保健室にて ~大胆な藍さん~
「ったたた……」
「だ、大丈夫か?」
僕は倒れる瞬間無意識の内に藍さんを庇うように体勢を変えた為、腰を変なひねり方をした。
「あはは……情けないですね……彼女の身体も支えられないなんて……」
僕は舌を出しながらそう言うと、痛めた腰を庇うように動いた。
「……腰を痛めたんだろう? 創君。私は医者だからないくら庇っていても気が付くぞ?」
藍さんは呆れたようにそう言うと一つ溜息を吐いた。
「……あはは……面目ない……」
流石は藍さんだ。僕が腰を痛めている事を一目で見破られてしまった僕は、乾いた笑みを浮かべながら項垂れる事しか出来なかった。
「……別に攻めている訳では無い。創君が私の事を庇って痛めた事にも気が付いてないとでも思ったか?」
藍さんは僕の表情を見て、少し申し訳無い表情をしていた。
「……いやいや、僕だって全部気付かれている事ぐらい分かっていましたよ……でも、少しくらい彼氏である僕に恰好付けさせて下さいよ」
僕は少しだけ膨れながら藍さんにそう言った。
「あははっ……」
僕が言った言葉が余程おかしかったのか、藍さんは急に大声で笑い出した。
「むー」
僕はそこまで大声で笑われるとは思っていなかったので、更に頬を膨らませて藍さんを睨みつけた。
「おー怖い怖い……」
藍さんは僕が睨んだ事に対して恐怖を抱いている訳でも無いだろうに、わざとらしく震えるような仕草をしながら僕にそう言ってきた。
「……」
僕はそんな藍さんの様子を見て、何も言えなくなってしまいとうとう無言の抵抗をするしか無くなってしまった。
「……あーもう……悪かったって、謝るから機嫌を直してくれ。私だって恥ずかしいんだから……」
藍さんはそう言うと、起き上がり僕の事をそっと抱き寄せた。
「む……」
僕はそんな手には乗るもんかと敢えて冷たく藍さんを振り払った。
「……仕方ない。……んっ……」
「ん!?」
藍さんは溜息を吐くと、覚悟を決めたように先程よりも強く僕の事を抱き寄せてキスをしてきた。まさか藍さんの方からキスをしてくるなんて思ってもいなかった事だったので、僕は一瞬思考が止まってしまった。
「……」
「……」
また無言の時間が続いた。
「……何か言ってくれ……流石に恥ずかしい……」
今回は藍さんの方が耐え切れなかったようで、直ぐに僕にそう声を掛けて来た。
「……ふはぁー、こんな大胆な藍さん初めてだったので少し驚いて何も言えなかっただけですよ……」
僕は藍さんに抱き締められたまま、空気の抜けた風船のようにその場に崩れ落ちた。




