第20話 崩壊と破壊者
今回のお話はいつもより長いです
アクセル視点:ダンジョン襲撃から十数日後――――――――白鷹の騎士団ギルドホーム『白円卓の間』
俺が所属しているギルド『白鷹の騎士団』はAO正式サービス開始初期に結成されたギルドだ。
所属人数は白鷹の騎士団みで100名を越えるのに加え、正式メンバーではない手伝いの人員や、傘下のギルドを併せれば200名は越えてしまう大所帯である。
その全てのギルドを含めた総称として『白鷹の同盟』と俺達は呼んでいる。(某ネット掲示板では数だけ同盟なんて揶揄されているが、あながち間違っていないので反論できないと俺は思っているがな)
そして、これだけの人数が所属しているだけあってこの同盟は一枚岩という訳にもいかない。
今俺の目の前で行なわれている下らない不毛な会議もその一例だ。
現在俺が居るギルドホームに用意された会議用の部屋には白い大きな円卓を囲むように、『白鷹の同盟』の重鎮たちが10数名座っている。だが、もっぱら発言しているのは3人のみで他の人員は空気と化してしまっている。
そして、その3人が発する言葉も決して穏やかとは言えない雰囲気なのだが――――
もう少し仲良くできんのかねこいつ等は……
「同盟『全部』で行くって正気か!?アルバートあんたが何考えているか知らんが俺は、この狩りは反対だ!」
黒いローブを着た白髪の針鼠のような髪型の男がこのギルドの主である白騎士に向かって噛み付くように吼える。
「何でだいザイン?あのダンジョンはほぼ未踏と言って良い状況だよ?これほど楽しめそうなダンジョン最近は無かったじゃないか?」
対して白鷹の騎士団の代表である白騎士は黒い魔術師――――――ザインを諭すように、優しく諭すように語り掛けている。
この白黒コンビの意見が食い違う事自体は珍しい事ではない。
むしろ白鷹ではもはや伝統扱いされている諍いだ。しかし、今回はいつもの諍いと少々趣旨が違う。
いつもならば、ザインが強行的な作戦提示し、アルバートが拒否するというのが、定例の構図なのだが……今回の会議はその真逆を行っているのだ。
事の起こりは定例ギルド会議でアルバートが、ある新発見ダンジョンの攻略を行ないたいと言い出した事からだった。
そのダンジョンは先日、初心者育成狩りの最中に発見されたダンジョンで、初心者とその保護者である中級者、上級者の混成PTで構成される部隊で挑んだのが、アルバート以外全滅という酷い結果だった。
ここまでなら別に会議で反対意見が出るほどではない、むしろ高難易度の戦闘を求めるザイン達にとっては反対する理由が無いはずなのだが――――アルバートは白鷹の同盟に所属する構成ギルド全てを投入したいと言い出したのだ。
構成ギルド全と言う事は白鷹の傘下にある初心者支援ギルドや、生産系ギルドも含まれる。
新狩場に初心者支援ギルドのメンバーを動員するのは、まぁ良くあることだ。
AOはそのシステム上どうしても強いモンスターしか狩場に残らない事が多い。
故に古い狩場で初心者が犠牲になることも多く、それがトラウマになり少なからずゲームを辞めていく者が居るという事実がある。
そんな事情から初心者プレイヤーに適切な狩場で保護者といえる古参プレイヤーを一緒に組ませて狩りをさせるのが初心者支援ギルドの役目だ。
前回、あのダンジョンに潜ったのも初心者育成を目的としているギルド狩りの一貫であった。
そして、そのギルド狩りの結果は……アルバート以外全滅という酷い有様だった。
そんなダンジョンにまたしても、初心者を連れて行くには難易度が高すぎるとザインは主張し今回の大規模遠征狩りに反対しているのだ。
反対理由は他にもある。
それは、戦闘に不向きな生産系ギルドまでアルバートは動員しようとしているのだ。
彼等は、ギルド狩りで得た素材を加工し、AOをプレイする上で役に立つをアイテムや装備を作成したりしている。
またそれらのアイテムを市場に流し同盟活動資金に替える役割も担っていて、そこで調達した資金管理も行なう。
云わば同盟の財布担当という訳だ。
狩場の野営地構築等は元々彼らが担当している仕事であったのだが、アルバートは彼ら迄狩場に出そうとしているのだ。名目としては前線野営地の構築を行なうとして―――
アルバートとはこのゲームをやる前からの長い付き合いだが、今回ばかりは何を考えているのか俺にも皆目見当もつかない。
この様な無理な遠征を提案している理由も不明だ。
「この初心者離れが激しい時機に、そこまでしてあんな所攻略しても大して得る物が無いと言っているんだ!」
ザインも俺と同じことを思ったのかギルドマスターであるアルバートに食って掛かる。
白鷹の同盟には3つの派閥が存在している。
白鷹の騎士団ギルドマスター『白騎士』アルバートと彼を支持する同盟内保守派層の派閥であり、構成員の大多数は『白鷹の騎士団』のメンバーだ。
もう一つは今アルバートと対立している戦闘向けギルド『黒狩り』のマスターであるザインが率いる戦闘至上主義者達で構成される過激派の派閥。構成員はギルド黒狩りを母体としているが、白鷹の同盟に参加する他ギルドの高レベルプレイヤー達も
一部含まれる。
そして最後に……
「はははっザインはん、得る物なら有るやろ。あそこには結構な数の高レベルモンスターが確認されてます。それを全滅させればアンタが大好きな名声が得られるし、アンタ達武闘派が大好きな大規模な戦闘も間違いなく出来るやろ?それにアレが居るのも確認されてるんやで?」
今、胡散臭いエセ関西弁で語尾に関西弁特有のイントネーションを混ぜながらザインを嘲るように喋り出した糸目の小人が、白鷹の同盟財務担当のカネミツ。こいつこそが白鷹の3大派閥の最後商人派閥の代表だ。
こいつらはその時の状況次第でどちらの派閥にも付く。
金になると思えば主義主張は直ぐに覆す実利至上主義者が集まって作られたの派閥で、代表のカネツミ自身は『白鷹の騎士団』所属であるが、この派閥の主な構成員達は各ギルドの資金管理を行っている者達とアイテム作成職人ギルド『鉋』のメンバーである。
所属人数こそ少ないが、こいつらの発言権は大きい。
同盟運営資金をこいつらが握っているというのも有るが、ギルド運営上面倒事を彼らに押し付けている部分があり誰も彼もが、こいつらに頭が上がらないのだ。
正直気に入らない連中なのだが、この同盟に所属していてこいつ等に世話になっていない奴は居ない――――もちろん俺も生産系の連中には世話になっている。
まぁそんな訳で、拮抗している保守派と過激派に、この商人派閥がどちらかに付くかで同盟の方針が決まってしまうので正直扱い難い連中なのだ。
ちなみに、俺ことアクセルは派閥には無所属だ。正直派閥だの権力だの、ゲーム内でまで求めるものでは無いと思っている。
ゲームなんて物は皆でワイワイと馬鹿をやって楽しむか、ストイックに自分の実力を高めていけば良い遊びだ。
