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作戦会議をしました

とりあえず、本当にここがあの乙女ゲームの世界なのか確かめる必要がある。

ちょっと同じ名前や設定があったからといってここが本当に乙女ゲームの世界だなんて決めつけるのはまだ早いはず!!


私はまず、私が覚えている限りのあの乙女ゲームについての事柄を紙に書きだすことにした。


私が亡くなる直前までやっていた乙女ゲームその名も『FORTUNE・LOVER』は―

中世ヨーロッパ風の剣と魔法の国で、魔法の学園を舞台に魔法を学び、恋を育む割と王道の乙女ゲームだった。


この世界では貴族以上の身分をもつ者の中に魔力を持つ者が生まれることがある。

中には平民にもいるが、それはたいへんに稀なことである。

そして、魔力をもつ者は十五歳になるとその魔力をきちんと使えるようにするために学園へ集められる。



主人公である少女は平民であるにも関わらず魔力をもつ稀有な存在として学園に入学することとなる。

貴族ばかりの学園の中に突然入ることとなる主人公だが、持ち前の明るさと元気で、さまざまな困難に立ち向かっていく。


ちなみに、この世界での魔力は『水・火・土・風・光』に分けられていて一番多いものが土、続いて風、水、火と続く。なお、光の魔力は五つの中でも特に強い……だが、この魔力をもつ者はほんの一握りしかいない。


というわけで、主人公はもちろん光の魔力の持ち主だった。



<攻略対象は4人>


一人目は私が亡くなる前の晩にやっと攻略した国の第三王子様である『ジオルド・スティアート』

一見おとぎ話に出てきそうな金髪碧眼の王子様だが実は腹黒で性格は歪みぎみ。

なんでも簡単にできてしまう天才肌な王子様。何にも興味を持てずに退屈な日々を過ごしている。

幼い頃からの婚約者(カタリナ・クラエス公爵令嬢)がいる。魔力は火。



二人目はジオルドの双子の弟である第四王子様である『アラン・スティアート』

出来の良すぎる双子の兄と比べられ育ったためちょっとひねくれている(ジオルド程ではない)

双子だが兄とは外見は似ていない。銀髪碧眼の野性的な風貌の美形。

末っ子気質のやや甘えん坊な俺様系な王子様。魔力は水。



三人目はジオルド王子の婚約者、つまりカタリナ・クラエス公爵令嬢の義理の弟『キース・クラエス』

クラエス家の分家からその魔力の高さにより引き取られたが、義姉や義母から冷たくあしらわれ孤独な幼少期を過ごす。愛情不足の反動で、ふらふらしたチャラ男に育つ。亜麻色に青の瞳の色気あふれる美形。魔力は土。



四人目はジオルド、アランの幼馴染で宰相の息子である『ニコル・アスカルト』

四人の攻略者の中では一番の常識人だが、鉄面皮で口数が少ないためいまいち近寄りがたい。黒髪黒瞳の美形。

魔力は風。



そしてライバルキャラ

『カタリナ・クラエス』クラエス公爵の一人娘で高慢ちきで我儘なご令嬢。

幼少の頃に王子のせいで、額にできたという傷をたてにジオルド王子と婚約。

この傷があるうちは王子は自分のものだと、王子を束縛している。

また、突然できた義理の弟をよく思っておらずねちねち苛める。魔力は土。


ちなみにこのゲームには逆ハーレムルートも存在する。


そして、一番肝心なカタリナ・クラエスがゲームでどのようになるかだが……


ジオルド王子のルートではもちろん、義理の弟ルートでも平民の主人公が気に食わないと邪魔ものとして立ちはだかる。

もちろん逆ハールートでもだ。とにかく働き者な悪役なのだ。



そんな、働き者な悪役令嬢は……


主人公がジオルド王子を攻略成功し、ハッピーエンドを迎えるとー

主人公に犯罪まがいな嫌がらせをしていた経緯から犯罪者となり、身分はく奪の上、国外へ追放となる。

その後、主人公はめでたくジオルド王子と婚約となる。



主人公がジオルド王子を攻略失敗しバッドエンドを迎えるとー

嫉妬から主人公をナイフで襲おうとし、逆にジオルド王子に返りうちにあい命を落とす。

主人公を守るためとはいえ婚約者の公爵令嬢を手にかけてしまったジオルド王子は……

主人公と別れ国外へと旅立つ。


ちなみに、逆ハーエンドと義理の弟であるキースのエンドでもだいたい、死ぬか追放となる…



……あれ?おかしいなこれ?ハッピーで追放、バッドで死ぬって……

……カタリナ・クラエスにハッピーなエンドなくない!?バッドオンリーなんですけど!?




