俺、神絵師と結婚するんだ...
ヘルが朝霧悠太にもう一度、燃やされそうになった為に必死に止めようとするが、止めようとする際に誤って、「なんでも言うこと従う」と言ってしまい朝霧悠太にそれを聞かれ、考え事をし始める。
「なあ…」
「ひっ!?......何を命令するのだ!? うぅ...我があんなコトやこんなコトに...」
ヘルは恥ずかしがって、先程の炎で服が燃えて一部、肌を露出した所を腕で必死に隠す。
それでも肌は見えており、肌に刻まれた魔法陣らしきモノがチラチラ見える。
「じゃあ...」
そんなヘルを無視し、朝霧悠太は話を進める。
「俺を養えっ!」
「うぅ......えっ!?ええええっ〜!!」
恥ずかしがっていたヘルに突然、予期して無かった言葉が朝霧悠太の口から飛び出す。
「そうだな…適当な部屋と満足に暮らせるお小遣い、それと一日三食のご飯を提供してくれれば、一向に構わん」
「そ、そうじゃないぞ!? なんでそんな遠回りの事を言うのだ?」
朝霧悠太は次々と条件を出していくが、それ以前の問題だとヘルは思った。
「俺では家や財産の管理は力を不足だろうしな」
「そ、そう言う問題じゃなく...直接的なモノが...あるだろう…?」
q
ヘルはモジモジしながら朝霧悠太の応えを否定する。
「魔王様は、チョロインかよ。だが、異世界に来てしまったら異世界の奴らも三次元の存在...。三次元は興味ねえ! 俺、将来、神絵師と結婚するだ...」
「よく分かんないのだが、酷い事言われてる様な気はするぞ!?」
ラノベ主人公のテンプレの様に鈍感では無く、ヘルが自分に好意?を抱いている事を分かっている。何故、好意を抱いたかは不明だが正直、どうでもいい。三次元はいらねえ。
「それで、だ。何処の部屋に住めばいいんだ?」
「なんで、住むことが決まってるのだ!?」
話を戻し、何処の部屋に住めばいいか、聞いてみたが
ヘルに言い返される。
「"なんでも"従うんだよな?何回でも」
「ぬあぁ〜っ!! 流石に何回も、は無理なのだ! さっきの1回のみ、なのだ!!」
さっき言っていた事が前に行ったこと矛盾するので追及するとヘルはあっさり認めるが流石に何回もは言ってなかったので拒否された。これはしょうがない。異世界に法律など無い。遠慮無く行かせてもらおう。
「...え?なにか?」
「......」
自分が被害を受けない程度の距離でガソリンの霧を生成し、そう答える。
「ひぃ!!ごめんなしゃい!?」
「そんで?」
ヘルは先程の火傷の衝撃を思い出し、ガクブルと震える。それに返事を聞く。
「ふぁい...もう1回分で勘弁して欲しいのだぁ...」
「まあ、それでいいか」
やはりか、揺すれば出てくると思った。
まあ地球では脅迫罪だけどな…。ここにはその様な法律など無い。
まあ、1つで勘弁してやろう。さて、ここからが問題だ。人は信じられんからな…
「もう1つはどうするのだ? やはり...」
「もう1つ! 俺に攻撃する事を能力で封じろ。なあ、出来るだろ?」
ヘルはが何かを言おうとするが、俺はここでハッタリを掛ける。ヘルは子供っぽさそうだから騙せるだろう。
これは話しながら考えていた事だがまず、自分に異能力が有る通り、ヘルにも異能力が有る事が予想出来る。
問題はヘルがどのような異能力を持っているかだが、おそらく、あの距離で攻撃しなかったという事は簡単に攻撃出来る異能力では無いということだ。
そして、召喚の魔法陣と防御の魔法陣を使った事から魔法陣生成辺りだろう。
召喚の魔法陣は自分で召喚主だと言っていたし、こっちがガソリンで燃やした時、途中まで痛そうな声が聞こえていたが止んだので防御系に能力を使ったことが分かるし、体に魔法陣のようなものがあったし、それだろう。
つまり俺は思う。ヘルの異能力は魔法陣生成でどんな効果の魔法陣でも作れるがその分時間が掛かる。
なのでは無いだろうか。これは、あくまでも予想にすぎん。
ヘルが騙されることを祈ろう。
「っ!?...なぜ、知ってるのだ!?」
ははは...こいつやっぱりちょろいわ。見た目がロリだからちょっと気に病むが、奴は魔王だったから、良いとしよう。
「はっはっは! お見通しだぞ? さあ、それを掛けるのだ!!」
「うぅ...分かった。座って、手を出すのだ」
あたかも知ってるかのように見せかけて、ヘルに指示をする。ヘルは正座をして言った。
「ああ」
ヘルの指示に従い、手を出すと正座しているヘルの太ももの上に置かれる。
それからヘルの左手で押さえ付けられ、右手で筆のような物を持ち、右の手の甲に魔法陣を刻まれる。
ああ何だか...柔らk...はっ!?
