表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第四幕 反撃編~対四天王~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/144

第114話:英雄の背中

モルガンの店を脅かしていた領主の役人共を「力」で追い払った後、アドルはあえてその場に留まらなかった。


「重力アンカー」による威圧はあくまで、自分たちの居場所を侵させないための境界線に過ぎない。アドルの真の目的は、恐怖による支配ではなく、この街そのものを内側から「塗り替える」ことだった。


「アドルさん、次はどうするの? あの様子じゃ、またすぐに増援が来るわよ」


ミーシャが周囲を警戒しながら問いかける。

アドルは、かつて自分がポテトを揚げ、人々が笑いながら並んでいた通りを見つめた。


「力で押さえつければ、第二、第三のギルバートを生むだけだ。……まずは、この街の『痛み』を取り除こう」


アドルたちが最初に向かったのは、冒険者ギルドだった。


そこには、ギルバートによる法外な「装備税」や「登録維持費」に喘ぎ、ボロボロの武具を抱えて途方に暮れる冒険者たちが溢れていた。


「……この盾、もう限界だ。直す金もない。これじゃあ1層のゴブリン相手でも命を落とすぞ」


一人の若い冒険者が、ひび割れた盾を地面に置いて頭を抱えていた。アドルはその隣に歩み寄り、無言で盾を拾い上げた。


「おい、あんた何をする……!」


「――瞬きの錬金。構造修復・硬度強化」


アドルの指先が青白く発光したかと思うと、一瞬の間に盾のひび割れが消失し、以前よりも重厚な銀色の輝きを放ち始めた。


「なっ……なんだ、今の光は!? 新品、いや、それ以上になってるぞ!」


「次はそっちの剣だ。貸してくれ」


アドルは驚愕する冒険者たちの間を回り、次々と武具を手に取った。


「瞬きの錬金」は、今や素材の結合から研磨までをコンマ数秒で完了させる。

折れた剣が瞬時に鋭い刃を取り戻し、穴の空いた鎧が元の形を上書きされるように修復されていく。


「……金はいらない。その代わり、準備ができたら俺の店に顔を出してくれ」


アドルが去った後、ギルド内には「白銀の錬金術師が帰ってきた」という噂が、雷鳴のような勢いで広がっていった。



アドルたちの歩みは止まらない。

街の広場で地上げに遭い、家を壊されかけた老人。

井戸が枯れ、泥水を啜っていた貧民街の親子。

アドルは行く先々で、その圧倒的な「生産の力」を惜しみなく振るった。


「瞬きの錬金……地脈接続・水流錬成」


枯れた井戸を覗き込み、アドルが指を鳴らす。

地下深くの岩盤を一瞬で組み替え、清浄な地下水を引き寄せる水路を再構築したのだ。

噴水のように湧き出す水に、街の人々が歓声を上げ、中にはアドルの足元に跪いて涙を流す者まで現れた。


「アドルさん……すごいわ。みんな、あなたのことを神様か何かのように見ている」


ミーシャの言葉に、アドルは少しだけ悲しげに首を振った。


「神様じゃないさ。……ただ、奪うことしか知らない領主よりは、俺たちの方が『マシ』だってことを分かってもらいたいだけだ」



アドルが拠点として選んだのは、領主府近くの豪華な土地ではなく、かつてポテトを売っていた場所に近い、古びた空き家だった。

そこに派手な装飾はない。


ただ、アドルが「瞬き」の速度でリフォームを施した、清潔で温かみのある小さな店構えだ。


店名は『銀の天秤ぎんのてんびん』。


「お待たせなの! 今日からここでお手伝いをするなの!」


エプロンを締めたルルが、元気よく看板を掲げた。

横では、カミラがかつてのアドルのように、手際よく大きな釜でスープを煮込んでいる。


「ご主人様、開店の準備は整いましたわ。……あら、もう並んでいる方がいらっしゃいますね」


店の前には、先ほど助けた冒険者や、家を直してもらった領主の民たちが、おどおどしながらも期待に満ちた目で並んでいた。


彼らはギルバートを恐れている。


だが、それ以上に、アドルの差し出す「明日への希望」に惹きつけられていた。



店が開くと同時に、アドルは一つの奇妙な宣言をした。


「ここでは、金貨は二の次だ。……『壊れたもの』や『使えなくなった素材』を持ってきてくれ。それを材料に、俺がその場で君たちが今一番必要なものに変えてやる」


「……えっ? 壊れたものを、食料や道具に変えてくれるのか?」


「ああ。俺の錬金術は、この街のすべてを再利用(リサイクル)する」


これがアドルの放った、最初の一手だった。

本来なら廃棄されるはずの屑鉄や枯れ木が、アドルの手によって一瞬で「最高品質のスコップ」や「保存の効く燃料」に変わる。


人々は驚愕し、そして熱狂した。


それは、領主が管理する「流通」という鎖を、根底から腐らせる毒のような慈愛だった。



アドルの英雄化が進む中、領主府の影でギルバートは爪を噛んでいた。


「……ふざけおって。民衆の心を買収するつもりか」


「放っておけばいい。……彼らが崇めているその希望を、絶望に変えるのは容易いことだ」


闇の中から聞こえたのは、以前アドルを苦しめた「黒犬」の、さらに深い階層に潜む刺客の冷たい声だった。


その夜。


アドルは屋敷の屋上で、夜空に舞うピヨちゃんを見上げていた。


順調に見える掌握。


だが、アドルの右手、包帯の下にある「紋章」の跡が、不気味な熱を持って疼き始めていた。


「……アドルさん、どうかしたの?」


「……いや。何かが、来る気がする」


信頼の裏側に、新たな影が忍び寄ろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます! もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、 【ブックマーク】や【評価(★↓のポイント)】で応援していただけると、とても励みになります! 一つ一つの反応が、更新のモチベーションに直結しています。リアクションも大歓迎です! 引き続き、アドルたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