第19話 変化そして……
迷宮生活12日目午後――――――――遺跡外縁森林
さて、あの話し合いから10日ほどが経った。この10日間は遺跡内外で様々な変化が起こる毎日だった。
僕が今居る、遺跡前の森の状況もその変化の一つだ。
入り口前の森にはカーン、カーン、と亜人や魔族達が木を切る音が響き渡っている。
以前の洞窟入り口前には鬱蒼とした森が広がっていたが、森の伐採の結果、今はもう切り株が並ぶ大きな原っぱの様になってしまった。
今僕はリリアに命じられたコボルト達と共に木こり魔族達の護衛任務についている。
亜人と魔族達の人数は合わせて20~30名程度で冒険者が周囲に近づけばコボルト達が警戒の遠吠え発し、それを合図に木こりの皆さんは達は遺跡に逃げ込む手はずになっている。
僕自身はここに居てもあまりやることは無いのだが定期的にコボルト達が指示を聞きに来るので、この洞窟前の原っぱに釘付けになっているという訳だ。
以前の2層の警備任務の時の様に同じ場所に居るだけの簡単なお仕事というやつなので、直ぐに飽きてしまわないか初日は心配になったものだが幸い今は平行して別の仕事を行っているのでその心配は無い。
ちなみにその仕事とは例の『迷宮化』計画の図面作成だ。
僕はあの相談から二日後には最初の迷宮完成予想図を大きな紙に描きリリアとコッセルさんに提出した。
そしてリリアは「ほぅ、面白い」と興味深そうな声を出して迷宮化計画自体は、承認してくれたのだが階段部屋前の構造だけはどうしても気に入らなかった様でこの部分についてだけは再提出求められたのだ。
それから3日後、再度リリアとコッセルさんに新しい図面を提出。
2枚目の図面はリリアは大いに気に入ってくれて、これで本格的な迷宮化に入れるかと思ったのだが今度はなんとコッセルさんに却下されてしまった。
どうも僕が提出した図面に描かれた構造では地震が起こった時等に崩落の危険が有るらしい。
やはり建築について素人である僕が作るものではそういうプロしか分らない部分が出てきてしまう様だった。
その後コッセルさんに問題改善のアドバイスを貰い、再度提出用の図面作成を護衛任務と平行して行なっている。
「ツルギ様、お疲れ様です」
入り口近くの切り株に腰を下ろして図面を引いていた僕に突然、声が掛かった。
声に釣られ図面を引く為に下を向いていた顔を上げると、いつものメイド服姿のメリジューヌさんが大きな木製の籠を抱えて立っていた。
「あぁメリジューヌさんお疲れ様です。薬草摘みですか?」
「えぇエルフの皆さんのお陰で大分料理の幅が広がりましたので、それに併せた薬草を積みに」
そう、変化といえばミッチー説明会の翌日の夜にエルフの救援物資輸送部隊が到着したのだ。
彼らが到着したその時僕は丁度広間に居たのだが、広間までグシオスさんに案内されて入ってきたそのエルフの一団を見て僕は最初彼らがエルフだとは気づかなかった。
何故ならばその姿が僕の予想していたエルフの姿とは大分違ったから――――てっきり僕の知らないモンスターか魔族でも来たのかと思ったのである。
エルフ達の姿は金髪碧眼で耳が長いという僕が持っていたエルフのイメージと酷似するものもあったが、それよりも先に目を引かれる特徴があったのだ。
彼らは物資輸送部隊ということもあってか全員筋骨隆々で逞しく。
僕がイメージしていた体の線が細い華奢なエルフのイメージはガラガラと崩れ去ってしまった。
彼らはその逞しい姿に相応しく彼らの体より大きなリュックを背負っていて、服装は迷彩柄の戦闘服の様な物に葉っぱやら枝やら色々と取り付けられておりまるでギリースーツの様な状態だったのである。
その姿はエルフというよりはまるで山岳ゲリラか山男の髣髴させる姿であったのである。(後から、リリアより聞いた話だとやはりあの格好は冒険者の眼を誤魔化す為の服装だったらしい)
そしてそんな彼らが持ってきてくれた物資は、この遺跡の食糧事情を一変させるものだった。
まず一つ目は緑色の粉末で小麦粉の様な使い方をして食べる物らしい。
エルフ達が持ってきてくれたこの小麦粉もどきは、エルフの国で栽培されている特殊な木の葉を乾燥させた粉末らしく、エルフ達が主食としている物だとメリジューヌさんが教えてくれた。
そしてこの小麦粉もどきは名無しの遺跡の乏しい食糧事情を一変させる特性を有している。
なんと、この粉末は水を加えると体積を爆発的に膨らませるのだ!その話に興味抱いた僕は実際にパン生地を作成する所をメリジューヌさんに見せてもらった。
後日、メリジューヌさんのパンを作成を見学した僕はその粉の有用性を理解する事になる。