こうして思い出した限りの情報を紙に書き写すと私は事実確認に奔走した。

紙を片手に父母や執事さんから貴族情報を集めまくり、国の歴史や何やらを調べるために図書館へ通いつめた。


髪をふりみだし、目を血走らせている様子に今度こそ医者を呼ばれそうになったが、そんな暇はなかったので断固拒否させていただいた。



こうして数日駆けずり回った結果……私は完敗するしかなかった……


調べれば、調べるほど間違いない、確信ばかりがでてきた……


もう認めるしかなかった……


ここが乙女ゲーム『FORTUNE・LOVER』の世界であると……





★★★★★★★★★




私はついに今世のこの世界が前世で死ぬ直前までプレーしてた乙女ゲーム『FORTUNE・LOVER』の世界であると認めることになった。



しかし、認めたからといってカタリナ・クラエスの破滅エンドを受け入れたわけではない。

正直、国外に追放されるのも、もちろん殺されるなんて御免被る。

ただでさえ、前世も途中退場だったのだから、今世は寿命を全うして、老後には猫を膝に乗せてのんびりしたいのだ!



なので、破滅エンドを回避するために作戦会議を決行することとした。

議長カタリナ・クラエス。

議員カタリナ・クラエス。

書記カタリナ・クラエス。


……とまあ要するに一人でなんとか案を考えようとしている。

なにせ、相談できる相手はいない。

むしろ、ただでさえ医者に診てもらった方がいいと怪訝な目を向けてくる家族や召使さんたちに、「ここは、前世で私がやっていた乙女ゲームの世界なんです!」とか言い出したら今度こそ、病院に強制連行されかねない。




では、第1回カタリナ・クラエス破滅エンド回避のための作戦会議を開幕します。

『では、何かよい案のある方はいらっしゃいますか?』

『はい』

『はい。では、カタリナ・クラエスさんどうぞ』

『まず、ジオルド王子との婚約を破棄すればよいと思います。それさえなければ、ジオルド王子ルートでの破滅エンドはなくなります』

『その通りですけど……王子様の方から申し出てきた婚約で、こんなに家族も喜んでいる状況でそんなことできると思いますか』

『……確かに』

『では、学園に行かないというのはどうでしょう?そうすれば、主人公と接点がなくゲームに巻き込まれないのでは?』

『でも、魔法学園に行くのは魔力をもつ者の義務よ。カタリナはすでに五歳で魔力を発動してしまっているから、いくら娘に甘々なお父様に頼んでも無理だわ』

『くっ、あんな土のしょぼい魔力のせいで……』

『それよりも、そもそも主人公を苛めなきゃいいんじゃないですか』

『確かに、そのとおりよ!』

『……でも、ゲームじゃ、カタリナ・クラエスの取り巻きも一緒に苛めていたし……もし、苛めなくても首謀者にされるんじゃない』

『じゃなくても、婚約者はあの腹黒王子だし、主人公と結ばれるために、邪魔になった私を貶める可能性だってあるわよ』

『そんな、じゃあ一体どうしたら……』

『……殺されるなんていや……』

『……身一つで国外追放だってその先、生きていけるかわからないわ……』

『とりあえず。落ち着きましょう。私によい案があります』

『よい案とは??』

『まず、万が一、ジオルド王子に殺されそうになった時のために剣の腕を磨くのです。いざその時、剣で応戦できれば簡単にやられることはありませんわ!』

『おぉ、確かに!』

『それから、もし国外追放されたときに生きていくすべが必要ですわ。なので、ここに魔力を磨くことを提案します』

『魔力を磨いてどうするのです?そもそもカタリナはしょっぼい土魔法しか使えないのに……』

『他国には魔力を使えるものはほとんどいません。なので、魔力を磨きそれなりの魔法が使えれば国外に身一つで追放されたとしても、きっと職には困らないでしょう。それにゲームのカタリナは我儘ほうだいで、ジオルド王子を追いかけてばっかりで成績も悪かった!!そもそも魔力磨きなんてしてないのよ。だから、これから本気出せばきっとそれなりに魔法が使えるようになるはずよ!』

『おぉ、確かに!』

『その通りですね!』


『よし、では皆さん。今後は剣の腕と魔力を磨くということでよろしいですかな』

『『『 はい 』』』



こうして、第一回カタリナ・クラエス破滅エンド回避のための作戦会議は閉廷した。



もし、この会議に一人でもカタリナ・クラエスではない人物がいれば、この会議で出た結論がまったくの頓珍漢であり、なおかつ何の解決策にもなっていないことに突っ込みをいれられたかも知らないが……

残念ながらカタリナ・クラエスたちに突っ込みを入れる者はなかった……


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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めてのコメント失礼を致します。 アニメから入りましたが、この冒頭部分をWebで読むと また違った感覚になりますね……また今からしっかり読んでいこうと思います。
[良い点] 軽快で読みやすい。ハッピーな要素。
[一言] >私に良い案がある 上手くいかないフラグ回収乙!
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