第112話:宣戦布告の朝食会
翌朝、リビングに差し込む朝日は昨日までよりもどこか明るく感じられた。
カミラは心なしか足取りも軽く、その表情には憑き物が落ちたような清々しさが漂っている。
アドルとミーシャ、そしてルルが揃うと、アドルは居住まいを正して口を開いた。
「改めて……俺たちがいない間、この屋敷を、俺たちの帰る場所を守り抜いてくれて本当にありがとう。心から感謝している」
アドルの言葉に、カミラとルルが顔を見合わせ、照れたように、しかし誇らしげに頷く。
「約束通り、強くなって帰ってきた。今日からはまた、この屋敷を全力で守る。……それと、ギルバートの件だが。あいつだけは、絶対に許さないことに決めた」
「許さないって……具体的には何をするんです?」
カミラが少し身を乗り出して尋ねる。
「実は、ギルバートに直接なにかするつもりはないんだ」
「といいますと?」
ミーシャが不思議そうに首をかしげると、アドルは不敵な笑みを浮かべた。
「今からやることは二つ。一つはこの街の経済を制圧しようと思う」
「経済を制圧……!? なんかとんでもないワードがでてきましたね。わくわく」
カミラが目を輝かせる。
「あぁ、今までは実は少し遠慮していたところがあった。街に住まわせてもらっているから、派手には動かずルールに沿って行動すると」
「しかし、先日のこの屋敷、カミラやルルへの嫌がらせは……看過できない。領主を敵に回してもいいとおもっている。経済を制圧したいとおもう」
「具体的にはどうするのです?」
「モルガンの店もいいが自分たちで店を出そう。そこで街の顧客をすべて自分たちの手中に収めたいと思う」
「なにか凄いこと企んでますね」
「まぁ実はまだ細かいことはそんなに考えてないんだ。店をめちゃくちゃ繁盛させたらどうせまたあいつらでてくるだろ? 今度は怯まずに、手出ししたら徹底的に攻めよう、そうおもってるだけさ」
アドルの宣言には、修行を経て得た絶対的な自信が宿っていた。
「そしてそれとは別に並行でダンジョンを、うーん、クリアとかあるのかわからないけど、踏破したいと考えている」
「10層であんなに大変だったのになの?」
ルルが不安そうに口を尖らせる。
「あぁ、俺もミーシャも手前味噌だが強くなったという自負がある。どうも黒犬が関係してそうだし、調査も兼ねてな」
「無茶はしないでください」
「あぁわかってるよ。それでルル、ステータスはどうなってる?」
ルルは「ふんす!」と鼻を鳴らし、自身のステータスボードを展開した。
ルル・ステータス(成長後)
レベル: 36(修行前の25から大幅に上昇)
職業: 召喚師
最大コスト: 10(以前の7から拡張)
召喚リスト:
パピィ(オオカミ型 / コスト3)
アーサー(首なし騎士 / コスト5)
すらたん(コスト1)
天眼のピヨちゃん(通信・索敵特化 / コスト1/進化済み)
習得スキル:
【万獣の友】: 動物や召喚獣との意思疎通能力。
支援魔法: プロテクション、アタックブースト、クイックムーブ(効果時間は5秒だが、特定タイミングでの爆発力を持つ)。
【魔力の絆】: アドルやミーシャの余剰魔力を受け取り、召喚獣を強化する新スキル。
「レベル36……。めちゃくちゃあがってるじゃないか!最大コストが10になったことで、パピィとアーサーを同時に維持できるようになったんだな、いやそれどころか全部同時召喚可能なのか……凄いな」
アドルが感心したように言うと、ルルは胸を張った。
「ルルはアドルたちの帰りを待つだけじゃないの! ちゃんとギルドの依頼をこなして特訓してたのなの!」
カミラが優しくルルの頭を撫でながら、アドルを見つめる。
「でも無茶はしないでくださいね、ご主人様」
「ああ、わかってるよ。さて……まずは店の場所探しと、リュステリアの連中に『本物の錬金術師』が帰ってきたことを知らせに行こうか」
修行で得た「瞬きの錬金」と、ミーシャの「片手二重螺旋詠唱」。そして山のような伝説級の素材。
「みてろよ、ギルバート……」