メリジューヌさんが粉に水を加え、少し練ると緑色の物体はムクムクと体積を増やしていきその体積を10倍近くに増しす。
その異常な増え方に目を丸くしている僕にメリジューヌさんが微笑を浮かべて、今回エルフ達が届けてくれた量だけで半年から一年はパンを焼くには困らないと」教えてくれた。ただし味は今一との注釈をつけていたが――――また、彼らのもって来てくれた物資には香辛料の様な物も含まれており、食事の味付けが塩一辺倒だったこの遺跡の料理に様々な味付けのバリエーションをもたらした。
しかもそれ等に加え、彼らが持ってきてくれた物の中には洞窟内で栽培出来る食用キノコの株もあった。
エルフの隊長さん曰くこのキノコはマナが豊富な場所で育てると急激に成長し、約3日から4日で食べられるサイズまで育つらしい。
そして、エルフ達からそのキノコの特性を聞いたリリアはマルトメントさんに栽培担当に任命したのだ。
どうやら薬草学の延長で、植物学を研究していたマルトメントさんはこのキノコの栽培を行なった事があるらしくそれ故の抜擢だったらしい。
その後マルトメントさんは数多く存在する2層の小部屋の一つで栽培実験を行い。つい先日第一回目の収穫を終え、この遺跡の食糧事情に光をもたらした。(僕も食べさせて貰えたのだがこのキノコ大変見た目は毒々しい蛍光色の紫色粘液を吹き出す網模様が有る、どうみても毒キノコにしか見えないもので口に入れるのを躊躇われるれるものであったが、見た目と違い大変美味であった)
この十日間で一気に食糧事情が改善された名無しの遺跡であったのだが、やはり食べる側もそうだが作る側にも食材が豊富だと気合が入るのか、最近メリジューヌさんはご機嫌な様子で外に出てサラダ用の野草や薬草を採取しに来る事が多くなった。
「やっぱり、食材が増えると気合入っちゃいますか?」
メリジューヌさんが手に抱えている籠には山盛りの薬草が入っている。
普段だと、この籠に半分くらいの量しか摘んでいなかった筈だ。
「そうですねそれもありますが、今回はマルトメントさんに頼まれた物もありましたので」
「あぁ、前回の戦闘で怪我人が出ちゃいましたからね……」
二日ほど前の深夜に冒険者が一度に12名も襲撃して来た事が有った。
僕はその時既に就寝しており、冒険者襲撃の知らせを受けたのは奴等が1層を抜けた後だった。
幸いその時に1層には誰も居なくて、2層での遊撃部隊が初期対応した後に、最終防衛線で反撃を行い冒険者達を見事撃退はした。
だが、その時に無理に冒険者を攻撃した遊撃部隊に負傷者が何人か出たと聞いていた。
「ツルギ様がお休みの時間帯でしたから、皆必死だったので仕方ありませんね」
「僕が居たって怪我人が出るときはでますよ……?」
「ですが、ツルギ様がいると負ける気はしないので皆今回の様な無理はしないと思いますよ?少なくとも私はツルギ様が負ける所は想像できません」
「まぁ、最近来る連中には負けないとは思いますけど――」
ラルフに焚き付けられたのかこの10日間で大小様々なPTが、この遺跡は襲撃している。
その人数を合計すればゆうに100名は越えるだろう。
だが、その100名は最初の3日間に襲撃してきた冒険者に比べると数段質の落ちる者達ばかりで、以前襲撃してきたホークの様な特殊な装備やスキルを持つ者は皆無であった。
何故そのようになったかは理由は分らないが、冒険者の上級者は装備ロストやデスペナルティを恐れる傾向がある様なので、中級者や上級者を撃退しているこの遺跡を警戒して来ないのかもしれないと僕は推測している。
もしそうだとしたらようやく、僕の『この遺跡に入った者は生きては帰さない』という方針が効いてきたのだろう。
「でも、慢心はいけませんよ。奴等は何をしてくるか分らない所がありますから……」
この数日間の襲撃で銅や鉄鎧の冒険者のスキル構成は大体把握できたし、レベル30以上の中級者のスキルの内容もおおよそ知ることは出来た。
はっきり言って、あの程度ならば今の僕達ならば無傷で倒せてしまう。
だが、あのホークの様な上級者が相手ならば話は別だ。
これはミッチーのマナ結晶分析結果から分った事なのだが、あのホークという武器破壊の呪いを扱う冒険者は統括AIからユニークスキルを与えられている冒険者だったらしい。
ユニークスキルは統括AIから上級冒険者に与えられるもので、その冒険者の戦闘スタイルに適した固有スキルを与えているようだ。
ミッチー曰くホークの武器を破壊する呪いがまさにソレだったらしい。
一度ホークを倒し、ミッチーが吸収した残骸からそれがユニークスキルだという事を知れたが、もし襲撃者に上級者が混じっていた場合は倒すまでその効果や威力などは一度倒してみないと分らない所が多い。
