再び彼の日常が始まる
長いプロローグをご覧になって下さってありがとうございました!
小説は初心者なのでお見苦しいミスなどがあったかと思いますが、その場合は指摘してくださるとありがたいです!
ここから物語が本格的に始まるので、最後までご覧になっていただけると嬉しいです。
最終章には主人公の秘密も書くので、是非楽しみにしていてください!
下山を終え、オレはもと来た道を歩いていく。
目的地は学校だ。
既に終業式は終わっている頃合いで、今は夏休み前のLHRを行っている最中だろう。
山から聞こえる蝉の鳴き声を背中に受けながらオレは田畑の間にある道を歩き続ける。
......これで約束は果たせたな
長年胸中にあった悩みの種が無くなり、今やオレの足取りは軽くなっている。なんならスキップでもしようか。
今は気分がいい。
年甲斐もなく(高校生)スキップをしていると、横の畑から野良猫が顔を出した。
......。
「......なんだよ?」
動かずジッとオレを見つめる大きな瞳。
よく分からないが、哀れまれているような呆れられているような気がする。
そのうち、猫はオレから目を外して何処かへと走り去っていった。
......動物相手なのに何故か恥ずかしくなった。
............
田畑地域を抜け、住宅街をしばらく進み、ようやくオレの学校へとたどり着いた。
既にLHRも終わったのだろうか。
通学カバンを手に持った生徒達が昇降口付近に群がり談笑している。
さっさと解散すればいいだろうに、たかだか一ヶ月程度の別れを惜しんでいるのだろうか。
女々しい連中だ。
そんな哀れな人混みを校門から眺めていると、見知った顔が見えた。
「あ、ユウ! お前今頃来たのかよ!」
オレを見つけるやいなや絡んでくる一馬。
その横で手を上げ、オレに簡単な挨拶をする渡。
そしてさらにその横で、オレを見つけるやいなやムスッと表情を曇らせる桐花。
......まだ朝のことを引きずっているのか。
ていうか黒幕はお前の横にいるけどな。
そんな愉快な三人にオレは歩み寄っていく。
「何だ? もう終わったのか?」
我ながら分かりきった質問を投げ掛ける。
「当たり前だろうが。お前がいなくなってからもう三時間近く経ってるんだぞ?」
呆れたように答える一馬。
「ま、そりゃそうだわな」
無意味な問答を終える。
「そんなことよりも、あんた何処に行ってたわけ? 担任が心配してたわよ」
怒り混じりに桐花が言葉を発する。
「ん......まぁ、あれだ。愛の告白をされてたのさ」
オレは一応の事実を伝えておく。こう伝えておけば、オレが異性からモテているように勘違いさせられるかもしれない。
オレのそんな企みも他所に、桐花は大きく目を見開いた。
「こ......告白? あんたが?」
その声音には力が籠っていない。まるで信じられないとでも言いたげだ。
「ああ、そうだ。そりゃもう可愛い女の子から熱烈なラブコールを受けてたんだ」
しばらくの間桐花は唖然とし、そして棒読みで言葉を発した。
「へ、へぇ......良かったじゃない。それで?
その告白は受けたの?」
まぁ、そういう話になるよな。
桐花も一応は女の子だ。身近な人間の色恋沙汰に興味があるのだろう。
「いや、何でお前に話さなきゃいけないんだよ」
そうは言っても、やはりこれはオレのプライベートに関わる話だ。
言うか言わないかの決定権はオレにある。
ならば絶対に話さない。
もともと他人に自分の話をしたくないしされたくないのだ。
第一に、話すと長くなる。面倒臭い。
「受けたの? 受けなかったの?」
しかし尚も食いかかってくる桐花。
何故そんなにも必死なのか。
こうなるとコイツは人の話を聞き入れなくなる。
最早正直に答えるしかないだろう。
「受けてないよ。そもそもそんなに親しい間柄ってわけでもないしな」
「......ふーん。そうなんだ」
オレの返答を聞き満足したのだろうか。
フイッとそっぽを向いて興味が無くなった感を醸し出してくる。しかし、その口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
それにしても何なんだコイツは。
オレの色恋沙汰が上手くいっていないことを知ると途端に機嫌が良くなる。
唯一分かるのは、コイツの性格が悪いことくらいだ。
「可愛い女の子だと!?」
そして一難去ってまた一難。
またも面倒臭いヤツがオレの発した一つの単語に食いついてきた。
「なぁユウ、その女の子って可愛いのか!?」
思春期真っ只中の一馬は女の子のことにしか興味がないらしい。
オレが告白されたという最重要な部分は完全に無視している。
「さぁ、そこら辺のアイドルくらいじゃね?」
ニヤニヤと笑っている一馬を鬱陶しく思いながらも返事をする。
だが、一馬はオレの言葉を聞くとその顔に嘲笑を浮かべた。
「あ、それはあり得ないわ。いくら可愛いにしても、アイドル級の女の子がお前に告白するなんてことあるわけがない」
「............」
本当に何なんだコイツらは。
オレがそんなに恋愛不適合者に見えるのか。
もう絶交してやろうかと思っていると、渡が口を開いた。
「一馬、それはいくら何でもユウに失礼だよ」
おおっ、やはり最も気が利く奴は言うことが違う。
そのまま、そこの二人を叱りつけてやって欲しい。
「いくら恋愛下手なユウでも、可愛い女の子には告白されると思う」
何かえらくオレを持ち上げてくるな。
それにしても、渡の中でのオレへの人物評価が気になる。
そんなに渡はオレを良い男だと思っているのか。それはそれで複雑だ。
「ほら、最近だと恋愛ゲームの女の子に夢中になっちゃう人っているでしょ? 多分、ユウもその中で告白されたんだよ」
「「あぁ~~、なるほど」」
いや本当に何なのお前ら。しかも納得しちゃったし。
わざわざそんなゲームをするためにオレが学校をサボると思っているのか。
ついには可哀想なものを見る目で見てくる三人から逃れるように、オレは校舎内へと入っていった。
評価などをしてくだされば、作者が元気になれます(それだけ)