門限があったら無理ゲーですけど?
「は?」
エリオットがフォークを落とした。
「いやいやいやいや、待て待て待て待て」
「何でそうなる?」
威厳のある父の姿はもうどこにもなかった。
「いや、だって昨日行きたいって言ってたし」
「あれは冗談だろ?誰がどう見ても」
だよな、と同意を求めるようにエリオットが俺の方を向く。
「え?そうなのか?テンセイ」
「いや、本気です。マジです」
「テンセイ……魔王討伐だぞ。遊びじゃないんだぞ。自分探しの旅じゃないんだぞ」
……あれ、このオヤジ思ったよりノリいいな。
「父上、まあ聞いてください」
ルークが真面目になった。あの時に見せた騎士、もとい領主の顔だ。
「テンセイは強い。それに才能があります。俺なんかよりもずっと」
「昨晩一緒に戦って確信しました。俺が模擬戦で負けたのは偶然じゃなかった、と。テンセイが行きたいというのなら、行かせるべきです」
「どうかお願いします」
そう言って、静かに頭を下げた。
ルークの気迫に押されて、エリオットがたじろぐ。
そりゃそうだ。
父上だって、兄上ならまだ"可能性あり"と思って、魔王行きを許可したんだから。
それでも、内心はああだった。
……だが、魔王云々は別にしても、俺がここに残るのは危険だ。
悲しいことにあの剣のお陰で、今や俺はトラブルメーカーなんだから。
「父上、俺からも改めてお願いします。行かせてください」
「テンセイ……」
父上が頭を抱えた。
だが、やがて重い口を開いた。
「20時だ」
「はい?」
「毎日20時までに家に帰ってくる事。それが条件だ」
「それだと魔王の領地にすら行けませんけど」
というか、家から離れたいのが1番の目的なんだが。それじゃ困るんだが。
「……陛下にルークの代理としてお前を推薦することは認める。だが、なんの実績も、後ろ盾もないお前が、いきなり魔王領に行くのは無謀すぎる。ミアやマリアの気持ちも考えろ」
俺は2人を見た。特にミアは心配そうな顔をしている。分かっちゃいるが、ままならないね。
「本気でやりたいのなら、先ずは相応の信頼を勝ち取ってみせろ」
「信頼、というと? どうしたらいいですか?」
「自分で考えろ。それすら出来ないなら、二度と魔王討伐なぞ口にするな」
……なんだか、ややこしい話になった。
まあ、この辺が落とし所か。
「承知しました。ありがとうございます、父上。必ず父上の信頼を勝ち取って、この門限を外してみせます」
俺は出来るだけ胸を張って答えると、ルークもそれに応えた。
「頑張れよテンセイ。男は無断外泊出来て一人前だ」
それを見ていた父上が小声でぼやいた。
「うちの息子達、ちょっとズレてるんだよな……」
まあ、ひとまず兄上が行かなくなっただけよしとしよう。
信頼の勝ち取り方については……天の声に丸投げでいいか。