なので一つの判断ミスが致命的なダメージに成る可能性がある。
故に慢心は絶対に許されない。慎重にそして、的確に冒険者達を処理しなくてはいけないのだ。
「確かに奴等は不可解な魔術や見た目からは想像も出来ない力を持っている者もいますが、それでも――」
「アォォォーーーン」
その時、メリジューヌさんの言葉を遮って狼の遠吠えの様なものが森に響き渡たった。
それと同時に周囲の魔族達が一斉に洞窟内への避難を始めた。
そしてそれを見たメリジューヌさんは幾分か緊張の混じった声で僕に問いかけてくる。
「あら?冒険者が来ましたか?」
「のようですね。ブチ状況は分るか!」
そう、今の遠吠えは偵察に出しているコボルトからの冒険者襲来を告げる知らせだ。
警告の内容を知るべく、近くに居るコボルトに問いかける。
「ボス冒険者だ。数は7の全員胴色。中ボスがそのまま迎撃するか聞いてきている。どうする?」
あの遠吠えは一種の魔獣言語に近い物らしくコボルト達には言葉として聞こえるものらしい。
しかし、これは丁度良いな。
銅鎧7人程度が相手ならば、コボルト隊と僕の連携を強める良い練習相手になるだろう。
「そのまま、誘い込めと伝えろ。いつもの入り口の包囲殲滅で終らせる」
「了解だボス。中ボスに伝える」
ちなみに、今僕が話しているのは僕の配下の『ブチ』だ。
グシオス隊の中ではグシオスさんの次に年長者で、まだ話が分る方の奴なので僕の周りに待機させている。
本名は人間では発音できない名前なので、僕は体の模様から取ったあだ名で『ブチ』と呼んでいる。
そして、彼が言う『ボス』というのが僕の事で『中ボス』というのはグシオスさんの事だ。
元々、グシオスさんがボスと呼ばれていたのだが、群れ?の序列が変わったので僕が『ボス』と呼ばれる事になったのである。
ちなみに以前オーカスさんやグシオスさんが言っていた『群れのリーダーになろうとする本能』から来る襲撃は僕が何をする事もなく終了していた。
僕が寝ている間に襲撃自体は在ったらしいのだが、ミッチーと僕のお隣の部屋の奴が対応してくれて僕が気づかないうちに終っていたのである。
3人は朝起きたら僕の部屋の前で大量の鎖に絡め取られ天井から吊るされており、もう1人は蜘蛛の巣トラップに捕まって騒いでた所を隣室の住人に「五月蝿いにゃ!」といってぶん殴られ気を失ってしまったらしい。
ちなみにこのブチは僕との力の差を分っていたらしく、襲撃には参加していなかった。彼が言うには「本能やプライドは大事、でも命はもっと大事」との事だった。
このブチの言葉通りどうやら、彼らの中では僕は逆らったら即座に部下を殺すような人間に見えていたらしく。
捕まえたコボルト達は何もかも終ったような視線で僕を見てさっさと殺せというのみで僕が彼らを殺さないと言っても「一瞬希望を持たせて安心した所で殺すつもりだろ!」と叫ぶ者すら居た。
何を言っても僕の言葉を信じてくれないので定番のミッチーに説得を行なってもらいなんとか納得してもらえた。まだ完全に信じてくれていない者もいるが――――
「んじゃ、準備に入るか」
「私もお手伝いしましょうか?」
メリジューヌさんの申し出は願ってもない事だが、胴鎧7人相手にメリジューヌさん投入はやり過ぎな気もする。それにメリジューヌさんが居てはコボルト達との連携錬度上げるという目的も達成できないであろう。
ならば、メリジューヌさんには申し訳ないが、一番脆い所だけ守って貰うだけにしよう。
「そうですね。では、お願いしてよいですか?」
「喜んで!では、何を致しましょうか?」
メリジューヌさんは身を乗り出し眼をキラキラさせて期待の眼差しを向けてくる。だけど、僕の命令は多分彼女の望む所ではないんだろうなぁ……
「では、退避する人たちの護衛をお願いして良いですか?」
「あら、前線ではないのですか?それに皆さんほとんど退避を終えられているようですが?」
木こりの皆さんは既に遠吠えが聞こえた段階で洞窟に入って行ったので、周囲には非戦闘員は少ない。
「まだ、洞窟内にはコッセルさん達が残っていると思いますのでそちらをお願いします」
「確かに、モグルの方々の足はそんなに速くないですからね――」
1層の洞窟エリアでは今コッセルさん達が迷宮化計画の工事を行なっている。
耐震部分に問題が有る所以外はリリアの承認が有った事もあって、既に迷宮化に着工しているのだ。
「私としては、一度ツルギ様の指揮下で戦ってみたかったのに残念です」
珍しくメリジューヌさんが、頬を膨らませて僕に批難の視線を向けてくる。
ちょっと可愛い……が、ここは折れる訳にはいかない!
