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鬼麿の動きと右腕の動き、両方を見切った上での無法丸の攻撃であった。
「なっ!?」
鬼麿は思わぬ奇襲に慌てた。
右腕が鬼麿の顔に迫る。
鬼麿が左手で右手を受け止めた。
(まずい!!)
この隙に無法丸が斬りつけてくる。
鬼麿はそう思い、身構えた。
次に来る斬撃を防がねばならない。
そのまま、しばしの時が過ぎた。
しかし。
いつまで待っても攻撃は来ない。
(まさか!?)
ようやく、鬼麿は気づいた。
周りを見回す。
どこにも無法丸が居ない。
鬼麿が自らの右腕に気を取られた瞬間から、無法丸はすぐさま逃走を開始したのだろう。
おそらくは陽炎たちを追ったか。
遊んでいるつもりが、まんまと一杯食わされたのだ。
「ぐぬぬ…」
鬼麿の双眸が激しい怒りに燃えあがる。
「許さぬぞ、あの男…八つ裂きにしてやる!!」
闇夜の森の中を逃げる陽炎。
すぐ後ろには、四つ這いで追いすがる牙狼の姿があった。
化彦とは途中で、はぐれた。
間近に敵の気配を感じ、陽炎は覚悟を決めた。
振り返りざまに左手で手裏剣を放つ。
牽制である。
牙狼の隙を突こうと右手に小刀を構えた。
牙狼は軽々と手裏剣をかわし、跳んだ。
そして、陽炎の予想をはるかに上回る速さで襲いかかった。
牙狼の右手が陽炎の首を掴み、吊し上げる。
抵抗しようと小刀を振る陽炎。




