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食べ終わった二人は、ようやく一息ついた。
その間、澪は二人の給仕をしたり、話しかけたりしていたが、虹丸は何も言わず黙っていた。
「こんなところで何をしてるんだね? あんたたち、子供二人だけかい?」
澪が訊いた。
蜜柑と春馬は顔を見合わせた。
二人とも苦笑いする。
とても説明できる状況ではなかった。
春馬が蜜柑に顔を近づけ、虹丸たちには聞こえぬように囁いた。
「この人たちを巻き込みたくないから、早く出ていこう」
蜜柑が頷く。
あまりの空腹に二人を頼り、家まで上がり込んだが、自分たちは敵に追われている最中である。
本来は関わることも避けるべきであった。
「ごちそうさまでした。ありがとうございます、助かりました」
春馬が頭を下げる。
蜜柑は居住まいを正し、指をついてしっかりと頭を下げた。
虹丸と澪は預かり知らぬことではあるが、小国の戦国城主の娘とはいえ、姫である蜜柑が庶民にここまでの謝意を示すなど、通常はあり得ない。