「やられる!?」
「動くんじゃない」
何だか取り込まれそうになり、なんとか振りほどくがヘルに注意され、元の体勢に戻る。
「っく!?殺せ…」
「静かにするのだ」
手を動かそうとするが、ヘルの左手に掛かる力が強くなる一方だ。
そして俺は言う。俺はロリコンじゃない。
厳密には"三次元"のだがな。三次元は嫌いだ。良い点もあると思いきや、悪い点が多すぎる。完璧な人間など居ないのだ。三次元はクソッタレだ。
それに対して、二次元は余計なことは無く、悪い所など一切無い。完璧だな!
そして、今さっきのは魅了の魔法書けられてただけオーケー?
そんなことを考えていると、ヘルが手の甲に魔法陣が出来上がっていた。
「ちょっと待ってるのだ」
ヘルはそう言い、左手に魔法陣を自分の手の甲の上に刻んでいった。
自分の手の甲に出来上がっていた魔法陣は幾何学模様で構成されており、美を感じる。
「これでどうするんだ?」
「我の手にアサギリの血を、後はその逆なのだ。自分の歯で指を噛めば少し血は出る」
「マジかよ。血か」
血が必要なのか…なんか異世界っぽい気がする。
と思っていたら、ヘルが親指を口の中に指を突っ込み、噛んで血を出そうとするのが見えた。
「まあ、異世界だと普通にありそうな話だけどな」
そして、朝霧悠太も自分の歯で左手の親指を噛んで血を出そうとする。
「ガッ!? ......結構いってえな...」
「それじゃあ、血が出てる箇所を我の手に魔法陣に当てるのだ。魔法陣のがある方の手は出しておけ」
思ったより痛かった…てかこれ、思ったけど、液体生成で血液出した方が良かったんじゃね? いや、まあ...出てくる血が俺の血じゃない可能性あるし、こっちが確実か。
「こうすればいいんだな?」
ヘルと向かい合い、血が出ている左手と魔法陣が書かれている右手を前に出す。
「あっ...これどうすればいいのだ?...」
ヘルの方を見ると右利きで魔法陣を刻む筆のような物を持ってる為、必然的に左手の甲に魔法陣を書かれる。それで、血を出す為に切った傷も左手に有る。
「じゃあ、俺がお前を包めばいいんだな」
「確かにそうなのだ!」
朝霧悠太の手でヘルの手が挟まれる。そして切り傷を魔法陣に押し付ける。
「おお!」
紫の光が魔法陣から放たれ、手の隙間からチラチラと光ってるのが分かる。
その光がある程度強くなった後、光を発さなくなる。
「これで終わりなのだ」
「結構、簡単なんだな」
「術者と対象が無理やり契約させれない限り、魔法陣はすぐ書き終わるのだ」
なるほど...と言うかヘルの能力について答え合わせしたいな...
「そういえば、お前は俺の異能力見たけど、俺はお前の異能力を見ていない。不平等じゃないか?」
「ヘル...ヘルと呼ぶのだ。さっきからアサギリは我を魔王やらお前やら言ってるぞ」
確かにそうだな…言ってることは間違ってないが...
「じゃあ俺も、アサギリでは無く、悠太と呼んでくれ、ヘル」
「ああ、良いのだ。ユウタ」
てか、向かい合って名前を呼び合うとか恥ずかしくね?とりあえず、話の話題を戻す。
「それじゃあ、ヘルの異能力はなんなんだ?」
「本来は隠すものなのだが...まあいいのだ。...我の異能力は…魔法陣制作なのだ。効果はどんな筆記具でも魔法陣が描け、どんな効果の魔法陣でも刻めるが強さにより、作成時間と書く面積が増えるのだ。魔法陣は使用後、使用不可と破壊したらその場に魔力の残り香を残しそこでの魔法陣作成を阻害するようになるが同じ魔法陣をもう一度なぞれば再利用可能なのだ」
合っていたか。しかし...チートだな。時間を掛ければ何でも出来るのか…ヤバいな
「なるほどな、時間掛けて作ればチートだな…召喚の魔法陣描くのにどんだけ掛かったんだ?」
「100年なのだ」
ヘルは100年という言葉をあっさりと口にした。
それって......ひゃ、百才以上確定になるぞ!?
「はぁ!?ヘルは、何歳なんだよ!?」
「じゅじゅじゅ、10年掛かったのだ!?」
ヘルは慌てて、言ったことを訂正するが明らかにもう既に遅い。
「おい、嘘丸出しだぞ?」
「ち、違うぞっ!!…それ以前に女性に年齢を聞くのは間違っているのだぁ〜!!」
ヘルの叫び声が地下室に響き渡るのだった...。