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勇者として召喚されたなんて知らなかったから異世界で農家になりました  作者: ほげえ(鼻ほじ)
娘さんを僕にください -結婚編-
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なんだかツヴァイの手のひらで転がされている気がするなぁ。


ぼんやり思いながら魔王とのお茶会は続く。



「ところで、ヨシュアさんは魔王の座を目指さないのですか?」



「え?いやいやそんな恐れ多い。非力な僕にはとても務まりません」


「勇者という時点で素晴らしい能力をお持ちだと思います。そして私の娘と結婚すれば、魔王の座につくことも可能でしょう」



ヨシュア、魔王ルートへの分岐が現れた。



「元々いた世界では、一般庶民でしたから。国を治める器ではありません。それに、育った国は戦争をしないと憲法で定めた国です。争いのない国で育った僕では実力主義の国の魔王はとても務まりません。いざというとき、頼りにならないでしょう」



魔王は務まりません。大事なことなので二回言いました。



「憲法とは?」


しめた!魔王の興味が別のことに移ったぞ!


「国民主義や、基本的人権の尊重、平和主義といった、政治をする上での基本となる法律をまとめたものです」



多分。自信はない。



「平和主義という憲法の中で、他国との戦争はしないと決められています。そのため、たとえ国のトップといえど、この国で言えば魔王であるお義父様が人間界へ進軍しろと命令出来ません。魔王でさえ変えられない法律なんです」



「それでは進軍されたときにどうするのですか?」



「自らを守るための自衛隊という部隊がいます。何かあれば防衛するだけの戦力しかいません。戦争がないので普段は天災が起きたときの救助隊として活動してるイメージですね」



「ヨシュアさんは平和な国で育ったからこそ、和平を提案されたんですね」



うんうんと頷いて納得する魔王。

残念ながらヨシュアはツヴァイの手のひらで転がされただけである。



「他にここや人間界と異なる政治の制度はありませんか?」



「そうですね、奴隷から仲間になってくれた皆から、人間界は世襲制で国を治めると聞きました。僕のいた国でも昔はそうだったのですが、今は国民の象徴として生活してます。政治へは関わりません。政治を行うのは、自ら国を変えたい、良くしたいと立候補し、国民の投票によって選ばれた人たちだけです」




「王族には隠居してもらい、新たな王を国民が選ぶのですか?」



「国民が選ぶのは王ではありません、政治家です。立候補した人たちがそれぞれどう変えていくつもりなのか、マニフェストを掲げます。例えば、公共事業として各街を繋ぐ道路を作るとか、子供の医療費を15歳までタダにするとか。国民に望まれているマニフェストを掲げる人が投票で選ばれるのです。そして選ばれた政治家達が話し合って政治を行う。政治家たちの代表として首相という存在がありますが、4年ごとに代表を投票で選び直す選挙がありますね」



「そんなに頻繁に国のトップが変わって大丈夫なんですか」





「憲法によって、揺るがない政治の基礎がありますから。それに信頼される首相なら選び直す選挙でまた当選します。信頼されなければ別の人が首相となるでしょう。権力を手にした人間が、悪政を始めないためにも、憲法によって制限をかけるんです。国民にとっていい政治をしなければ、トップから降ろされる。それが僕の住んでいた国の政治です」



「毎回トップが違うことで、外交問題は起きませんか?」



頑張れ僕の社会科の記憶っ!!

止まるんじゃ、ねぇぞ・・・!!



「例えば隣国で祭典が行われ、来賓として呼ばれたときには国民の象徴として暮らしている一族が飛び回ってますね。元々歴史ある王族ですから。ただその一族に産まれたというだけで、本人の意思に関係なく外交をしてもらうのは不憫ですけど」



「不憫、でしょうか。王族ですから、そのぶん裕福な生活は約束されているでしょう?」



「それでも、自分の人生をかけてやりたいことがあっても自由にその道へ進めないというのは不憫です。結婚相手もそれ相応の身分が求められます。国民主権、国民の自由を謳っているのに、王族は国民に入らないのでしょうか。たとえ王族だろうと、好きなことを仕事にしたり、愛する人と結婚したりする権利はあると思うんです。そのために権力を振るうのはダメですけど」



ヨシュアの考えは甘い。王族たるもの、国民の税で暮らす上に自由を求めるなんて我儘だ。民が許さないだろうと思うのは、魔王として、国のトップに君臨する者だからだろうか。



「お義父様は、魔王以外になりたいものはなかったんですか?」



「魔王、以外にか・・・」



しばらく思案する。

が、何も思い浮かばない。



この血筋に産まれてからずっと、次期魔王候補として生きてきた。そして魔王となった。

妻も政治的に最適だと判断した女性と結婚した。


産まれたときから魔王以外の道がなかった。



自由に選びたいと思う、その思考すら存在しなかったのだ。



これが、ヨシュアの言う不憫なのか。

自らの未来を選択する自由がないということが、不憫なことなのだろうか。



魔王としてこれまで生きてきて、尊敬、妬み、僻みは受けてきたが不憫だと憐れまれるのは初めてだ。



もちろんヨシュアにそのつもりはないのは理解していた。



「ヨシュア君、私もずっと魔王となることが自分の役割だと思っていて、他になりたいものなんてなかったんです。今はヨシュア君のお嫁さんになるのが楽しみですけどね!」



メルはきっと、父である魔王が何もないことに気付いてフォローしたのだろう。



「僕、交渉頑張る。メルの花嫁姿が見たい」



「それは私も見たい」



考え込みフリーズしていた魔王が会話に参加した。だいぶ口調も軽くなっている。



「メルさんにはやはり、真っ白のウェディングドレスもいいですが、深紅のバラをあしらったようなドレスも似合いそうですね」



「フリルも可愛らしいがレースも綺麗でいいと思うな」


「レースに所々、パールをあしらってもメルさんの輝きが増して美しいでしょうね」



「ふむ。ヨシュア君とはいい酒が飲めそうだ。魔王を目指してくれないのが残念だ」



「僕には農園の経営がありますから」



「そうだったな。メルも農作業してるのか?」



「いえ、メルさんには美貌と頭の回転のよさから営業と事務作業メインで働いていただいてます。手が空いても商品のパック詰め作業ですね」



「そうか、メルは妻ゆずりの整った顔立ちをしていてな。少し気が強そうな顔だが、美しいだろう。妻としてはどうだ?農村の妻となれば、家事をしなくてはならないだろう?」



「今は家事を専門にしてる元奴隷の人がいますから」



「メル、今のうちに教えてもらっておきなさい。出来ておいて損はない」



「お父様、ヨシュア君と仲良くなるのはいいですが、2人の生活に余計な口出しはしないでいただけますか?」



メルの目がつり上がっているのを見て、男2人は口をつぐんだ。


政治の部分はヨシュア君の知識によるものです。

ヨシュア君は日本の政治をこう理解してます。

作者は憲法って何があったっけ?とwikiで検索するレベルです。

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[気になる点] 憲法ってマグナカルタの事だよね?(すっとぼけ
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