「それはまたの機会にしてください。それにモグルの皆さんは僕の計画の要です。だから一番信頼できるメリジューヌさんにお願いしたいんです」
その僕の言葉を聞くと同時に頬膨らませたメリジューヌさんはニコっと笑顔を作った。
「分りました。それではコッセルさんの元へ参ります。必ずやツルギ様の信頼に応えてみせますのでご安心を!」
メリジューヌさんは力強くそう言って、鼻歌混じりに洞窟に駆け出していった。
メリジューヌさんは何故か僕からの『信頼』という言葉に弱い。
なんか、弱点を突いている気分になってしまって申し訳ないが、こう言うと大抵の願いは聞いてくれるのでついついこうやってお願いしてしまうのだが……何故かその光景をアイペロスに何度も目撃されてしまい。
「兄貴はジゴロの才能がありますね。どうです?あたしと組んで一儲けしませんか?」
とかとんでもない事言われた事が有ったが、丁重にお断りしておいた。
***
10分後――――――――
パキンッという音がした後にサラサラと冒険者が砕け散り青い砂に身を変じる。
冒険者達との戦いはコボルト達に怪我人が出ることも無く、快勝と言って良い結果だった。
そしてコボルト達は次の命令を待ち、僕の前に横一列に並び跪いている。
最初こそ恐縮したが最近ではもう見慣れた光景だ。
「まぁ、こんなもんだな……」
「何か、俺達の動きに不手際がありましたか?」
「えっ?いや、完璧だったよ?」
胴鎧の冒険者たちは1層洞窟入り口に到着後2分も経たずに僕達に駆逐された。
完璧と言って良い殲滅戦だったのにグシオスさんはそんな事を僕に問いかけてくる。
「そうですか?少しご不満そうだったので気になった次第でした」
「そんな事は……いや、少しだけあるか。でもそれはグシオスさん達への不満ではないよ」
「はぁ……では、何がご不満だったのですか?」
「ん……グシオスさんが気にする事じゃないよ。僕の個人的な事だ」
今回の戦いは折角用意した罠をほとんど使わずに勝利してしまった。
認めたくはないが正直欲求不満だ。これではまるで戦闘狂の我が姉の様であるがどうにも不満は消えない。
それにこれでは僕達の錬度を上げるという目的も達成できないし、何よりこんな完全初心者たちを送りこんでくるラルフに憤り覚えた。
初心者にはデスペナルティが無い。
その理由は彼らが安価な人形だからであろうと、僕とミッチーでマナ結晶分析の話しをした時に結論を出した。
初心者の体を構成しているマナ結晶はとても純度の低い物で、中級者の100分の1程度しか魔力として採取できない。
ミッチーの話だとマナ結晶の削りカスか何かを再利用しているのではないという話だ。
その再生資源の様な彼らの体は製造が容易で、幾らでも製造できるのでペナルティが無いのではないかという結論に達した。
そしてそれ故にこうも死を恐れずにこの地へ訪れるのだ、と推測している。
ミッチーの残骸データ分析の結果と冒険者から盗み聞いた内容で、彼らのデスペナルティの詳細もおおよそ分っている。
中級者以上の冒険者が死を迎えると、彼等はしばらくその体でAOにログインができなくなるのだ。
これは恐らく、体を再製造にするのに時間がかかるのでは推測される。
しかもデスペナルティと言えるのはそれだけではない、この世界で手に入れた装備まで失ってしまうのだ。故に中級以上の冒険者は極力死を回避しようとする。
ちなみに体と一緒に砕ける装備は、彼らが『標準装備』として搭載しているものでマナ結晶で作られた、云わば冒険者の体の一部らしい。
そして、その標準装備と言うのは僕にも思い辺りがあった。
それは女神の神殿と呼ばれていた施設でレベル毎に支給される装備で、レベル1から14の初心者には胴の装備をレベル15になれば鉄の装備を、そしてレベル30になれば各職に合わせた装備を支給するという形式をとっていた筈である。
「あまり深くは聞かないほうが良い内容で?」
「いや、まぁそんな重大な事ではないんだけど――」
「ご主人様は活躍の場が無くて不満なのです。グシオス様」
ミッチーがいきなり僕の声を遮って僕の本心を勝手に吐露した。
最近ミッチーは突然こうやって会話に参加することが多くなった。
ミッチー曰く「私には生物の機微というモノが良く分りません。ですのでより多く生物と会話する必要があります」との事で、その発言以降こうやって僕の痛いところや図星を付くのだ。
その時の僕の反応や、それを聞いた魔族達の反応をデータとして蓄積して「機微」というモノを学ぶつもりでいるらしいのだが……僕にとっては良い迷惑以外の何者でもない。
「おぉう、それは申し訳ありませんでした。指揮官殿にも獲物を残しておくべきでしたなハッハッハッ」
「いや皆が無事で勝つことが最優先だよ。これは勝手な僕の不満だ聞き流してくれ。ミッチーも余計な事を言うな!黙ってろ!」