そこに現実世界のように醜い権力闘争を持ち込むべきでは無いと思う――――のだが、不本意ながら俺は白鷹の騎士団が結成された当初からギルドに在籍しているという理由だけで、派閥無所属層の顔役の様な事をさせられている。
『運営なんて面倒事に関わりたくない』『そういうのは現実だけで十分』『適当にAOをやれれば良い』『意見は有るが態々主張して目立ちたくない』と他にも色々あるが、そんな考え持ちあえて派閥に所属しない者達、それが派閥無所属者達だ。
この同盟内のパワーバランスに関わりの無い、むしろ関わりたくないこの無所属者達なのだが、このメンバー全てを合わせれば3大派閥を越す人数が此処に含まれる。
つまり無所属層を取り込めれば、ほぼその派閥の意見は通ると見て良い。
そうなると無所属層の取り込みにどの派閥も動き出す訳なのだが……そんな主体性の無い連中に代表者を勤めれる者など居るはずも無く、白鷹古参の俺が無所属連中の顔役の様な事をやらされる事になった訳だ。
そして俺は派閥無所属ギルドメンバー達の代表としてこの不毛な運営会議に参加しているのだ…… まぁ、俺としては発言する事も特に無いので欠席しようと思ったのだが、形だけでも参加しろとのギルドマスター殿のお達しなので参加しているだけなのである。
「そうだよザイン。あのダンジョンには君がずっと追っている『黒狼』の存在が確認されているんだ。なんで反対するんだい?」
今アルバートがその存在を示した黒狼とは、βテスト時代からAOプレイヤーを恐怖させているデミコボルトで、呪いの掛かった短剣2本と投げナイフを駆使するモンスターだ。
その強さは一般のモンスターとは比べ物にならない物で、数多くのAOプレイヤーを暗殺してきたMVPモンスターなのだがここ数ヶ月奴は狩場で目撃される事が無かったので、人知れず誰かに狩られたのではないかと噂されていた。だが、最近開催された運営主催の大規模レイドでその生存が確認され、そのレイドの後は今俺たちの議題となっているダンジョンに潜伏しているという事が確認されている。
ちなみに、MVPモンスターとは統括AIがある程度戦果を上げているモンスターに設定している称号の様な物でコレを討伐したプレイヤーには特別な報酬が約束されている。
まぁ、云わば賞金首みたいな連中だな。
「あぁ、だからこそ俺は『ギルド全体』で行くのは気にいらないって言ってるんだよ」
「え~ザインはんそんな事言ってるとま~た返り討ちにあいまっせ」
かれこれザインは初心者時代から通算すると黒狼に5回以上は殺されている。
まぁだからこそ自分の手で、あのバケモノを狩りたいのは分るんだがな……
「アレは数で押しても被害が大きくなるだけだ。初心者共なんか連れて行っても格好の的になる。無駄に被害を出すだけだって言ってんだよ!」
「初心者さん達はそれこそ、掃いて捨て居るほど居るんや。そもそも初心者さんはデスペナルティも無いし、あの人達にはバイト代も払うんやから気にすることないやろ?」
「カネ!お前がそんなだから……白鷹は脱退者が多いんだよ!」
カネミツ自信は基本狩場にはでないが、初心者支援を名目にして初心者たちにゲーム内通貨や作成した特製装備を渡して、レベルに合っていない無理な狩りをさせて素材集めをさせているのだ。
カネミツが初心者達に指定する狩場は中級者が行くような狩場であり、多くの初心者が犠牲になっている。
この行為が某ネット掲示板で白鷹が叩かれ始めた理由となったのは白鷹に所属する全員が知っている事だ。
そして、その初心者達を駒のように扱う行為で折角入った初心者達が脱退していく事も多い。
「またまた~実は討伐報酬を独り占めしたいだけどちゃいますか?」
「フンッ!お前と一緒にするんじゃねぇよ。俺達は純粋にAOを楽しみたいだけだ。お前みたいに損得だけで動いている訳じゃない」
「そうでっか?ならなんで反対するんでっか?」
「さっきも言っただろうが!同盟全体で行くなんて馬鹿げた事出来るか!!それに黒狼狩りだって運営主催レイドを放棄してまでやることでじゃねぇよ!」
やはりそれか……まぁ皆分っていたと思うけどな。
これこそが『黒狩り』が多く所属しているザインの派閥が反対している真の理由――――アルバートは今回提案したギルド狩りの日取りを、運営が主催するレイド開催日に被せてきたのだ。
対人とレイド攻略を至上とするザインの派閥のプレイヤー達にとっては今回のギルド狩りは承服しかねるものなのである。
「あんなレイドこそ参加する意味ありまへん。前回の大規模レイドの事忘れたんでっか?大赤字でっせ!」
「知るか!大体そういう時の為に俺達はギルドに金を入れているんだろうが!」
これには俺もザインと同じ意見だ。
そもそも、こいつが扱っている『金』はギルドメンバーが狩りの収益をギルドに寄付して集まった物だ。
ならばギルドメンバーがゲームを楽しむ為なら出費が多くても良いと思うのだが……
しかしながら今のザインの言葉が気に入らなかったのか、カネミツが肩を怒らせ糸目だった眼をキッと見開き強い声で捲し立てる。
「金は幾らあっても困らない!それに出費は少ない方が良いに決まってますやん!無駄な出費が出るのが分っているのに参加する理由はありまへん!それにこのギルドホームの維持費だって膨大なもんなんやで?誰かさん達が無計画に死にまくるから今月の維持費を払ったらスッカラカンや!」
ふむ、なるほどな。前回のレイド以降、白鷹の財政が厳しくなったという噂は聞いていたが、どうやら普段なにもかも小馬鹿にしているカネミツが感情を露にして激昂させる程度には財政は逼迫しているらしいな。
運営主催レイドでは、ログイン不可能時間のデスペナルティは一定のゲーム内通貨を支払えば免除され、即座に復活できるという特殊ルールがある。
流石に装備ロストは免れないが、ゾンビアタック(死に戻り当たり前の戦法)が可能なのだ。
だが、その結果、復活経費で作られた大赤字だけがギルドに残った。
前回の運営主催レイド『魔姫リリア討伐』では白鷹の同盟の参加人数は150名も居たのだが、全員がゾンビアタックするために通常装備で挑んでいた。
だがその結果、通常装備使用で高レベルメンバー達が本来の戦闘発揮で無きなかったのを主な理由として討伐目的のモンスターには逃げられ。目立った戦果も上げられなかったのだ。
そしてギルドメンバー達の復活費用で作られた大赤字だけが残り、カネミツを激昂させている理由となった。
そもそもにザインとカネミツはそこそこに仲の良い方だった。
元々はザインが無理な提案するとカネミツがザインを諌めるかアルバートを説得して、その提案を無理のないところに着陸させるという橋渡し役を担っていた。そうして白鷹の騎士団は旨く回っていた。
しかしながら、あのレイド以降その歯車は狂ってしまった。
カネミツは保守的になり、以前より更に初心者達に無理な狩りをやらせるようになった。
ザインはその自体を憂慮し事ある毎にカネミツと言い争いをするようになり、アルバートは……長い付き合いの俺でも何を考えているのか分らない様になってしまった。
