いだった。



ポケットの中の鉄くずや、ポーションの素材にばかり気を取られていた。

だが、俺がいるこの世界そのものが、巨大な素材の宝庫だったのだ。


「ほんと、リーネ師匠は考えていることが規格外で、その後のこととかその他のことは全然考えず、火力一点集中だなぁ。でも確かに、そこに答えがある気がする」


「答えあるわよ。だってあなた、無自覚でやりはじめているんだから」


リーネがパンッと手を叩いた。


「さ、修行の内容は明確になったわね? 時間が無いから、さっさと取り掛かりなさい。今回は卒業試験なんてものはないわよ。自力で習得して終わりよ」


そう言い残すと、リーネはふわりと空中に浮き上がり、俺たちの自主練を上空から監視する態勢に入った。


ミーシャは片手二重螺旋を両手で展開する『四重螺旋』の極致へ。

俺は、己の科学知識と世界の要素を直結させる『自然を材料にした錬金術』へ。


王都での決戦に向けて、俺たち二人の濃密な二日間の修行が始まった。

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