「いやはや指揮官殿は悩みを抱え込むところがありますからね。俺としてはミッチー殿が居てくれて助かっていますよ」
「だ、そうですので『黙れ』という命令は聞けませんご主人様」
とまぁ、データ蓄積の成果なのかミッチーは僕の命に関わらない事でも、このように僕の命令に逆らうような事が多くなった。
僕としては彼女の変化を好ましく思っている部分もあるが、この様に色々とやり難くなってきた感は否めない。
彼女にその事を言及すると「それも全て最終的にはご主人様の為になります」との事なのだが、単にミッチーが慌てる僕を見て楽しんでいるだけな気もする。
「はぁ……もうミッチーの好きにしなよ」
「はい、好きにします。それではご主人様コボルトの皆さんに命令を出してあげてください。皆さん暇そうにしています」
「あぁ、そうだったね。じゃあ皆担当任務に戻って、僕はメリジューヌさんに襲撃が終わった事伝えてくる」
このように遺跡で暮らす日々は好ましく変化しながら時を進めていくのだが、最悪の変化が起こる知らせが届いたのはそれから更に10日後の夜だった――
迷宮生活22日目夜――――――――議場
その呼び出しは突然だった。
その日は冒険者の襲撃も無く平和な日で、図面も完成して提出済みだった僕は「暇だな」という事を心の中で百回以上は間違いなく呟いていたと思う。
そんな暇だけど平和を夕方にいつもと違う事が起こった。
木こりの皆さんが引き上げ始めたので僕とグシオス隊も引き上げる準備をしていた所に突然半人半馬のケルス君が洞窟内からこちらへ駆けてきたのだ。
彼はその足の速さを買われて今迷宮内の伝令役の様な事をやっている。
僕も彼には結構お世話になっていて、リリアからの任務についての伝言やベアトリスからの宴会の誘い等を伝えに来てくれている(前者は正当な理由で使われているが、後者は完全にパシリだ)
しかし、その時の様子はいつもと違った。
彼が僕に伝言を届けに来る時はいつもヤル気の無い。ダラけた様子なのだがその時の彼の様子は大変切羽詰ったものであった。
その様子に只ならぬ自体だと察した僕は一体何事があったのかをケルス君に問いかけると、彼は僕へリリアからの伝言を伝えた。
その伝言とは「緊急事態発生の為直ちに軍儀行なう。隊長格の者は急ぎ儀場に集合せよ」との事だった。
この伝言を伝えたリリアのその時の表情はとても深刻な表情で横に居たメリジューヌさんも何やら悲壮な顔していたらしい。
その二人の様子を見たケルス君は、慌ててオーカスさんや、ベアトリス、そして僕にこの事を伝えに来た訳だった。
そして、現在議場には僕、グシオスさん、オーカスさん、ベアトリス、メリジューヌさん、リリアの6人が集まっている。
この6人が全て集まってこの議場にあつまるというのは始めてだ。それだけに今回の起こった事が深刻だと言って良いだろう。
「さて、全員集まったな。汝等には悪い知らせが二つある」
ゴトンと音立てて、リリアがテーブルの上に四角いガラス板の様な物を置く。
「魔水晶ですかな?それは」
オーカスさんがリリアにそのガラス板について問いかける。
これは2回目のエルフ達からの救援物資に含まれていた物だ。
エルフ達はあれからも断続的に僕達へ物資を届けに来てくれているのだが、これは他の救援物資とは少し趣旨が違いリリアの要望をエルフの王が聞き入れてくれて特別に用意してくれたものらしい。
確かリリアの使い魔が見ている物をここに映し出してくれると言っていた。まぁ、テレビみたいなものだな。
「うむそうだ。まずはコレを見よ」
そう言ってリリアが水晶板に手をかざすと、水晶にぼんやりとオレンジ色に染まる町の様な物が映し出されたのだが……その映し出された映像を見て議場に居る皆が息を呑んでしまった。
そこには海を背景に燃えている港町が映し出され、空には眩い太陽のような光が浮かんでいた。アレはもしかするとリリア達が言っていた天使とやらのなのかもしれない。
そして、その映像を見る視線は様々だ。
グシオスさんは憎悪の視線を、ベアトリスは恐怖の視線を、そして普段落ち着いているオーカスさんは狼狽して体を震わせていた。
メリジューヌさんはこの事知っていたせいか、慌てはしなかったもの沈痛な表情をしている。
皆がそれぞれの反応を示したが、誰も言葉を発することはなかった。
その沈黙に耐え兼ねたのか、りリアがこの映像の説明を始めた。
「北の港がどうやら陥落した様だ……」
オーカスさんが、その言葉を聞いて叫ぶようにリリアに問いかける。」
「隊長は!ファフナー卿はどうなったのですか!」
「落ち着いてくださいオーカス卿。あの父がそう簡単に死ぬ訳がありません。きっと生きています」
ファフナーさんというのはメリジューヌさんのお父さんで、リリアの親衛隊の隊長勤めていた人らしい。つまりオーカスさんの上官という訳だ。