「チッ!話にならんな。アルバート!お前は一体なんの目的でレイドを放棄するんだ?そんなダンジョン、別の日に攻略しちまえば良いだろう」
カネミツの激昂する姿を見てザインは奴を説得するのを諦めたのかアルバートへ質問の矛先を変えた。
「あのダンジョンに眼をつけているのは私たちだけじゃないからね。早めに行動を起こしたいんだよ。つまり、次の連休を狙うしかないって訳さ」
「まぁ、確かに手の付いてないダンジョンってのは今時珍しいがな……なんであんたはそんなにそのダンジョンに拘っているんだ?」
「うーん、まぁ前回のレイド失敗は私の判断ミスが大きかったからね。出来れば早めに損失を取り戻したいと思ってるんだ。あのダンジョンにはそれが出来る物があるんだ」
なるほどな、アルバートはあのレイドの赤字を自分の責任だと感じている訳か……ならば今回の強行的な狩りの提案も頷けるが……強行的過ぎるなこいつにしては珍しい。
あのレイドは中級難易度のレイドでマップは広大であったが、決して難易度の高いレイドでは無い――――というのが運営の発表であった。
そして、その情報を信じたアルバートは俺たちに通常装備で、トライアンドエラーの試行回数増やすゾンビアタックを命じた。
何故普段ゾンビアタックを毛嫌いしてたアルバートがこんな命令を下しのたかは謎だが、その判断は裏目となった……そのレイドの実体はMVPモンスターが複数体配置されているという、稀な上級難易度レイドであったのだ。
最初は、運営発表通り中級の難易度レイドだった、だがあのレイドを進めてていく上で難易度を激化させていった。
後半、モンスターが篭城戦を行ない始めたところからはもう、運営から支給される通常装備で挑めば即死するような状況ばかりで、あのレイドが運営発表通りの難易度と違う事に気づいた時には後の祭りだった訳だ。
しかも新たにMVP設定されるモンスターまで登場したのだ。そんな事いかに洞察力に優れた者でも予測はできない。
ゾンビアタックは別として、運営発表と違う難易度故に被った損失をアルバートが責任を感じる事は無いと思うんだがな……
「取り戻す?どうする気だ?」
「あのダンジョンは、例のレイドの討伐モンスター『魔姫』が逃げ込んでいる。だよね?アクセル」
アルバート困ったような表情で突然話を聞くだけの鉄のカカシとなっていた俺に話しかけてきた。
「ん?あぁ、アナライズで確認したから間違い無い。だが、イベントが終った後にあのモンスターを倒しても討伐報酬は貰えるのか?」
「それは問題ないよ。運営に問い合わせて報酬が支払われるのは確認したさ、あの報酬アイテムをオークションに出せば前回の赤字を取り戻すのも可能だろう?」
その言葉にザインが眉を潜め、アルバートへ更に疑問を投げかける。
「あんたの考えは分った。だが、なんでギルド狩りの日とレイドの日を被せる?別の日に改めて行けば良いじゃねぇか」
「そんなの決まってますやん!裏を書いてうちらだけであのダンジョン攻略した方が儲かるってもんでっしゃろ」
「なるほど、コバンザメ共をレイドに引き付けて俺たちだけで確実に討伐モンスター狩るって訳か?」
ザインが、コバンザメと呼んでいるのは高レベルのギルド無所属プレイヤー達だ。
俺たち白鷹の動きは基本的に奴等にマークされていて、俺たちが動くとコバンザメの様にピッタリと追尾してくる。
奴等の目的は一人では攻略できないダンジョンやレイドを攻略する為に、俺達のような大規模ギルドにへばりつき報酬モンスターやレア素材持ちのモンスターだけ掻っ攫って行くという物で、ある程度大きなギルドには奴等を妨害する専属の担当が居るくらいだ。
かく言う、白鷹にも対人スキルを専門に取得しているコバンザメ対策班がいるのだが……
「まぁ、そういうことさ。今回ばかりは横合いから討伐対象を攫われる訳にはいかないからね」
「いつもの対策班だけじゃ駄目なのか?レイドが終ってからフルメンバーの対策班を動かせば良いだけだろうが」
「彼等は全員、メインキャラの復帰待ちだよ」
そのアルバートの言葉を聞いた瞬間会議に参加しているが、ほとんど空気と化していた同盟重鎮達がザワザワとざわめき始めたのだ。
「なんだそりゃ!?あいつら全員レベル50は越えている連中だぞ。一体何があった?」
ザインが疑問を抱くのも無理は無い話でレベル50からは上級者と呼ばれるようにキャラクターの強さは格段と上がる。
はっきり言って通常のモンスターには負ける事がありえない程の強さになってしまうのだ。
その理由とは統括AIから与えられる固有スキルと固有装備のおかげなのだが……デスペナルティも非常に大きな物になりレベル50のキャラクターが一度死ぬとそのキャラクターは1ヶ月はログイン出来なくなる。
しかも、レベル50になるまでの必要経験値も非常に高く、レベル50を越えているプレイヤーは全体で1割程度しか存在しないと運営が発表している。
「彼ら、運悪くあのダンジョンに潜った時に入り口で『100人切り』に遭遇してしまってね。背後から襲われて抵抗も出来ずに全滅してしまった様なんだ」
『100人切り』はこの前のレイドで新たにMVP設定されたモンスターで、文字通りレイドの最中にそいつ単騎に殺されたプレイヤー数が100人を越えた為に統括AIがあのモンスターに与えた仇名だ。
そしてその100人切りは、この前あのダンジョンで俺を真っ二つにして殺したモンスターだ。
背後から切られたので俺は姿こそ見なかったのだが、その姿はメイド服を着たドラゴニュートでとんでもない怪力のバケモノだったとアレックスが言っていた。
後日アルバートから聞いた話だと、入り口で見張りをしていた対策班も俺と同じ様に為す術もなく全滅させられていたらしい。
「『黒狼』に『100人切り』に『魔姫』だ?そのダンジョンどうなってやがる……」
それだけではない、あのダンジョンにはあの正体不明のゴブリンも居る。
あいつは危険だ。あんなスキル見たこともなかった。
他のPTの連中は『ゴブリン程度に負かされたのか』と鼻で笑っていたが、俺はあのダンジョンで一番危険なのは正体不明のあのゴブリンの可能性があると思っている。
「うん、はっきり言って尋常では無い難易度だよ。私が同盟全体を動かそうとしたのも分って貰えたかい?」
「おうよ、大体の理由は分った。正直言ってかなり興味は湧いたぜ。そんな面白そうなダンジョンもう無いかもしれねぇな」
「あぁ、君ならそう言ってくれると思ったよ。じゃあ早速スケジュールの詳細を――」
「だがな、アルバート。レイド参加だけは譲れねぇよ。レイドに参加する事は俺たちが結束できている理由であり、活動する名目だ。それを反故にしたら黒狩り崩壊する可能性がある。それだけは黒狩りのギルドマスターとして譲れん。黒狩りは単独ででもレイドには参加するぜ」
まぁ、この議題が出た時から俺はこうなると思ってたが、どうなるかねこりゃ……
ギルド『黒狩り』は白鷹の同盟で唯一、白鷹の騎士団と同列に発言が許されているギルドなのだ。
