魔王、設定多いな
「と、とりあえずこっちも聞きたいことがあるのだ」
動揺しながらも、これまでの話をヘルは逸らし、話し始める。
「あの炎はどうやったのだ?異能力と関係なかろう?」
「いや違う。あの炎はな、ガソリンという液体...まあ、燃える水のようなものだ」
「あれは液体なのだっ? 炎を出したのではなく!?」
ヘルはユウタの異能であの現象が起こることを信じがたい模様そうだった。
「あれは霧状に生成したモノだから見えなかったのだろう」
「ほう...最初に発生したモヤはそれなのだな!」
ヘルがだいたい分かったようなので本来の話の話題に戻る。
「じゃあ、本題に戻って住んでいい部屋を教えてくれ」
「ああ。そうなのd」
ヘルが言い終わる前に小さくヘルのお腹から虫が鳴く。
「......」
「...ユウタを召喚するのに忙しくて、ご飯食べていなかったのだ。さて、先にキッチンに行くのだ」
「てか、その服装でいいのか?ボロボロなんだが」
「......っ!?ユウタのせいなのだ、ユウタのっ!!」
ヘルは今まで服がボロボロで肌が露出している状態のでユウタと話しており、隠すのを忘れていたようだ。
「上着を貸すのだ、上着をっ!!」
「はぁ...分かったよ」
ブレザーを貸してあげるがブレザーはヘルを覆い、袖が余っているダボダボの状態だ。そして、下を履いてないようにしか見えない。
「悪化したような気がする」
「なんなのだ?」
「いや、何でもない」
とりあえず黙っておいて、行くことにする。
「よし、じゃあ行くか」
「案内するのだ」
先行するヘルに付いて行く。
召喚の魔法陣の刻まれた地下室を出ると、石造りでしっかりとした螺旋階段が有る。螺旋階段はランプのような物で最低限照らされている。
まだ下は続いていたようだが、ヘルが上に行ったので後を追う。
「よっと...ほいっほいっ」
その階段をヘルは軽々と二段飛びしていった。
「な、なあ...長くないか?」
10階建てのマンションを階段で登りきったぐらいの疲労感がユウタを襲うがヘルは疲れもせず、ひょいひょいと登る。
「まだ半分ぐらいなのだ」
「マジか…そして、喉乾いてきたな。異能力で出せねえかな...」
ガソリンが出せたってことは混合物でもいいって事だし、大抵の飲料は出せるのか。
とりあえず、出そうと考えれば出せない物が直感で分かるし、試してみよう。
コーラ......出来る!!よし!
早速口の中に生成するか。
「液体生成!!」
ユウタは立ち止まり、口を上に向け、異能力で生成されたコーラを待ち構える。
コーラはユウタの口から5センチ程の距離から出現する。
「ゴクッ...ゴクッ...」
生成したコーラは元の世界と全く同じの味でキンキンに冷えていたが…
「ゴフッ!?ゴホッ!...ゴホッ!.........生成される量多すぎた…今度からコップで飲も...」
コーラが気管に入り、噎せてしまう。
「ぬ?.....何をやっているのだ? なんか飲んでいたのだ!?」
「ああ。コーラ...まあ、異世界の飲み物って奴だ」
「ぬぅ!? 我にも飲ませろ!そのコーラとやらを!」
魔王様は異世界の飲み物に興味津々のようで登っていた階段を降りてきてまで、コーラをせがむ。
「いいけど、顔に掛かっても知らないぞ」
「良いのだ」
「じゃあ上を向いて、口を開け........さあ、行くぞ?」
ヘルが顔を上を向け口を開いたのを確認し、コーラを生成する。
「いいぞ、来るnゴホッ! ゴボゴボッ!......」
そして、漫才の様にコーラが生成されるタイミングでヘルが喋り出し、開いた口が閉まったせいでヘルの顔面にコーラが掛けられた。
「ぬお〜!! ベタベタするのだぁー!!」
「クソいいタイミングで口閉じたな」
「ぬぅー...もう1回なのだ!」
ヘルは怒りながらも果敢にもう一度挑戦していく。
「なにこれデジャブ?」
「さあ、来い。受け止めt!?ゴボゴボゴボッ!! ...」
「ちょ!?」
