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9、誰かのためを思ってプレゼントを選ぶと幸せな気持ちになるアレ

8/31 八月に滑り込みです。置き換えました。

 誤字脱字訂正あるかもしれません。ご了承ください。

 よろしくお願いします……!


 その日はすごく良い天気で、お出かけ日和だなあなんて呑気に思った。それを何となくお付きのメイド――リラに伝えてみれば、そうですね、なんて返事が返ってきた。そして、ちょうどいいことにその日の午後は空いていて、街へお買い物に出ることになった。



「待ってくださいませ、お嬢様」

 初めての街、という訳じゃないけれど、いつもと違うところがある。今日は家族と一緒ではない。これも初めてではないけれど、珍しいことである。

 いつも過保護なくらいに付き添うお父様に、私の装飾が好きなお母様やお兄様と街へ出れば、もちろん楽しいけれど、大忙しであったり、逆に時間が掛かりすぎたりする。

 故に、久々に自分のペースで回れるとはしゃいでしまうのも無理はない。家族の代わりにリラをはじめとする保護者は付くが。


 ただ家族と行くにしても、私とリラが行くにしても護衛は欠かせない。周りにちらほらと貴族らしき人もいくらかいるが、その人達も護衛が付いている。それもパッと見貴族とわかる人だけなので、私達のように平民のような軽い格好をして紛れた貴族も入れれば三割くらいにはなるかもしれない。城にも近く、治安の良い街ではあるが、油断は禁物である。私もそれを十分に分かっていた――はずだった。

 しかし街へ行けるとなった時、何を買おうと考えたら唐突に思い立ってしまったのだ。普段お世話になっているリラに何かサプライズでプレゼントをしたい、と。


 そのためには最低限、リラとは一度離れなくてはいけない。


 リラがお店でお会計を済ませている間に、こっそりとお店を出る。

 「待っていてください」と言われたことを思うと胸が痛むが、どうしてもリラへのプレゼントは自分で選びたいという意思のもと、悪いとは思いながらも私は獲物を探す旅へと出た。


 護衛の人は、ガチガチに固めて歩くと逆に狙われるかもしれないのと、単に通行の邪魔だろうという二つの理由から、いつも私達にもわからないその辺に潜んでいるらしい。きっとその人達が付いてきてくれているし、リラにも何か伝えてくれるだろう。

 連携を取れれば一番良いのだけど、ただのご令嬢である今の私には潜む護衛を見破ることは難しいし、まず辺りを見渡すだけの身長も足りない。

 まあ今は何かをリラに買うだけの時間を稼げればいい。



 人ごみの中を押し潰されそうになりながら、出てきたお店のある大通りをいくらか進んでみると左手に、大通りよりは少し狭くなった通りに屋台が沢山並んでいた。

 通りの入り口は下り坂になっており、人ごみは大通りと同じく凄いが割りと奥のお店まで見える。そうして見ていると、少し奥の方に良さそうなアクセサリショップを見つけたのでそこまで人ごみの中を進む。



「あ! これ、かわいい!」


 私の坂の上からの見立ては間違っていなかったようで、ピッタリのヘアアクセサリを見つけた。

 ラメのようなキラキラとしたものが埋め込まれた金色で細身のレースに、翡翠のような石が大小様々な大きさで散りばめられていた。その翠がリラの落ち着いた紅い髪に合いそうだと思った。

 聞けばこれは、ポニーテールやお団子などまとめた髪に使用するらしい。片側はピンになっていてまとめた箇所またはその近くに差し込み、あとはレース部分を好きに巻き付けるのだそうだ。


 リラはいつも綺麗にまとめたお団子をしている。リボンの色も地味な黒であることがほとんどだ。

 とっくに婚期も迎えたはずなのに、派手な格好もせず、浮いた話もなく、私に付いてくれている。

 感謝してもしきれないが、少しでも気持ちが伝われば良い。


 元より探すつもりで出てきていたのでお小遣いは持って来ている。普段買い物をするときはお父様が全て持ってくれるので、お小遣いは持ち歩かない。

 教育方針とか必要性がないとかで、月々はそう多くはないが、塵も積もれば何とやら。ありがたいことに積もるばかりだったお小遣いが今、日の目を見た。やっと役目を果たせてお金も嬉しいことだろう。


「はいどうぞ、お嬢さん。お買い上げありがとう。もう日も落ちる頃かな。気をつけて帰ってね」


 売り手であり作り手でもあるらしい綺麗なお姉さんに、優しい微笑みと一緒にお店の名前が入ったオシャレな白いシールの貼られた茶色い紙袋を持たされる。


 その紙袋を両手で抱えてから、私はリラに渡すときのことを考えて、幸せな気持ちで笑った。






 リラへのプレゼントが入った紙袋を抱え、ほくほくとした気持ちで、私は「さあ、帰ろう!」と元気よく踵を反した――――ところまでは良かったのだ。

 しかしすぐに、どう帰ろう、どうリラと合流しよう、という問題にぶち当たった。

 もちろん何も考えずに歩いてきたわけではない。

 なんと言っても私の計画では、もうリラと合流している予定だった。


 だってリラだ。お会計をして振り返った時そこにいるはずの私がいないとなれば、リラはショックからそこらのか弱い(・・・)メイドのように悲鳴をあげて倒れる――はずもなく、すぐに探してくれるだろう。か弱いメイドと違って叱りもするだろうが。

 まず、冷静に護衛を呼ぶ。それで私の行き先を護衛達が教えながら進む。子供の足で歩いた距離・速さだ、追い付かないはずがない。そう考えて、もうそろそろ来ると思ったのだが。


 まさか何かあったのか――と思ったが、こんな街中で護衛もいて、何かあればさすがに私も気づくくらいの騒ぎにはなるかもしれない。

 理由は分からないけど、この人ごみだし進みにくいのかもしれないと思うことにして、まさかリラの名を叫び呼ぶこともできないので、どこかで大人しく待つことにした。いつだったか迷子になったら動かないのが一番だって誰かが言ってた気がする。


 とは言っても、まさか店先で待つわけにもいかず、カフェに入るにも、先程の屋台で買ったリラへのプレゼントはやや良いお値段だったので、お小遣いはあまり残っておらず少々心許ない。どこかのお店の中で待つにも、今日は平民に紛れるような格好をしているので、子どもだけではいけばこの辺のお店では冷やかしと思われるかもしれない。

 やむを得ず屋台の通りのさらに脇道、ちょっと暗めにはなるが人が入っていく様子もないため、そこなら邪魔にならないだろうとその脇道の入り口で待つことにした。

 少し不用心かなとは思ったがきっと護衛はここも見ているだろう。

(この状況だけど出て来たりはしない、と……)

 なるほど、あくまで潜んでいるスタンスなのか。


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