しかも、所属人数は30人と白鷹の騎士団の半分以下の人数ではあるが、同盟内での発言権は非常に強い。
その発言力が維持される理由は所属メンバーの戦闘能力の高さにある。
黒狩りは基本的にレベル40以上のプレイヤーしか加入する事が出来ない。
しかも、その一人一人が廃人プレイヤーと称される者達ばかりである。
ギルドの構成員は強さを求めて他所のギルドから移籍してきた者ばかりで、ギルドとしては纏まりが薄いのが特徴だ。
そして、そんな彼らを一つの組織たらしめているのがレイドだ。
特に中~高難易度のレイドでは個人で強くてもあのコバンザメの連中の様な活動くらいしかできないのに加え、自分だけが強くても周りのPTメンバーやギルド構成員が弱ければ直ぐにPTが決壊してしまう。
そういった経験してきた者達が、安定してレイドをこなせるメンバーを求めて移籍したのが黒狩りというギルドだ。
レイドこそが、黒狩りの存在理由と言って良いのだ。ザインもこれだけは譲れないのであろう。
「どうしても駄目かいザイン?」
「おうアルバートあんたには悪いが同盟を抜ける事になってもこれだけは譲れないな」
ザインの拒絶にアルバート一度大きくため息を付くと、何か諦めがついたらしい。
「そうか……分ったよ。私も、もう少し余裕を持った日程で相談するべきだった。今回だけ君達の単独行動を許そう、好きにすると良い」
「悪いな、レイドが終って時間に余裕が有りそうなら、そっちにも顔出すぜ」
そう言ってザインは先ほどまでの険相を崩しすっきりした顔で席を立ち上あがる。
「もう行くのかい?」
「狩りを辞退するんだ、俺がここに居る理由はねぇよ」
「そうか、レイドの攻略成功を祈っているよ。」
「おうよ。まぁ、そっちも頑張れや」
それを別れの言葉としてザインは白円卓の間を出て行った。
そして、ザインが出て行ったのを確認してからカネミツが悪態を付き始めた。
「まったく勝手なお人やなぁ。ギルマスどうするんでっか?あの人ら馬鹿ですけど戦力としては欠かせないんでっしゃろ?」
「あぁまぁ不本意ながら少し当てが有ってね。そっちを使う事にするよ」
「そうでっか、まぁ予定通り動けるならワイとしては問題ありまへん」
「うん、もう予定は崩せない……では、他に反対が無ければ詳細なスケジュールと人員の編成を決めてしまおうか――」
ザインが居なくなったその場にアルバートとカネミツの意見に異を唱えるものなど居るはずもなく。
アルバートはギルド狩りの詳細な予定を語りだし、それを重鎮達が承認するという形であのダンジョンへのギルド狩りは決定となった。
二日後――――――――ダンジョン近郊野営地
ギルドホームから直結されたワープポータルに乗ると、そこは森の中にポッカリと広がる広間に作られた野営地に繋がっていた。
ギルド狩りの決行は明日だというのに、思いの他この野営地に来ている連中は多い。30人くらいはパッと見で確認できる。
テントの中に居るであろう人員を含めればこの地には50人以上のAOプレイヤーが集結しているのではないだろうか?
まぁ、無駄に連中が来ている理由はなんとなく予想できる。
普段の狩りでこの様な大規模な野営地が構築される事は少ないので、皆本格的に作戦が始まる前に見学をしにきているのであろう。
「あ、アクセル!」
突然背後から、声変わり前の少年の様な声色に名前を呼ばれた。
そしてその声がした背後を振り向くと、いつもPTを組んでいる青い帽子の魔術師が居た。
「ああ、アレックスか。お前も物見遊山か?」
「アクセルと一緒にしないでよ。僕はギルマス命令で他のギルドへの伝令役さ」
アレックスはアルバートに心酔していると言っても良いプレイヤーで、こいつが初心者時代にアルバートから頼まれて固定PTを組んで俺が面倒をみていた奴だ。
レベルは35と白鷹の騎士団平均レベルよりは若干上なくらいでそう目立った強さを持っている訳ではない。
だが、ゲーム内知識量は結構なモノで、モンスターの得意スキルからプレイヤーギルドの細かい情報まで細かく網羅している。
そこを評価されたのかアルバートはこいつの事を重宝して、色々と面倒な雑用を押し付けている。
「ほう、相変わらずギルマスに良い様に使われている様だな」
「うん、こんな重要な仕事を僕なんかにやらせてくれて本当にありがたいよ」
アルバートに心酔しすぎてもはや嫌味も嫌味とは受け取れないらしい。
穏健派の派閥の奴等にはあいつのカリスマ性?に惹かれて狂信者の様になってしまっている連中が居るが、こいつもいつかそうなってしまわないか心配だ……いや、もう成りかけているのか?まぁ俺が何を言った所でこいつは聞きはしないでだろうな。
「しかし、何故伝令なんてやっている?まさか前回のメッセージ障害がまた起こっているのか?」
「いや、どうもこれ仕様らしいよ。普段からこの周辺で狩りしている人達には周知の事実だったみたい」
前回俺達がこの森に訪れた時、プレイヤー間の連絡手段として使われている簡易メッセージ機能が使えなかった。前回の狩りの時はこれには大変苦労させられた。
特にあのダンジョン内でこの機能が使えないのは致命的であった。
背後からの100人切りの襲撃を事前に知ることが出来ればあの様な甚大な被害を出すことも無かったと俺は思っている。
しかし、俺は前回の時はサーバー側の不具合か何かだと勝手に納得していたのだがアレックスの話だとどうやらこれが仕様らしい……やはりこのフィールドはあのダンジョン含めて高難易度に設定されているのかもしれんな。
「フンッ、不便極まりないな。こうテントが多いとギルマスが何処にいるか分らん」
「あぁ、ギルマスなら多分本営のテントに居るんじゃないかな?ほら、そこの奥にある一番大きなテント」
アレックスが指を刺して、野営地の外周に有る他のテントとは離れた所にポツンと設営された一回り大きな青いテントを示してくれた。
どうやらあそこにアルバートが居るらしい。
「ん、アレか……では行って見るとしよう」
「はいはい、じゃあまた明日ねアクセル」
「あぁ、また明日な」
***
「おや?そこに居るのは『頑健』じゃない?久しぶりね」
アレックスに別れを告げてアルバートの所に向かう俺に、再び背後から声が掛かった。
今度は甘ったるい女の声だ。しかも、俺の事を固有スキル名で呼んで来た。
俺の事をスキル名で呼ぶ奴は少ない。俺の固有スキル『頑健』は地味すぎて知る者が少ないからだ。
また、スキルを知る者でもギルドやその関係者ならば俺に声を掛ける場合は『アクセル』と普通に名前で呼ぶ。
つまり、今俺に声をかけてきた女は外部の人間で俺の固有スキルを知っている奴だ。
嫌な予感がする。
名前で呼ばれなかったので気づかなかった振りをして無視を決め込んでも良いのだが、俺が思った通りの人物ならば無視しても後々面倒な事になる……億劫だが対応するしかあるまい。
仕方なく声を掛けられた方に振り返った俺は予想通りの人物が立っていた事に思わず頭を抱えたくなり、この女に掛ける言葉が咄嗟に思いつかなかった。
