新しい指令?
ドア開けると、部屋の中は真っ暗。当然、お帰りなさいなんて言葉はない。
電気をつけて荷物を床に置く。一泊二日の帰省だったけど、大量にお土産を買ったから、行きの倍近い量になった。
(要冷の物はクールで送ったし、明日片付けよう)
脱いだ服を洗濯機に放り投げて、下着姿でベッドにダイブ。
今回の帰省は精神的に疲れた。
(ハーモニーオーケストラ、どうすっかな)
とりあえず、誰かと話をしたい。誰かにお帰りって言われたい。
吾郎『ただいま。お土産いつ渡せばいい?』
少し悩んだ結果、グループライソにメッセージを打ち込む。鷹空さんに電話しようかと思ったけど、時間が時間だ。ライソなら寝ていても迷惑が掛からないし。既読がつかなきゃ寝ればいい。
翼『お帰り。ゆっくり出来た?お土産は、明日もらいに行っても良いかな?』
鷹空さんから返信が来ると、同時に既読が増えていく。部屋には一人だけど、俺の帰りを待っていてくれる人がいて、心が温かくなる。
吾郎『正直言って、今回の帰省は癒しのいの字もなかった』
ここぞとばかりに獅子王への愚痴をぶちまけまくりました。いくら正体を明かしたとはいえ、無関係のヒーローの秘密を一般人に明かすのは、ご法度だ。
でも、獅子王は顔出しでインタビューを受けているので問題なし。俺のくつろぎタイムを邪魔したんだ。愚痴りまくってやる。
月山『里帰りしても巻き込まれてるんだな。流石のお前でも援護拒否か』
援護要請拒否扱いにしようと思ったけど、中止した。ハーモニーオーケストラの担当区域は俺の地元。
『うちの親やご近所さんが巻き込まれる危険性があるから、やめたよ。それに響ちゃんを見捨てるのは、流石に心苦しい……なにより響ちゃんが大怪我したら、律がさらに落ち込むし』
都会に住んでいる月山達には分からないだろうけど、田舎だと直接の知り合いじゃなくても、たどれば何らかの繋がりがある可能性があるのだ。
父さんの同僚の息子、元クラスメイトの彼女、従兄の友達。俺が見捨てて、その人に何かあったら、気まずい。
健也『バフ系ヒーローか。確かバフ系って、有名なヒーロー少ないよな……楽器がピアノとリコーダーだけで大丈夫なのか?』
正直、かなりまずい。ハーモニーオーケストラは、音楽の力で戦うらしい。今のままだとハザーズ戦うには、力不足過ぎる。
吾郎『正直、微妙だな。新規メンバーの加入は難しいと思う』
でも、二人を強化すればオッケーとはならないのだ。別に楽器がオーケストラでメジャーじゃやないとか、二人に音楽の才能がないからって事じゃない。
バフ系ヒーローって、強化と弱体化が表裏一体。バフ役と親しくなればパワーアップ出来る。でも、他のメンバーは不満を募らせる訳で。
前もクリスマスで仲がこじれたバフ系ヒーローの援護に行った。ちなみにシュライバーラバーズからは、まだお礼を言われていません。
智美『それって音楽の才能がないと駄目だから?』
多分、ハーモニーオーケストラは音楽の才能があった方が、強いヒーローになれる。
リコーダーの子は分からないけど、響ちゃんのピアノは習い事レベル。オーケストラに加入出来るレベルではない。
(多分、ハザーズに襲われて急遽パスを繋いだんだろうな)
バフ系とパスを繋ぐと、気持ちが高揚するそうだ。嫌な言い方をすれば強制的に好感度が増幅されてしまう。
もし、恋人がいても調みたく、寝取り状態になってしまうのだ。
響ちゃんがハーモニーオーケストラを続けたら……あの状態に追い打ちがかかる訳で……悪い結果しか頭に思い浮かんでこない。
律、リア充爆発しろだなんて、心の中で文句つけてごめん。
吾郎『逆ですよ。確かに音楽の才能はあった方が良いと思います。多分、加入条件は楽器を弾ける事。かなり緩めかと。逆に聞きますけど【ハーレムに入って、俺の代わりにハザーズと戦って】って言われて入りますか?』
かなり下種な言い方になっているけど、ある意味正しい。バフ役ヒーローの自信は、どこからくるんだろう?
