210.回復魔法と副作用
異世界転移をしたパーフェクトガール、北大路ナミことナヴィ。
職業『村人A』
仕事『駆け出し冒険者に、最初のダンジョンの情報を与える』のみ。
自分の進むべき道を見つけグローリア案内所で仕事を行うナヴィ。
回復魔法で魔力を使い果たしたナヴィの前に……。
「う、うう、うーん……あれ」
魔力を使い果たし、レミアの横で椅子に座りながら眠っていたナヴィが目を覚ました。
「あ、そっかあたし眠っちゃってたのか……」
ヴィオネさんの付けたレミアのあれだけの傷の量を一気に治すとなるとやっぱりほとんどの魔力を吸われていったわね。
「まぁ流石にそうなるか……」
「よう、起きたか?」
「ひゃ!? ヴィオネさん?」
ナヴィの後ろからコーヒーを差し出したヴィオネット。
「ご苦労だったな、ほらコーヒーだ」
「あ、ありがとうございます、いただきます」
ナヴィはヴィオネから受け取ったコーヒーのカップに口を付けた。
「げ、まず……これ本当にコーヒーですか……」
目を細めてヴィオネットの方を見るナヴィ。
「ははは、すまんなどうもこういうこまごました作業は苦手でよ」
「コーヒーを入れる作業のどこにこまごまとしたところがあるんですか……」
「ははっ、まぁまずいが飲めなくはねーだろ?」
「そりゃまぁ……飲めはしますけど」
「それよりレミアの傷、よくあそこまで治せたな」
ヴィオネットはそういうとレミアの方に視線を向けた。
「ヴィオネさん。いくら特訓とはいえあれは流石にやりすぎです。今回は何とか治せましたけど」
「……。それで、どうやってこの傷を治したんだ?」
「<ヒール>です」
「……ただの下級の回復魔法でか?」
「はい、基本的に回復魔法は対象者の生命エネルギーの力を使っています。治す量に比例して治した後の疲労感も増加していきます。もちろん高位の回復魔法になればなるほど治せる傷や病気の数も増えますが」
「その分対象者のエネルギーを更に使うってことか……」
「ですね。別に寿命が縮まるわけではないのでそこは安心しても大丈夫なのですが、流石にこの傷の量を一気に治そうとすると、レミアは多分二日三日は起きてこれなかったと思います」
「なるほど……で、その下級の回復魔法でどうやって治したんだ?」
「一つは時間です。普段は掛けて数秒で治すものを時間を掛けて回復させることによりレミアの身体への負担を軽減させました」
「一つは、ということはもう一つあるのか?」
「はい。レミアが来るまでの特訓で培った魔法を掛けるときのイメージです」
「<アタックグロウ>でやっていたものを応用させたということか……」
「えぇ。確証はないですが。普段よりも早く、そして正確に治せていたかと……」
「確かにレミアの身体には傷の後すら見られないな」
「なんとなくイメージは掴めてきたのであとは回数がこなせれば……」
「ふふ、回数ねぇ」
ヴィオネットはナヴィのその言葉に不敵な笑みを浮かべた。
「あ、でも、ここまではやめてくださいよ! どうせ止めてもレミアとの特訓はやめないと思うし、趣旨は理解できましたから」
「わーったよ。今日みたいに死なねぇ程度に加減してやるから明日も待っとけ」
「え、明日もあの戦闘をやるんですか!?」
ナヴィは驚きのあまりコーヒーを吹き出した。
「あたりめぇだ。時間がねえんだよ俺達には」
ヴィオネットはナヴィに背中を向け部屋から立ち去ろうとする。
「ヴィオネさんがいてもダメなんでしょうか……?」
「あ? 何言ってやがんだ?」
「え……」
「俺がいなくなっても大丈夫なように特訓してんだよ」
「え、それってどういうことですか……」
立ち去ろうとする足を止めナヴィの方を向くヴィオネット。
「ナヴィ。お前に……」
何かを覚悟した表情でナヴィに伝えようとヴィオネットが口を開いた瞬間、レミアが目を覚ました。
「……ん、んん姉さま、ナヴィさん?」
「!? レミア。起きたのか」
「レミア! まだ体を起こしちゃ駄目よ、安静にしていて」
レミアは無理やり体を起こしヴィオネットに体を向け軽く頭を下げた。
「ナヴィさんすみません。姉さまもすみませんここまで運んでいただいて」
「……ナヴィ。この話はまた今度だ、それじゃ」
「姉さま、待って……いっつ……ナヴィさん?」
ベッドから出て立ち上がろうとするレミアをナヴィは力ずくで止めた。
「だめよレミア、傷は治っても中の生命エネルギーは使い果たされてる状態なの。無理に動かすのは良くないわ」
ヴィオネットはレミアが目を覚ましたのを確認すると逃げるようにナヴィの部屋を出て行った。
「姉さま……」
「それよりも体の具合はどう?」
「あ、それはおかげさまで……」
「ふー良かった。何とか間に合った」
額に変えていた汗を腕で拭うナヴィ。
「今日も負けてしまいました……」
「今日もって……?」
「こういうこと昔はよくやっていました。体づくりの一環で。でも私が姉さまに勝てたことは一度もありません」
「まぁあんだけ強烈な姉ならしょうがないわよ」
「しょうがなくないんです!」
「!?」
「早く、早く私が強くならないと……姉さまが」
「え……?」
その頃ヴィオネットは自室のベッドへと倒れるように寝ころんでいた。
「はぁ。疲れた」
レミアも昔に比べて強くなったなぁ。攻撃の一発一発が重くて受け止めきれない瞬間が増えてきた。
まぁいいことなんだけどな、今はとにかく急がねぇと。
「……っつ。あばら何本かやっちまってるか。とりあえず治しておくか」
<ヒール>
ヴィオネットのあばらに緑のオーラが纏わりついた。
「ちっまた取れやがった」
ヴィオネットの脇腹から一枚の龍の鱗が剥がれ、床へと落ちた。
「はぁ……」
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第十二章 二十七話 いかがだったでしょうか。
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