「…………」
「あら?スキル名呼びはお気に召さなかったかしら?ならお得意のロケットパンチから取って『鉄拳』とでも呼びましょうか?」
「いや……普通にアクセルで良い……」
「んー?君は自分のスキルが嫌いなの?私は良いスキルだと思うけどね。『頑健』」
固有スキルはそのプレイヤーのプレイスタイルを示すスキルだ。
俺の『頑健』の場合は肉を切らせて骨を絶つという戦法取り続けた結果、統括AIから与えれたスキルだ(まぁ肉を切らすといっても金属製ボディなんでそんなダメージは無いんだがな)
ちなみにこのスキルは常時発動しているパッシブスキルで普段はHPが2倍になり防御力が上がるだけなのだが、その本領は死んだ時にこそ発動するスキルなのだ。
それはすなわちデスペナルティであるログイン不可能時間が10分の1になるという破格のパッシブスキルなのだが……地味なのが偶に傷だ。
それなりに腕はあるが統括AIより称号が与えられていないプレイヤーに対してこの固有スキル名を一部の者達は通り名として要いる。
しかしながら、俺の地味なこのスキルの事を知る者はほとんど居ないので、俺の事を『頑健』の名で呼ぶのはこの女の様に僅かな昔馴染みくらいだ。
「何故お前が此処に居る破壊者!お前たちとの同盟は半年も前に破棄している筈だ」
「あー御免昔も言ったけど、私はその呼び名は好きじゃないのよ。可愛くキサラちゃんと呼んで頂戴」
この銀縁眼鏡の青いショーカットの女の名はキサラ、統括AIより『破壊者』の称号を与えられている高レベルプレイヤーだ。
かつて、この女が率いるギルドと俺達はレイド攻略の同盟を組んでいた。だが、この女のギルド員は皆何処か頭のネジがぶっ飛んでいた奴が多かったので、あの穏健派であるアルバートすら同盟破棄の選択をした。
「質問に答えろ!なんでお前が此処にいる」
「んーそうね、じゃあ昔の固定PTメンバーが陣中見舞いに来たっていうのはどう?」
「陣中見舞いだと?お前の場合『陣中破壊』だろうが!」
この女の周りで何もかもが、破壊される。
それは物理的なものだけに空き足らず、確率であったり、信頼関係であったり、抽象的なものまで全てが想定通りにいかず破壊されていく。
不幸の象徴の様な存在だ、こいつが陣中見舞いなんて事してしまったら、その陣その物が有り得ぬ事が起こって破壊されてしまうだろう。
「まったく、君は昔から私に冷たいのね。私はこんなにも君の事を気に入っているのに」
細い貧相な体で精一杯しなを作って熱視線を送って来るが、アレは狂気の視線だ。あんなもの向けられたこっちはたまったものではない。
「それは俺が、お前の災厄に巻き込まれても直ぐ似に復帰できるからだろうが!こっちとしては良い迷惑だ」
「やれやれ酷く嫌われてしまったわね……まぁ本当の事を言うとね『白騎士』に助っ人として呼ばれたのよ」
「助っ人だと……?」
「そう、ザイン君の所は明日の狩りは欠席なんでしょ?だから、この連休の間限定で君らの助っ人をしてくれって頼まれちゃってね。私も昔馴染みは大事にしたいんで渋々この依頼受けちゃったのよねぇ」
確かにこの女を含め、あのギルドには人外魔境な戦闘能力をもつ連中が多い。
黒狩りが抜けた穴を十分埋められるのは間違いない……だが、それ以上に味方の被害が大きくなるのは間違いない。
こんな連中を雇うのは直ぐにでも辞めさせなければ!
「悪いな、『破壊者』俺は急用が出来た。お前と無駄話をしている暇は無くなった」
「あらそう?残念ね…………じゃあ一つだけ私の質問に答えてくれ」
その瞬間、破壊者キサラの雰囲気が一変した。
破壊者は今までの甘ったるい声と口調を変えて、冷たい底冷えする様な声と固い男の様な口調に言葉を変化させた。
これがこの女の本性だ。
普段は相手を油断させる為のなのかあの様なキャラを作っているが、一旦攻撃すると決めた相手にこの様な本性をさらけ出す。
そして、この破壊者は俺の返答を待たず俺にとある質問を投げかけてくる。
「なぁアクセル君、この野営地とポータルっていつ作ったんだ?」
「それは……俺も知らん」
アルバートはカネミツに命じて此処をあのダンジョンを攻める為に設営した……のだが、この迅速な野営地設営には疑問が残る。
おおよそ100人以上の集団の待機場所となる野営地は大小様々なテントが設営され、生産系ギルドの連中なんかは露店までポータル周辺に出している。
いつもならば野営地を作るには事前の下準備と物資の輸送時間を併せて1週間は掛かる。
しかも、ギルドホームからワープポータルを繋げる場合は野営地を設営した後2週間が経過して野営地が安全であると保障を立てねば運営はポータル設営の申請受け入れない。
それに加え、野営地の安全性が認められ運営にポータル設置が受理されたとしても肝心のポータル設置は受理されてから1週間後となるのが通例だ。
だがしかし、この野営地設営が決定された会議からまだ二日しか経っていないのにこの野営地は狩場の前線基地としての機能を全て備えている。
時系列的にこの野営地は色々とおかしいのだ。
その事を俺もアルバートに問いかけようと思い、あいつの元に向かっていたのだが……
「君でも知らないのか?そんな事はないだろう?君は彼の副官だろ?何か知っているんじゃないのか?」
破壊者は問い詰めるように俺に質問続けるが知らない物は知らない、逆に俺が知りたいくらいだ。
「それは、昔の話だ。俺は今は唯のしがない一般ギルドメンバーだ」
「そうなのか?嘘じゃないだろうな?あぁいや待てよ……君は昔からギルド運営を嫌がっていた……わね。良いわ、君のその話は信じてあげます」
どうやら、俺への攻撃は止めるつもりなのかキサラは、また聞いてるとムカムカしてくる甘ったるい声と口調に戻した。
「別にお前なんかに信じてもらっても嬉かないが、質問には答えてやったんだ。俺の質問にも答えろ」
「ん?何々?アクセル君が私に質問なんて珍しいね。あ、もしかしてスリーサイズ?それは流石に秘密よ!」
「お前の貧相な体に興味なんてない。俺が聞きたいのはお前が何故そんな疑問を持ったかだ」
「あら、そんな事分り切った事じゃない。私がずっと君達の動きを監視をしていたからよ?」
「は?監視していた?俺たちをか?」
「正確には君の所の若い子……えーとっ確かラルフ君とアレックス君?だったかしら、彼らを監視していたのよ」
「あいつらを監視?なんの意味があってそんな事をしていた」
ザインやアルバートを監視して、その動きを事前察知して狩場の利益を掠めようとするならばまだ分るが、この女が下っ端と言っても良い、あの二人を監視していた事が驚きだ。
この女は基本的に自分の『楽しみ』以外で無駄な事はしない。そしてあの二人は、この女の『楽しみ』の対象となるには程遠いだろう。
「んー、その調子だと本当に何も知らない見たいね。ラルフ君が最近やっていた商売についても知らないの?」
「商売?何のことだ?」