ファフナーさんは冒険者の最初の襲撃の時は国境線の砦に居たらしいのだが、砦陥落後は北の港まで撤退する事に成功した様で、その後は北の港の防衛に付いているという事をリリアの使い魔が最近まで確認していた。
「ファフナーの所在は分らぬがな、港にはほとんど戦力は残っていなかった様であるな」
「どういうことだリリア?まさか元々港は放棄するつもりだったってことか?」
「うむ恐らく、親衛隊に本国から帰還命令が出ていたのであろう。防衛戦に親衛隊の姿は見えなかった」
リリアはどうやら、天使が現れる前からずっとこの戦いを監視していたらしくその戦いを僕達に説明してくれた。
港に残されていたのは人形をはじめとする防衛用の魔道兵器ばかりで、残されていた兵は僅かだったそうだ。だが強固な港の砦と城壁そして洋上からの軍艦の艦砲射撃で防衛自体は旨くいっており、戦いは魔族側が優勢に見えたらしい。
しかし、戦いが魔族側の勝利に終りそうな時に空に転移してくる者が居た。
そう、リリアの城を襲撃した光り輝く天使だ。
そして、天使が現れた瞬間、冒険者を転移させる魔法陣が現れ砦に再度大量の冒険者が押し寄せ、それを見た兵達は防衛を放棄し町の人々と共に船に乗り逃げていってしまったそうだ。
これが、リリアが見ていた北の港陥落までの顛末らしい。
そしてその顛末を話し終えた後、リリアはこの結果から予測されるであろう事を述べる。
「普通ならば親衛隊が我の命無しでこの地を離れる事は有得んが……恐らくは……」
リリアはそこまで言って言い澱むが、グシオスさんがそれに続くようにリリアに問いかけた。
「陛下が撤退命令を出したとリリア様はお考えですか?」
「それしか、考えられるぬな……つまり、我々への本国からの救援は望めぬという訳だ」
「まぁ、戦争においては非常な方ですからね。それも有得ます。ですが、もう一つ思い当たるフシがあります……ライオネル殿下が手を回している可能性が有り得ますよ」
おや?知らない人の名前が出てきたな。
殿下というくらいだから王族なのだろうけど……
「何故だ。私は王族でも落ちこぼれだと言われていたのだぞ!魔王後継者第一位の兄上が態々我にそんな事をする訳が……」
「あの方は後継者の中では一番リリア様を危険視されていましたからね。有り得る話なんですよ」
「馬鹿な!何故だ我は――」
なんだ?なんだ!?いきなりリリアがライオネルさんとやらの名前が出た瞬間興奮した出したぞ?
「ごめんちょっと話の流れが分らないんだけど、そのライオネルさんとやらは何者なんだ?」
「あぁ、そうですね。指揮官殿は異界から来たので魔王家のお家事情は知らないのでしたね」
「そうであったな……ライオネルは私の腹違いの兄だ。私には兄妹姉妹が5人居てな――」
そこから、リリアの家の家族事情が語られたのだが、中々複雑家庭環境の様だった。
リリアには姉が二人、兄が一人、そして弟と妹が一人ずつ居るらしいのだが全員母親が違うらしい。
そして、リリアの生まれた魔王家は生まれた順番で後継者を決めるのではなく、戦闘能力の高さで後継者を決めるらしいのだ。
その戦闘能力というのも単純な力や魔術の腕、それと配下の軍勢の強さ、それらを全てを比べて優れた者を次期魔王に据えるのだという。
だが、魔族は元々個人的な力尊ぶ種族でもあるので、攻撃魔術が扱えないリリアは早い段階で後継者候補から外されてしまったらしい。
故にリリアは他の兄弟からは居ても居なくても同じだと思われていた様で今まで権力争いに巻き込まれることはなかったのだそうだ。
もちろん、今もそれは変わらないとリリアは思っていたらしいのだが――――グシオスさんの見解はリリアの認識とは随分違っていた。
グシオスさんは実は1年程前まではライオネルの親衛隊に属していたらしく彼の事についてはリリアより詳しいらしい。
「あの方はにこやかな顔で反抗勢力の潜伏しているであろう村を村丸ごと虐殺を命じる方ですよ?親族の謀殺くらい平気でやりますよ」
「だから、何故兄上が我を謀殺しようとする!我がこの地の領主になったからか?」
「いえそうではありません。リリア様の召喚術を恐れていたんですよ。ライオネル殿下は」
「あぁリリアの召喚魔術って結構強力なんだっけ?確かフェニックスとか呼べるんだろ?」
「うむ、まぁな……だが、それでも兄上が我を恐れていたというのは信じられんが……まぁ、良い。その話は覚えておくが、今そんな事を話していても埒が開かん」
「確かに、今そんな事をお伝えしてもどうにもならないことでしたね。申し訳ありませんでした」
グシオスさんは、リリアに深々と頭を下げる。
しかしそれを見たベアトリスがグシオスさんに余計な事を言う。
「そうにゃ!犬野郎はいつも一言多いにゃ。そんなに吼えたいならここから出て行って外で遠吠えでもしていれば良いにゃ」
「フンッ!天使に恐れをなして何も言えないベアトリス殿にそんな事を言われるのは心外だな」
「にゃんだと!やるかこんにゃろう!」