甲二級の俺は告白するん自信すらないのに。
月山『本物のオーケストラに入れる人はとんでもないお嬢様が多いらしいな。しかも、音楽の才能も抜きんでている筈。それでも一日何時間もの練習が必要。ヒーローをしている暇もなければ、必要もなし。そんな人にハーレムに入れって言われもガン無視されるだけか』
もし、加入したら響ちゃんはレギュラーから落ちる可能性が高い。パスが外れて冷静になる。
想像しただけで、胃が痛くなるんですけど。
(結局、律から連絡はなしか)
お礼を言われたくてお土産を渡した訳じゃないけど、少し寂しい。一回彼女盗られただけだろ?俺なんて、スタートラインにも立ててないんだぞ。
ふて寝しようとしたら、スマホが鳴った。表示されたのは鷹空さんの名前。
『明日、皆にお土産渡すんだよね?まだ会っていないヒーローや職員の人もいるし。僕も牽制うね。僕は吾郎のサポート役なんだし』
律、二回目のごめん。俺は笑顔で寝れます。
◇
荷物も届いたので、個別に分けていく。去年より、確実に量が増えています。
本部にも行かなきゃいけないから、今日は結構忙しい。
でも、俺はテンション上がっている。なぜなら鷹空さんが、お土産配りに付き合ってくれるのだ。
お土産を取りにくるついでらしいけど、かなり嬉しい。やっぱり、鷹空さんは優しい子だ。
(これはデートと言っても過言ではないと思う)
多分、サポート役の仕事なんだけど、知らない人が見たらデートに見える筈。俺も役得気分で楽しませてもらう。
「それにしても凄い量だね。智美達の他に、ヒーローの人にも渡すんだよね」
部屋に置かれたお土産を見て、鷹空さんが驚いていた。正確には仕事絡みの方が多いんだけどね。
「ヒーロー関係は本部で預かってもらうんだ。総司令にはアポがないと会えないし。秋待さんの分は月山に預かってもらうし、副浪さんのは健司に渡しておけば問題なし、白鳥さんの物は鷹空さんお願いして良いかな?」
美影さんの分はブルーキャッツに持って行かなきゃいけない。予定を聞いたら『翼ちゃんと一緒に店に持ってきて』って言われました。
「皆、絶対に喜ぶよ。そうだ。あのグラス見せて。津軽びいどろのやつ。吾郎用の黄色のも見たいな」
まじで?気に入ってくれるか不安だったけど、買って良かった。
「これだよ」
グラスを二つ並べておく。なんかカップル感があって嬉しいです。
「僕、黄色の方をもらっていいかな?吾郎好きなんだよな。吾郎は僕が似合うし」
色にはこだわりがないし、鷹空さんが黄色好きなのはかなり嬉しい。まったく問題ありません。
◇
美影さんやブルーキャッツにからかわれたけど、皆喜んでくれた……くれたんだけど。
本部に来たら総司令に呼ばれました。
「吾郎、毎年お土産嬉しいぞ。礼を言う」
総司令がお土産のお礼?今まで一回も言った事ないじゃん。
「九稲総司令。は、初めまして。ホークソルジャーこと鷹空翼です。今度ご……コカトイエローさんのサポート役に就任させて頂きました」
総司令の気圧されたのか、鷹空さんはかなり緊張している。九稲総司令は名実共にヒーローのトップ。緊張するなって方が無理だ。
「よろしく頼むぞ。その馬鹿は、ずぼらなところがあるし、直ぐに無茶をするので、前から首輪を任せる人間が必要だったんじゃ。モテないから、ハニートラップにかかる危険性もあるしの」
鷹空さんの前でなんて事を。
でも、ハニトラに引っ掛かったヒーローは、結構いる。総司令が心配する気持ちは分かる。
俺はモテない自覚があるから、ハニトラにはかからない自信がある。
「お任せ下さい。僕がサポート役になったから、怪しい敵は近づかせませんので」
いや、俺に近づく女性なんていません。近づいてきた時点で怪しい訳で。でも、俺が断るより、同性の鷹空さんが断った方が波風は立たないと思う。
「本気で、にぶいの……吾郎、命令がある。鷹空翼とともに竜司の店に行け。たまには兄の所へ顔を出せ」
鷹空さんと兄ちゃんの店に……絶対に嫌です。
執筆、頑張ります