「まったく……君はもう少し他人に興味を持った方が良いわね。ラルフ君は、明日白鷹が攻めるダンジョンの地図をずっと他のギルドのプレイヤーに売り捌いていたわ」
「チッ……馬鹿が……」
あのダンジョンについての情報は撤退してきたアルバートが戻って直ぐに戒厳令を敷いた。
ギルマスが態々秘匿を命じた情報を売り捌いていたのならラルフはどの様な理由があったにせよ白鷹を追放されるであろう。
「で、アレックス君はそれの火消しね。あのダンジョンについての悪評を良い噂を流してもみ消そうとしていたのよ。まぁ、こっちは旨くいかなかったみたいだけどね」
「ん?ダンジョンの情報のもみ消しじゃなく、悪評のもみ消しなのか?」
それはおかしい、アレックスの性格からしてラルフの商売に加担するとは思えん。
逆にアルバートに地図の事を報告してラルフをとっくに追放させている筈だ……
「そうよ。これの意味することが分るかしら?」
「全てはアルバートの命令……か?」
「うん、私もそう思う。でね、私気になっちゃった訳よ。あの清廉潔白な白騎士殿が何を思って他のギルドのプレイヤーを無駄死にさせているのかって」
「まさか、他所の連中を生贄にして、あのダンジョンの危険度の調査でもさせていたとでも言いたいのかお前は?」
「んー当たらずとも遠からずかな?でもそういう仕事ってあの守銭奴の仕事でしょ?白騎士が態々子飼いの子を使ってまでやらせる事じゃないよね?」
確かに、キサラが言う事は一理ある。本来ならば、その手の事はアルバートは好まない。
勝手にカネミツ辺りが指示を出して自分の部下にやらせることはあるかもしれないが、もしアルバートがあのダンジョンの調査を行なおうとするならば自分が向かうか俺やザインに調査を命じていただろう。
「では、何が目的でそんな事をさせていたのだ」
「さぁ?それが分らないのよ。そんな事をして白騎士が得る物なんて何もないし、彼がそんな事をするとは思えないのよね……あ、もしかして彼ぶっ壊れちゃったとかない?」
「壊れたってお前じゃあるまいし……」
壊れたか……壊れたとまでは言えないが、思えばあの『魔姫討伐』レイドの直前からアルバートの様子は何かがおかしくなった。
今まで、あいつが抱いていた方針を崩してレイド攻略にゾンビアタックという方法を選択をしたのだ。それは今までのあいつからは考えられない選択だった。
しかも、今回のダンジョン攻略は初心者にゾンビアタックをさせるつもりらしい。
それは、あいつが信条としていた「PTメンバーやギルド員達を極力死なせない」という方針から完璧に逸脱するものだ。
それにあのダンジョン攻めるという選択はアルバートの従来のプレイスタイルからもかけ離れた物だ。
あいつは今まで、絶対に博打の様な狩りを行なわなかった。
それは一緒に組むPTメンバーにも遵守させていた事だった。
なのに今回はMVPが3体も存在が確認されているあのダンジョンへこんな危険分子を呼び込んで迄攻め入ろうとしている。
アルバートの従来のプレイスタイルは、キサラも十分承知している。
そのスタイル故に不確定要素の塊であるキサラ達はアルバートに忌避されていたのだ。
今のアルバートの変貌振りに一番違和感を感じているのは案外この女なのかもしれんな。
そして、ある意味で一番のアルバートの理解者であるこの女は疑いの視線を俺に向けてくる。
「本当にぃ?死なずの白騎士もついにストレスで頭がぶっ壊れちゃったとかはないの?」
アルバートはその安定した狩りと、最大の効率を両立させたプレイスタイル常に維持してきたのだ。
故にあいつは一度もデスペナルティを受けた事がない。
そして、それを貫き通したからこそアルバートは全プレイヤーの中で最速でレベル80越えたプレイヤーとなったのだが……それを崩してまであいつは今何かを為そうとしている。
ギルドの資金難だとかも、恐らく適当な理由付けなのかもしれない。同盟の金庫の中身が付き掛けているとはいえ、あいつがこんな博打で稼ぐような行いをするとは思えなかった。
もしかするとこの遠征狩りには俺も知らないような大きな裏があるのか?ならばアルバートと話す前にこいつから聞き出せるだけ情報を聞き出しておくか――――
「壊れた云々は置いておいて、あいつが何かを計画している可能性は有り得るな」
「可能性?計画している事は間違いないわよ。それは白騎士となが~いお付き合いのアクセル君も分っているんじゃない?」
「さぁどうだかな……だが違和感は有る」
「でしょ?でね。そこから色々と調べて……私が此処の設営に疑問もった理由に行き着くんだけど……これはちょっとゲーム内では話せないから後で現実の方のメールでお伝えするね?」
「ん?まさかあいつが何かゲーム規約に抵触する事でもしているのか?」
ゲーム内の会話は基本的に全てAO運営にモニターされている。
ゲーム内規約に反する発言や、行為を取り締まる為なのだが、態々現実のメールで伝えるということは―――――つまりそういう事だ。
「ん、いやそういう訳でもないんだけど……」
この女にしては珍しく何かを言いよどんでいる、珍しい事もあるものだが……規約違反ではないらしい。
そうなると、盗み聞きを警戒してるからか?まぁ、この様子だと此処で無理に聞き出してもろくな事にはなるまい。情報をこの壊れた女から引き出せるだけ良しとしよう。
「分った。アドレスは昔と変わっていない、そっちに送ってくれ」
「りょーかい、私も昔と同じアドレスで送るから、前みたいに迷惑メールフォルダーに直行させないでね?」
「おうそんな事もあったな。アレはお前が悪いんだ、俺は悪くない」
こいつらがアルバートに同盟から脱退させられた翌日の深夜にメールが届いたのだが、そのメールにはただ一枚のカツ丼の画像が張られていた。
その翌日の深夜には天丼、更に翌日にはラーメンと、人が小腹を空かせている時間を狙って毎日の様に無言で食い物を画像を贈りつけてくるメシテロという奴をやられたのだ。
そんなアホみたいな嫌がらせに一々対応するのも馬鹿らしかったのでこいつのアドレスから来るメールは全部迷惑メールフォルダーに突っ込むようにしていた過去が有る。
「まぁ、あれは私もガキだったからねー。子供の悪戯だと思って許してね」
「チッ!もうやるなよ?で、そのメールとやらはいつくれるんだ?直ぐに送るんなら一回落ちるが」
「んーこの後チーちゃんと約束があるから夜になるかな?」
「チーちゃん?あぁ吸血か……あいつ休止したんじゃなかったのか?」
「うん、でも最近ちょっと元気がなかったから無理矢理誘って連れて来たのよ」
「あの戦闘狂が元気が無いってのは俄かに信じがたいな……」
「うんだから今回暴れさせてっと、御免チーちゃんとの約束時間が近いから行くね。夜にメールするから必ず見てね?」
「おうよ、さっさと行け、遅れたら『吸血』にバラバラにされるぞ」
「う、うんじゃあ行くね。またねアクセル君」
「おう、じゃあな」
