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サラの祈り  作者: 和正
31/352

六桁の番号(2)


「その女性が知り合いじゃないことはアフメドの顔を見てすぐに気がついたし、帰り道にその女性ついて訊いてもうやむやな返事ばかりだったから、アフメドもその日初めてサラを見つけたんだと思う。二人が話し初めてすぐに、私がそこに来たような様子だった。挨拶を交わしたくらいで私がアフメドの名前を呼んだみたい。


アフメドとは長い付き合いだけど、街で女性に話しかけるところを見たことがないし、店員にも話しかけられないような人なの。サラに感じたことのない魅力を感じているようだった。私もその不思議な魅力に触れてみて色んなことを感じたの。例えば・・・」と言ってブシュラは斜め上を見た。


少しすると何かを思い出したようにまた口を開いた。


「六月か七月の晴れた日だった、夏服を買った帰りにカフェで休憩しようとテラス席にサラが荷物を置いて、私もそうした。少し暑かったけど、天気も良くて気持ち良かったのを今でも覚えてる。


サラはいつも私と違うものを注文して、シェアしてたの。些細なことだけど、いつの間にか二人の約束事になっていて、出掛ける楽しみにもなってた。カフェの出口の辺りでサラが急に私の肩に触れて、さっきまで私たちが座っていたテーブル指差していたから何かを忘れたのかと思ったけど、そうじゃなかった。


そこにはまだグラスや皿が残っていて、特別なものはないように見えたけど、サラの隣に立って同じようにテーブルを見るとすぐに理解したの。


六角形の水のグラスは太陽の光を拡散していて眩しかった。ただ、サラの立っているところからグラスを見ると信じられないくらい美しい幾何学模様を光で描いていたの。


サラは、意図してその場所にグラスを置いて、出口の近くのその場所で私の肩に触れたとしか考えられない。全ての光をコップが集めているようで、綺麗だった。何も知らない店員がそこを片付けてしまったけどね。いつもじゃないけどサラはこうやって私を驚かせて、感動させてくれた。


こういった出来事がサラなんです。髪が長くて、黒い目の女性とかではなくて。ただサラの手は綺麗で、でもそれは指が長くて細いとかじゃなくて、コップの持ち方や、指の動かし方、そういう意味です。


サラの癖がありました、ピアノ弾くように指で机を小突くんです。指で波を表現しているような・・・サラに馬の疾走だと言われてからは、不思議とそうとしか思えなかったの。


それでも、明らかに何かリズムをとっている時もあって、それは聞いたことのある音楽のような気がしたんだけど、その思い出せそうな音楽が思い出せなかった。きっと誰もが聴いた事があるんだろうけど・・・」ここまで話したブシュラの頬には涙が流れていた。


目を拭うと「サラの作品はひとつも形を残さなかった。ただ最後に私に残したものがある・・・」言ってから鳥のいない木に再び目を向けた。


「引き出しに奥にあるレシピが、ブシュラさんに残されたものですか?」好奇心と触れてはいけないものに手が触れてしまいそうな恐れがヌルの声を震わせていた。



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