「おや?図星を付いてしまったかな?だが、ここは神聖な話し合いの場だ。暴れたいのなら一人で外に行き暴れて来るが良い」
「あーもう、ケンカしないでよ。二人とも!」
まったく、この二人はどうしていつもこうなのだろうか……真面目な話し合いの場くらい二人とも抑えて欲しいものだ。
「うむ、今はツルギの言う通り言い争いしている場合では無い。もうひとつ深刻な問題があるのだ。これは皆で一丸となって対処しなければならぬ」
確かに、魔族の本国からの救援の可能性が絶たれたのは大きな痛手ではあるが、早急に皆を集めた所で今すぐ何か対処出来るものではない。
今回の緊急会議には何か別の本題があるのだろう。
「それが我輩達全てが集められた真の理由でありますか?」
「そうだ、今から映し出す映像はここから歩いて1時間ほどの場所で使い魔が破壊される瞬間に撮った映像だ」
リリアそう言って何やら水晶板の表面を指でなぞって呪文のような言葉を呟く、そして水晶板に映し出された映像が切り替わる。
「これは、まさか冒険者共の陣ですか?しかも転送用の魔法陣もある様ですな」
水晶板に映し出された映像は空から広場のような場所を見下ろしている映像だった。
その広場にはテントが複数設営されていて、中央には青い光を放つ大きな魔法陣が設置されている。
僕は以前この光景に似た場所を見た事がある――――そう、これは始まりの町から狩場へ転送された先の野営地と何処か似ているのだ。
「グシオスよ!何故この陣を発見できなかった!固定式の転送魔法陣を作るならば数日は掛かる筈だ!しかもこの規模だ、設置には十数日掛かる可能性もある。我輩の命令を無視してまで偵察に出ていたお前達がこの地を知らぬとは言わせぬぞ。何故これに気づかなかった!」
「オーカス卿確かに俺はこの広場には見覚えがありますが……二日前の偵察時点ではこの様な物はなかった筈です」
「何だと!ではこの陣はたった1日やそこらで作られたとお前は言うのか!」
「オーカスよグシオスの言っている事は本当だ。我も使い魔でこの地の上空は何度も通過しているが、この魔法陣は今日突如として現れたのだ」
「なんと!それでは奴等は一日で固定魔法陣を作れるという事ですか?」
「あの天使の転送技術を見るに、奴等の技術は我等を遥かに凌駕していると見て良い。こういう事もできるのであろう……」
そのリリアの言葉を聞いて議場は再び沈黙に包まれたが――――僕は黙る訳にはいかなかった。
もし、これがあの野営地と同じものであるならば最悪だ――――冒険者がこの遺跡の近郊に無尽蔵に湧き出す。それに野営地のテントに掲げられている旗に見覚えがあったからだ。
「リリア、この先の映像はないのか?」
「細切れではあるが破壊される寸前迄の映像が有る」
「じゃあ直ぐにそれを見せてくれ!て敵の規模が知りたい」
「うむ、少し待て」
リリアが再び水晶に向かって呪文を唱えると、次々と静止画の映像が映し出されては切り替わっていた。
そして、あるアングルで映し出された映像にはしっかりと、テントに掲げられている旗が映し出されている。
そのは旗には白い鷹が描かれていた。
この旗に描かれているエンブレムには見覚えが有る、AOプレイヤーならば誰もが知っているギルドのエンブレムだ。
このエンブレムを掲げているギルド名は『白鷹の騎士団』という名でAOで際も構成人数が多いギルドだ。
また傘下のギルドも多く、僕が初回AOログイン時に誘われた初心者ギルドもこのギルドの傘下ギルドの一つだった筈である。
ギルドマスターは以前この遺跡を襲撃したであろう『白騎士』だ。
どうやら、僕が恐れていた事態になってしまったようだ……だが、遺跡の迷宮化計画は着実に進んでいる。
奴等が来ると分っていれば、それなりの対応策はあるはずだ。
そして、僕以外にも白い鷹のギルドエンブレムを見て表情を変える人物が居た。
「姫様この旗には我輩見覚えがありますぞ」
「うむ、気づいたかオーカスよ。これは我が城を攻めた冒険者が数多く掲げていた旗印だ……」
「おのれ人間共め、何処までも我等を追い詰める気か!」
「のようだな、奴等はよっぽど我等の命と吸魔石が欲しいとみえる」
苦々しくリリアはそう言葉を吐き出したが、メリジューヌさんはそんなリリアを安心させるように言葉を投げかける。
「大丈夫ですよ姫様。前と違い不意打ちを食らう事もありませんし、今私たちにツルギ様がついています」
「うむ、そうであるな。ツルギよ。我等は勝てるな?」
「まぁ、なんとかいけると思うけど……恐らく敵の数は100は越えると思う。だから、しばらくは迷宮化作業を全力でやらせてほしい」
「100とな?この映像には20~30の冒険者しか映っておらぬぞ?汝はその数を何処から推測した?」
うっしまった……ついつい焦って墓穴を掘ってしまった。
