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異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第四幕 反撃編~対四天王~

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第121話:侵食するエラー

店の奥。


事務室の空気は、凍りつくような冷気に包まれていた。


壁や床から、ドロドロとした「黒いノイズ」が染み出してくる。


「何……これ。影が、生きてるみたい…………」


エナが声を震わせ、机の端を強く握りしめた。


カミラも生気を失った顔で、胸元の「みがわりのミサンガ」を握りしめる。


「エナ、下がって! 来るなの!」


ルルの叫びと同時に、床の影が跳ね上がった。


実体のない、歪な人の形をした「エラー」の群れ。黒犬たちが、虚空から次々と這い出してくる。


「パピィ! アーサー! あいつらを!」


ルルの号令に、二体の召喚獣が躍り出た。

パピィの鋭い牙が、先頭の黒犬を真っ二つに裂く。

だが、斬られたはずの影は、霧のように散っては再び形を成した。


「嘘……倒せないの!?」


「無駄よ。それは『存在しないはずの情報』なんだから」


頭上から、くすくすと笑う女の声が響いた。


天井の隅。


空間が歪み、フィアの幻影が逆さまに浮かび上がっている。


「誰っ……! 屋敷の中にまで、どうやって!」


通路パスなんて、いくらでも作れるわ。アドルが外で遊んでいる間に、あなたたちはここで『消去』してあげる」


フィアが指を鳴らす。


黒犬たちの咆哮が、ノイズ混じりの不快な音となって耳を突いた。



「ガウッ! グルル……ッ!」


パピィが怯んだ。


黒犬に触れた箇所から、パピィの輝く毛並みがどす黒く変色していく。


「パピィ! ダメ、下がって! 触っちゃいけないの!」


ルルが必死に叫ぶ。


だが、黒犬たちは容赦なく包囲網を狭めてくる。

一匹が、隙を突いてエナへと飛びかかった。


「エナ、危ない!」


カミラが叫び、身を投げ出す。

黒い爪がカミラの喉元に迫った瞬間、彼女の腕のミサンガがパキリと音を立てて砕け散った。

眩い光の障壁が展開され、黒犬を弾き飛ばす。


「……助かったの? アドルさんの用意してくれた保険が……」


カミラが荒い息をつきながら、自分の体を確認した。

傷はない。だが、一度きりの守りはもう消えた。


「カミラさん! これを!」


エナが叫び、ポケットから「救援玉」を取り出した。


震える手でそれを床に叩きつける。


「響け……! アドルさんに届いて!」


バチィィィン!


凄まじい雷鳴のような轟音と共に、屋敷から空に向かって鮮烈な銀色の光柱が立ち昇った。


室内が真っ白に染まり、黒犬たちが一瞬だけ動きを止める。



正面。

ヴァルゴスを拘束し、騎士団を圧倒していたアドルの動きが止まった。


「今の音……店の中か!?」


アドルが振り返る。

夜空を貫く銀の光は、彼が渡した「救援玉」の合図だ。


「アドル、行って! ここは私が……っ!」


ミーシャが叫ぶ。

彼女の前には、フィアの魔力によって再起動した騎士たちが、操り人形のように不気味な動きで立ち上がっていた。


「ミーシャ、無理をするな! すぐに戻る!」


「いいから! エナたちが危ないんでしょ!」


アドルは歯を食いしばり、地面を蹴った。

背後でミーシャが「嵐の檻」を展開し、敵の足止めを開始する音が響く。



店の中へ。


最短距離を駆け抜けるアドルの視界に、妙な違和感が走った。


視界の端。風景のテクスチャが、剥がれ落ちるように崩れている。


「……世界が、バグってる?」


フィアの狙いは、エナたちだけではない。

アドルを店の外に引きつけ、その隙にリュステリアという街そのものを破壊しようとしている。


「ふふ……間に合うかしら? 英雄(ヒーロー)さん」


風に乗って、フィアの嘲笑が届く。

店の玄関を蹴破ったアドルの目に飛び込んできたのは、黒い泥に半分埋もれながらも、必死に杖を構えるルルの姿だった。


「アドルさん……遅いなの! 早く……エナを……!」


ルルの視線の先。

そこには、フィアの本体と思われる「巨大な影」に組み伏せられそうになっているエナの姿があった。

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