ep.4愛するものと生きてゆく、それが過程であり到達点
ジェイクは眠るアリシャを抱き上げて、月のない地下の天井を眺めていた。
またうなされていた。今度は穏やかだが怒っているような、何か不思議な感じで寝言を言っていた。
その後、お腹を抱えてうずくまったので、腹が痛いのかと思って抱き上げたのだ。
必要なら、医者のところに駆け込もうと思って。
「……ジェイク」
その声は、ジェイクの全細胞を目覚めさせる。
「アリシャ、起きたか」
ホッとして、鰐男は腕の中のアリシャを抱きしめた。
「何故、毎晩うなされてるんだ?」
聞かなくても良いとも思った。アリシャなら自分から話すだろうと。
だが、様子がおかしいと不安になる。
不安になると、いつもの自分ではなくなる。配管の修理も上手く行かなくなるし、歩いていたら何かにぶつかって壊したりするし、アリシャのそばから離れられずトイレに行くのも我慢してしまう。
アリシャは不思議と笑っていた。
「おじいちゃんがね、元気な子どもが産まれるようにって言ってた」
くすりと笑うアリシャは、世界一可愛いと思う。
そもそも他のメスを可愛いだのなんだのと思ったらこともないが。
とにかくそういうことなのだ。
ジェイクは恥ずかしくなって顔を伏せた。
そこに、アリシャはキスをした。
イリエワニの顔が長すぎて、いつも頬にキスすることの方が多いけど。
「ジェイクは、私のこと好き?」
当たり前のことを聞かれ。
「ああ。他の何もいらない。お前だけだ」
「それは困ったな! 子どもが産まれたら、子どもも同じだけ愛してね」
急にそんなことを言われ、ジェイクは狼狽える。
アリシャはイタズラっぽく笑っている。
「……努力する」
配管工の仕事も完璧にこなしてきたつもりだ。
夫でも、父でも、完璧な仕事っぷりを見せたらいいだろう。
何故アリシャが子どもの話をそんなにするのか、ジェイクには分からない部分も多かったが、ただ愛する相手に求められたら、それは幸せだろう。
寡黙な鰐男は、腕の中の世界一大切な存在を抱きしめる。
絶対に離さない。
共に生きてゆくのだ。
「ジェイクが私のために生きてくれるから、私もジェイクのために生きてく」
その言葉は、祖父に対する返答でもあった。
だがジェイクはそれを知らない。
ただ、愛するものが同じように考え、同じ想いを抱くことは、
とても幸せだと思う。
この世界が終わらないで、ずっと続けばいい。
終




