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先端が割れた細長い舌が、ちろちろと顔を出す。
「おやおや、皆、子供じゃないか」
異形の女が言った。
「こいつらに飛刃と腕丸は殺られちまったのかい?」
くくくっと笑う。
「あいつらも相当、焼きが回ったね」
腰の鞘から刀を抜いた。
「殺っちまいなっ!!」
女が叫ぶと同時に忍びたちが一斉に刀を抜いた。
隼人が蜜柑と春馬の方へと進もうとする。
女が立ち塞がった。
「春馬!!」
隼人が呼ぶ。
「隼人!」と春馬。
「蜜柑をしばらく頼む」
「うん! でも、なるべく早くしてよ!」
「おう!!」
十人の忍びが蜜柑と春馬を囲む。
「刀小僧は、この蛇美羅様が相手してやるよ」
ウロコの女、蛇美羅が口を開け「しゃー」と鳴いた。
赤い舌が踊る。
隼人が二本刀に両手をかけ、腰を落とした。
「いくぜ」
こちらも唇をぺろりと舐める。
一方、忍びたちに囲まれた二人は、じりじりと包囲を狭められ、危機に陥っていた。
蜜柑を背後に庇おうとする春馬。