ヘルに来いと言われた為、ユウタはコーラを生成したが、ヘルがまだ喋り出すと思っておらず、またしてもヘルの顔面に掛かる。
「うぅ...ベタベタなのだぁ...もういいのだぁ...」
「魔王にロリにチョロインにドジっ子に...設定入れ過ぎじゃね...」
「何を訳分からんことを言っておる...はよ、上に向かうぞ...」
魔王は懲りたのか、体がベタベタの状態で階段をトボトボと登って言ったのだった。
登って言った先は、謁見の間の王の席の裏から出た。
「さて、風呂場に向かうのだ」
ヘルはそう言い歩きだそうとする。
「え? キッチンに向かうんじゃなかったのか?」
「何を言っておるのだ。このベタベタ状態。そして、この格好で人前や配下に見られる訳には行かん!!」
「俺は?」
「......」
ヘルは黙り、ユウタを見る。
「うわーん!!.........そこで待っておれぇ! 我は風呂に入ってくるのだァ〜!!」
ヘルは走り出し、謁見の間から出ていったのだった。
「俺も手がベトベトしてて、洗いに行きたいんだが…」
今ついて行っても追い付けないだろうし、迷子になるだろうから、謁見の間から出ない方が得策か。
とりあえず、休めるところは、硬い床か、王様の玉座しか無いし、座っておくか。
「ふぅ......思ったより硬いんだな」
王様が座る玉座は硬かった。ふわふわじゃなくて何で硬いんだろうか…。まさか、気持ち良すぎて謁見中に寝ない為か? いやそんな訳あるか…。いや、アレが魔王なら有り得そうだな。
そんなことを考えていると突然、声が掛かる。
「だ、誰かいるのか?......貴様何をしている!!」
謁見の間の入口の方に赤い長髪を持ち、特徴的なアホ毛が有る女の子がいた。その子は灰色のフード付きローブを着ている。
「ヘルに、ここで待ってろって言われたんだが…」
「魔王様を呼び捨てだと!? なんたる愚行!!まさか貴様、侵入者か!?」
「いや、俺呼び出されたんだけど!?」
その赤髪の女の子は言葉責めして来るのだが、こっちの話を聞いてくれない模様。
「人が来るなど聞いていない!! 嘘を言うな! 侵入者めが!! 成敗してくれる!」
「ちょ!?待てよ!?」
「黙れ、侵入者。燃えろ。炎の魔術師っ!!」
赤髪の女の子は、手からサッカーボール並の炎の玉を5個、ユウタに向けて発射される。
「クソッ... 液体生成!!」
ユウタは常温のガソリンの雨を横長く壁状に降らせた後、玉座の裏に隠れる。
そして炎の玉がガソリンの雨に当たり激しく燃え上がり、炎の壁となる。これはただの避ける為の目眩しに過ぎない。
炎の玉はこちらに飛んでくるが玉座に阻まれる。
「どこだ!?」
あっちは完全にこっちを見失う。そして、こちらから仕掛ける。
「 液体生成!!これはさっきと同じ液体だ! お前が異能力を使えばお前は爆発して死ぬぞ」
エタノールの雨を赤髪の女の子を襲う。
さすがに、ガソリン掛けても後々が大変なのでアルコールであるエタノールを掛ける。
ガソリンの匂いは、届いてないことを祈る。
先程、火の玉を手から出していたのでおそらく近くでしか出せないにだろうから、これで異能力は封じたはず...
「ック!?......魔王様。お側に支えさせて頂き、ありがとうございました」
「クソッ!? 死ぬ気か!!」
「ただいま、なのだ〜」
そのシリアスなシーンど真ん中でその魔王様、ヘルが帰ってくるのだが…
「炎の魔術師!!」
「液体生成!!」
赤髪の女の子が炎を生成し、それが周りのエタノールに引火し、広がる。
その瞬間!!
謁見の間に大きな正方形の水の塊が現れ、赤髪の女の子ごと水に埋もれ、炎が鎮火する。
ユウタは凄まじい量の水を生成し、物量で相手を潰す。
「よし!!」
そして...その正方形の水の塊は崩れ、こっちに波が押し寄せる!!
「って!?うわああああああ!!」
「な、なんなのだああああ!?」
「ゴボゴボッ!?...」
その場の全員、水に呑まれる。なんとか、全員生き残ったものの城の大部分は水浸しになり、しばらく使用不可になるのだった...。