俺の挨拶も待たずにキサラは野営地の中央方面へ走り出した。恐らく吸血との待ち合わせの時間が迫っているのだろう。
キサラも容赦のない女であるが、吸血はそれに輪をかけて容赦が無い。特に遅刻は厳禁だ。
以前あいつらと固定PT組んでいた頃、俺は1分遅刻しただけで右腕を切り落とされた。
そしてキサラが10分遅刻した時は一瞬でキサラの四肢を胴体から分離させていた……キサラのギルドでは比較的まともな部類の奴なのだが一度スイッチが入ると一番危険なヤツに変貌する爆弾の様な奴だった。
「アクセル君一個言い忘れてたぁあああああ」
先程慌てて野営地中央に向かって行った筈のキサラが必死な形相で叫びながらこちらに戻ってくる。
「なんだ?時間は大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃない!でも重要な事を伝え忘れてた!!アクセル君、今から白騎士の所に向かうつもり?」
「ん?あぁ、そのつもりだが?」
「じゃあ、野営地の設営の事とラルフ君達の事は私のメールを見るまで聞かない方がいいよ。むしろ見た後も聞かない方がいいかもしれない……」
――――この歩く移動する地雷のような女が珍しく警戒している!?これは流石に俺も警戒をしたほうが良いかもしれんな……
「……確かにお前がそこまで言うならそうかもしれんな。まぁメールを見てから判断するとしよう」
「うん、それが良いよ。じゃあ私、チーちゃんに解体されたくないから行くね?アクセル君も無理しないようにね?」
俺の言葉を待たず再び野営地の中央に向かってキサラは駆け出していく。
「ふんっまったく騒々しい奴だ」
同日――――――――野営地本営テント
「邪魔するぞ、ギルマス」
「あぁ、アクセルか……珍しいなお前が一人で私に会いに来るなんて」
基本的にここ最近は無駄な用事を言いつけられたくないのでアルバートと二人で会う事避けてきたのだが、今回ばかりは仕方あるまい。
「少し、聞きたいことがあってない」
「あぁ、もしかしてキサラさん達の事か?」
本来聞きたいことはもっとあるが、キサラに先程忠告されたばかりだ。
その事は例のメールとやらを見てからにした方が良いだろうな。
「おうそうだ。あいつらの危険性は一番お前が良く分っている筈だ」
「もちろんさ。だけど今回ばかりは仕方ないよ。頼みの綱であるザイン達が欠席するんだ。例え劇毒であろうと利用できるものは利用するしかないよ」
普段自信に溢れギルドメンバーに弱い所なんぞ絶対に見せない男が、疲れたようにボソボソとそんな事を言った。
もはや、かつての白騎士の姿はここにはなく疲れ切ったAOプレイヤーが一人居るだけだった。
アバターの設定年齢は確か二十歳前後の筈だったが、今の疲れ切った表情ではまるで30代後半の残業に追われるサラリーマンの様だ。
「だが、それは……」
「お前の言いたい事は私が一番良く分っているよ。だってそうだろ?キサラさん達を追放したのは他でもない僕自身だ」
元々キサラ達を追放したのはアルバートだ。
白鷹の騎士団大きくなり、キサラ達以外のギルドと同盟を結ぶと、キサラ達との軋轢を次第に大きい物になっていた。
そして、アルバートはある時、決断を下したのだ。
その決断とは、他のメンバーにキサラ達は『毒』にしかならないと判断し、一番古くから付き合っていた面々を新しく入ってきた大多数の面々の為に切り捨てたのだ。
だが、その事についてアルバートは後悔していても判断としては間違ってはいなかったと、唯一残ったかつての固定PTメンバーである俺にだけ漏らした事があった。
『自分は信念と自分を慕ってくれる大多数のために少数の仲間を切る』と俺に言ってのけたのだ。
しかし、そんな信念を誓ってまで追い出した連中をこいつは呼び戻した。
それには何か大きな理由がある筈なのだ……こいつは建前としてギルドの危機的状況を利用しているだけではないのだろうか?
「あいつらに頼らなければならないほど、白鷹は不味い状況なのか?」
「あぁ、不当たり寸前さ。もう是非もないね。今回の狩りが失敗すればうちの同盟は崩壊間違い無しだよ……」
「だが、あいつらを投入すれば前回のレイド以上の被害をもたらす可能性だってあるんだぞ!」
「今回キサラさん達には、コバンザメ狩りと入り口周りの守備についてもらうつもりだよ。それだけで随分楽になる」
あいつらをダンジョン内に投入しない?馬鹿なそれに何の意味がある……それではザイン達の穴埋め足りえないだろうに……それにあいつらは……
「あいつらが、その命令を守るとでも?」
「今回の狩りには『狂犬』は来ない……制御はできるさ」
『狂犬』はキサラのギルドで一番イカレテル野郎で、スイッチの入った『吸血』に並ぶ程危ない奴だ。
状況選ばず自分が狩り対象と見なした相手をモンスター、プレイヤー問わず狩りに行く……以前レイド中の俺とアルバートも襲撃されたことが有る。
「アレが来ないなら、確かにまだ安全かもしれないが……『吸血』だって、何かでスイッチが入ったら制御はきかんぞ」
「その時はまぁ、私が対応するよ。勝てはしないだろうけど負けもしないだろうからね……」
「お前が前線離れたら本末転倒だろうが……」
もう、滅茶苦茶だな。
アルバートは今回の計画に全てを掛けている様だが、これはもう破綻しているといって良い状況だ。
アルバートはコバンザメの介入を恐れてザイン達が反対するのも押し切り奴等が居ない状況で無理矢理この大規模なダンジョン狩りを決行した。
しかし、そのザインが抜けた穴を埋めるべく呼んだあいつらには、介入が少ないであろうコバンザメの対応させようとしている。
しかも、あいつらが暴走した場合は最大戦力であるアルバート自身対応しするというのだ。
ダンジョン内の戦力はそれだけでガタ落ちだろう。
これでは、まるで明日あのダンジョンに侵攻する事だけが目的で討伐自体が目的では無いようだ。
まさかそれが目的なのか?だが、それに何の意味がある。
「そうだね。でも他に手は無いんだこれで行くしかない……それにさ……なんか昔に戻ったみたいで楽しいじゃないか……」
「……まぁそうかもしれないな……」
かつて俺達はキサラ達のギルドの面々と固定PTを組んでいた事があった。
もっとも、その頃はアルバートもキサラもギルドは立ち上げておらず、唯のプレイヤーとしてAOを楽しんでいた。
混沌としたPTであったが今よりももっと充実したものであったのは間違いない。
「キサラさんが、厄介ごとを持ち込んで私とチーちゃんで片付けて、アレックスとホークさんが後処理をする……懐かしいなぁ……」
「ホークか……あいつ今何処に居るんだかな……」
「あぁ、ホークさんならはウチを抜けた後、色々な所転々としているみたいだね」
ホークは元々白鷹の騎士団のサブマスターだった男で、アルバートがキサラ達を切った時に怒って白鷹を出ていってしまった男だ。
うちを抜けた後、フレンドも切られてしまったので今はAO続けているのかどうかも分らない状況だったのだが、どうやらアルバートは奴の所在を知っているらしい。