リリア達には、まだAOの事を告白できていないので僕が白鷹の騎士団について知っている事は言えない……もう、この場で勢いに乗って告白してしまうべきだろうか?だがこの状況でそんな事を告白しても……
その時、僕の窮地を察してミッチーが声を挙げた。
「リリア様、それについては私とご主人様から後ほど説明させて頂きます」
「む?ミッチー殿が?もしや、ミッチー殿の能力で何かが解ったということか?」
「はいそうです。ですが、ご存知の通り私の能力はリリア様とご主人様にしかお伝えする事が出来ません」
「うむ、そうであったな。では、この軍議が終った後に仔細を聞くとしよう」
「はい、よろしくお願いします」
とりあえずミッチーが助けてくれたので、一時的に窮地は逃れたが事態はあまり変わっていない。
この軍議が終った後に、リリアにAOの事を説明しなければならないだろう……その事についてミッチーに心の中で毒づくと、『せめてリリア様くらいにはお話しておくべきです』と少し怒った声が頭の中で響いた。
「あら、何人か切った覚えがある顔がいますね」
静止画に映し出されている人物を見ながらメリジューヌさんが物騒な事を呟く。
どうやら、僕とリリアが話していた間にも映像は切り替わり続けていた様だ。
「確かに城を襲撃した者が何人か居るようですな」
オーカスさんがメリジューヌさんに相槌を打つ。
そうして次々と水晶に映し出される静止画にとある人物が映し出されるとグシオスさんとベアトリスが声を挙げた。
「む、こいつは例の白鎧ですね」
「あ、そうにゃ!こいつが指揮を執っていた奴にゃ!」
静止画には白い鎧を着て、煌びやかな金髪をオールバックにした甘いマスクの男が映し出されていた。
彼の名は『アルバート』ある程度AOを遊んだならば彼の名を知らないプレイヤーは居ない。
ギルド『白鷹の騎士団』のマスターにして、初めてレベル80に到達したプレイヤーであり、その功績を称えられ統括AIデミウルゴスから『白騎士』の称号を与えられたプレイヤーだ。
――――だが、次に映し出された画像を見て僕の頭からアルバートの事なんて吹っ飛んでしまった。
「なっ!?」
思わずその映像を見た瞬間驚愕の声が出た。
水晶にはそこに居てはいけない人物が映し出されていたのだ。
水晶に映し出されていたのはショートカットの青い髪の魔術師の女だ。
確か彼女は広域破壊魔法を得意にしていると言っていた。
眼鏡と笑顔の似合う美人で、何度か彼女が作ったギルドに誘われた事が有る……彼女があの野営地に居るとしたら本気で不味い事になってしまう。
もし、本当にこれが彼女本人ならば僕らに勝ち目は無い。
その悪夢のような現実をもう一度確認しようとした。
映し出されている画像が唯単に他人の空にかもしれないと願いながら、再度良く見ようとしたがその瞬間映像は途切る。
「うむ、ここで最後に映っていた女魔術師に使い魔を破壊されてしまってな……」
「なんと!姫様の隠蔽された使い魔を破壊したのですか?」
「今まで発見された事がなかったので油断していたが、それを抜きにしてもこの魔術師は魔眼か何かを持っている可能性があるな」
「リリア!今の最後の映像もう1回出して!」
「む?どうしたツルギよ?何か気になる事でもあったか?」
「良いから出して!」
「む、白鎧ではなく最後の魔術師の映像を出せばよいのか?」
はっきり言ってあんな白鎧はどうでもいい。
幾ら彼本人が強くて、強いスキル持っていたとしてもそれは人間の範疇だ。
だが、もしあの魔術師が本物なら本気でヤバイ。
正確には彼女と一緒に来るであろう人物が本気でヤバイ。
端的な表現になってしまうがヤバイとしか表現出来ない人物が来る可能性が高い。
「そうだよ!早く!!」
「まったく一体なんなのだ……」
リリアはブツブツ文句を言いながら水晶を操作する。
そうして、リリアの呪文に応じて再度水晶は誰かと会話しているらしい青い髪の魔術師を映し出した。
間違いない彼女だ……しかも見切れているが横に居るのは……終った……今まで僕が丹精込めて練ってきた計画もあの人の前では大した障害とはならないだろう。
彼女の姿に見切れていて彼女と話している人物の全貌は映し出されていないが、長い銀色の髪の毛の先端がうっすらと映し出されていた……それを確認した瞬間全身に鳥肌が立ち、メリジューヌさんと対峙した時以上の恐怖が全身を駆け抜けた。
この青い髪の魔術師は名前は『キサラ』現実での名前は『如月 沙羅』という。
彼女はAOを始めた当初から親友を固定の相方として活動しており、一部では『大量殺戮コンビ』との悪評が付けれられていた。
基本的に彼女が動くときはあの銀髪の悪魔が付いてくる。
――――そう、彼女の親友とは僕の姉だ……そして、あの見切れている人物は間違いなく姉ちゃんだ!!
次回投稿は7月18日頃を予定してます。
追記:もうしわけありませんが次話投稿は7月19日前後に変更させていただきます




