妖花≪七毒経教主≫
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傭兵達は、後方に退散しながら、弓を構え一斉に矢を放っ。
空気を裂きながら、数十の矢が人面花に突き刺さる。
『グゲッ』
『グギャ』
黄色い飛沫を撒き散らし急激に萎む。
萎むと同時に、新しい人面花がむくむくとせり出してくる。
刀と槍を持った若い傭兵が二人、勇敢にも突進して行った。
一人は、大きくジャンプしながら人面花に切り付ける。
もう一人は、槍を幹に突き刺す。
突然、妖植物が狂ったように暴れだした。
そして、揺れ動く枝で二人を絡める。
動けない二人に、無数の人面花が襲い掛かる。
『シュー』
『ジユー』
黄色の液を大量に浴び、風船が萎むように人間だった原形が崩れる。
辺りに死体を焼くような異臭が漂い始める。我らは、異形の怪物に襲われている……
全員、金縛りにあったみたいに眼を大きく見開き、口をぱくぱくさせていた。
『チリリ~ン』
『チリ~ンリン』
何処からともなく大気を振るわせ、響き渡る透明な鈴の音色。
傭兵達と妖植物の間にふわりと、天空から舞い降りてきた一人の女性。
清らかさと美しさと妖しい瞳を兼ね備え、はち切れんばかりの胸。
この女性こそ七毒教の教主、妖花であった。
妖花の躯から発散する妖艶な香り。
傭兵達は、脳髄までクラクラし体中の血液が逆流するほど、
この世の物ではない妖しい美しさに死の恐怖など吹き飛んでしまった。
妖花が舞い降りた二メートル四方は七色の艶やかな絹が、
大地の上でまるで生きづいているように微妙に蠢動している。
『クックォ』
『クックツ』
頭目が、奇妙な笑い声をたてながら呟く。
「女、何物だ!」
「それは、こちらのセリフよ!」
「奇妙な妖術を使用するわね
でも、わたしの七毒の前には通用しない!」
ほんのり紅く濡れた唇から言葉を発すると同時に、妖花が、ふわりと回転しながら飛翔する。
七色の鮮やかな絹が、命を吹き込まれた生き物のように妖しく華麗に舞う。
『チリリ~ン』
『チリ~ン』
黒装束の頭目へ妖花が右手を翳す。
頭目へ翳した妖花の右手の爪の間から乳白色の妖糸が
放物線を描いて頭目に襲い掛かる。
「我が妖糸から逃れられるなら逃げてみよ!」
「ここには赤霧も雪蘭も居なそうだから、ひとまず退散するか」
(この女、何物なんだ……。日本にも、これほどの美人はいないぞ。
それにしても、わしの術が敗れるとはのぅ……)
妖花の言葉が耳に届かないのか……
頭目は意にかいする風もなく、淡々とした言葉をぽつり投げかけた。
「ふ~んそういう事なら容赦しないわ」
少し顔を紅潮させながら右手で大きくゆっくり円を描きながら、
徐々に
スピードを
増していった。
妖糸が複雑に絡みあいながら四方八方から、組頭に絡みつき、まるで巨大な繭のよう。
「クックツでは、さらばじゃ」
声と同時に繭が七色に明滅し始めた。
『ぼぉ~ん』
鈍い音と振動が空気を揺るがす。
繭がだんだん
萎んでいく。
(信じられないわ……
赤霧さんも厄介な相手に狙われたものね)
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