「ホークに会ったのか?」
「いや、私が会ったんじゃなくてこの間ラルフが…………ごめんなんでもない忘れてくれ」
ラルフか……いきなり言いよどんだ所を見ると例の地図の件だろうな……気にはなるが今は聞かない方が良いな。
「まぁ、元気にやっているんなら良いがな」
「そうだね。私達から皆、離れて行ってしまったけど……いや、違うな私が目的の為に切り捨ててしまったけど、それでも皆元気なようで何よりだ……」
「そう言うなギルドを維持する為に仕方なかった事なんだろ?」
俺のその言葉がアルバートの何かに触れてしまったらしく、アルバートはブツブツと抱えていた物を吐露し始めた
「でも、みんなが望む意見を取り入れて、極力多くのメンバーの望みを叶えてきたのに、皆なぜか満足してくれない。大事な物を切り捨ててまでギルドを運営してきたのに満足してくれないんだ……一つ叶えれば次の要求を直ぐに出してきて誰も彼もが、好き勝手な事を言って自分の要求が通らなければ私の事を批判する……皆自分の事しか考えてないんだ」
白鷹の同盟は大きくなりすぎた、ゲーム内とはいえ200人越える参加人数だ。
人が集まればそれぞれの数だけの意思や主張が有ると言って良い、つまり反目が起こり派閥抗争なんていう物がゲーム内ですら展開されている。
ゲームくらいせめて現実とは違う選択をすれば良いのに、人間とは本当に業の深い生き物だ。
「まぁ、一般のメンバーてのはそんなもんだ。大衆と同じで何を与えても次を要求してくるもんだからな。一々そんな連中の意見を聞いて居たら身が持たんぞ」
「分っているよ。でも、その意見を聞いて上げないと、今度はギルドから人が離れていくんだ。私はこのギルド維持する為に大事な仲間まで切り捨てて来たんだ……そんな事をしてまで維持したこのギルドを消滅させる訳にはいかない。もう、後には引けないんだよ……」
「なら、貫き通すしかないな……俺はまぁ腐れ縁とはいえ、長い付き合いだからな。最後迄付き合ってやるよ」
「ありがとうアクセル……でも、本当にどうしてこうなってしまったんだろうな……」
アルバートはその本音を漏らした後、何も語らなくなってしまった。
翌日――――――――野営地
「第一部隊出発してください!」
アルバートの号令で手伝いの傭兵プレイヤーや初心者で構成された第一陣がダンジョンに向かって出発していく、その総数100名はゆうに越えるだろう。
かつてAOで、レイド以外でこれほどの複数PTを混成させた大部隊作られた事はないだろう。その姿は中々に荘厳な物であった。
そしてその部隊に出陣の号令を出すアルバートには昨日の本営で俺に見せた疲れの表情は微塵もなく、その表情は威厳と自信に満ち溢れているものだった。
「おや?捨て石部隊の出発ですね。私達はいつ出発するんでしたっけ?」
「ちょっとキサラ失礼よ」
俺の横にはいつの間にか戦闘用の紫のローブと黒い髑髏の杖持ったキサラと、白い着物姿に長い銀髪をたなびかせた『吸血』が立っていた。
恐らく俺と同じ様に第一陣の出発を見物に来たのだろう。
「あぁ……お前等か……お前等は第三部隊だ」
「あ、そうなの?じゃあまだまだ時間あるわね。チーちゃん一回落ちてお茶してこようよー」
「駄目よ。待機するように言われてるでしょ?」
「えー別にいいじゃない」
「決まりは決まりよ。約束事はしっかり守らなきゃ」
「相変わらずマジメだなチ……『吸血』」
『吸血』はスイッチさえ入らなければ結構マジメな奴だ。
わがままを言うキサラをこうやって黙らせるのはいつもこいつの仕事だった。
「お久しぶりですねアクセルさん。別に昔みたいに『チーちゃん』で良いですよ。何処かの誰かみたいに変な拘りありませんから」
『吸血』はキサラを小突きながら、コロコロと笑って俺に昔と同じ様な親しみ持った視線を向けてくるが、そこはまぁ袂を分かった者としてのケジメという物がある。
「悪いが、白鷹はお前たちと絶縁してるって事になっているからな、『吸血』で通させてもらう」
「あら、了解です。あたしはアクセルさんと呼んでも?」
「かまわんよ」
「分りましたアクセルさん」
「相変わらずアクセル君は堅っ苦しいわね。所でアレ何人くらい居るの?」
キサラは指を挿して先程出発した第一部隊を示す。
「120前後って所だな、第二は100、俺とお前らが配属される第三部隊は20~50って所だな」
第一部隊は初心者と外部からの手伝いで構成される『斥候部隊』平均レベルは25前後だが数名レベル50台の上級者レベル傭兵とレベル30~40の中級者傭兵が混じっている。
このレベルの高い傭兵は第三の高レベル部隊に回しても良いのだが、MVP討伐報酬で揉める可能性があるので纏めて此処に配属となった。
ちなみにこの部隊の目的はダンジョン入り口周辺と1階洞窟部分の制圧に加え、地下1階の斥候任務がある。
恐らく被害が一番出るであろう部隊でキサラが行っていた『捨石部隊』とはそのままの意味だ。
第二部隊は白鷹の騎士団とその同盟から平均的な能力の部隊が参加している『制圧部隊』レベル30~40のプレイヤーで構成される部隊で、平均的なAOプレイヤーは此処に属している。
この部隊の目的は一般のモンスターと通路や地下1階の数多くある小部屋の制圧を担当している。
第三部隊は高レベルプレイヤーで構成される『MVP討伐部隊』平均レベルは50、白鷹の同盟の高レベルプレイヤーを結集させた部隊だ。
この部隊はMVPや通常のモンスターより遥かに高い戦闘能力を持つモンスターを担当する。
「その第三の20~50ってなによ?」
「あぁ、ザインのギルドの連中がレイドが終り次第合流するかもしれないから一応な」
「ふーんそう……そう旨くいくかしらね……でもまっ、良くもまぁこんな人数を集めたものね」
「アルバートの奴も今回ばかりは本気でな……失敗するわけには行かないんだとさ」
「でしょうね……所で昨日の私のメールみた?」
「……見たが、アレだけでは信じられん……」
キサラからは約束どおり昨日の晩俺にメールが届いたのだが……その内容は俄かには信じられない物であり、確かにそれはゲーム内規約違反ではなかったがゲーム内で声高に会話出来る内容のものではなく、盗み聞きでもされれば大事になる内容であった。
「そう?証拠の映像も見たんでしょ?」
「あぁ、見たがアレはどうやって撮影したんだ?」
キサラのメールには証拠とも言える、動画ファイルが添付されていた。
その映像にはこの野営地の迅速な設営の秘密が映し出されていて、それと一緒にアルバートと、ある人物の姿が映し出されていたのだ。
「うちの新人に監視が得意な子が居てね。ずっとこの森全域を監視させていたのよ。おかげでバッチリ撮れたわ」
「……では、間違いないのだな?」
「うん、白騎士がいつからそうだったのか知らないけど……白騎士アルバートはAO運営と繋がっている!」
キサラはその称号通りに、この白鷹の騎士団を破壊する言葉をそう強く告げた。




