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迷宮の新米守護者  作者: 板 竹輪
第1章 迷宮の新米守護者
10/45

第9話 軍議:要求/承認/序列

「まずは、今回の被害報告をせよ」

「では、我輩が報告させていただきます」


 オーカスさんの被害報告が始まった。


 ■人員被害状況

 ・1層で巡回と防衛に付いていた10名死亡

 ・2層最終防衛戦で15名が重症 13名が死亡

 ・3層入り口にて1名死亡(これは恐らくオーカスさんの弟さんだろう)


 物資被害状況

 ・1層に設置していた警報装置1機破損

 ・2層防衛戦のバリケード全壊

 ・冒険者との戦闘で装備を破壊された兵員の装備多数


 ■残存兵力

 ・親衛隊 6名

 ・獣人部隊 13名

 ・他亜人部隊 20名

 ・合計兵力 39名(重傷者は数に含まず)


 これがオーカスさんの報告内容だ。


 報告を聞いたリリアは沈痛な面持ちでオーカスさんに話しかけた。


「報告ご苦労。随分やられたな、やはり冒険者共は手強いか」

「銅の鎧や鉄の鎧の者は我が方の兵とそう変わらぬ強さでありますが、それ以外の装備の者達は危険でありますな。特殊な装備を持つ者や、異常な強さを持つ者達が僅かながら存在しております」

「ふむ、そういえば3層に降りてきた冒険者も何か特殊な矢を使っておったな」


 リリアがそう告げるとオーカスさんがハッとしてリリアに謝罪した。


「3層に抜けられたの我輩の落ち度であります。申し訳ありませぬ」

「良い汝らが良くやってくれているのは良く分っている。しかし、防衛線が有りながら何故3層まで抜けられた?」

「冒険者共に一人凄腕の魔術師が居りまして、その魔術師に大規模破壊魔術を使われたのであります」

「大規模破壊魔術?種別は?」

「恐らくは、広域の闇属性と我輩の部下が申しておりました。その魔術が戦列に直撃し防衛線に一時的に穴が開きました。その隙を付かれ冒険者の一部に防衛線を抜かれた次第であります」


 大規模破壊魔術か……報告に有った2層で怪我人と死亡者が多いのはこれが理由か?


「ふむ、最終防衛線が大部屋なのが仇になったな」

「でありますな。直ぐに体制を建て直し3層に兵を出すべきだったのですが、奴等の追加の攻撃も有って、とても兵を割ける状況ではなく防衛線を維持できなくなる可能性がありましたので……」

「防衛線を崩して冒険者達がこの3層の広間に流れ込こんできた場合、あの惨状の再現となったであろうな」


 リリアは沈痛な面持ちを更に歪め辛そうにしている。

 恐らく、リリアが話していた居城での惨劇を思い出しているのだろう。


「オーカス卿、戦線を維持しなければいけない状況だったのは分りました。ですが、その3層に降りた冒険者共を放置しても結果は同じではありませんか?姫様は今回の戦いで傷を負われました。姫様が傷を負われる状況を作るなんて親衛隊の存在の意味がありませんよ?」


 今まで報告を黙って聞いていたメリジューヌさんが少し怒ったようにオーカスさんを問い詰めだした。


「メリジューヌ殿が仰る事もごもっとも、故に我輩は最終防衛線に奴等が到達した時点でオルカスを姫様の護衛として3層に向かわせました」

「オルカス殿のみですか?確かにオルカス殿は親衛隊では強い方でしたが、それでオーカス卿は護衛が足りると判断されたのですか?」


 段々、メリジューヌさんの目付きが険しいものに変わっていく。

 確かにメリジューヌさんが言っていることは正しい、いくら凄腕でも要人の護衛に一人というのは心許ない。


「まさか我輩もそこまで愚かではない。オルカスには姫様を私室迄護衛し、そのまま姫様を守るように命令をしていましたので安心していたのでありますよ」

「確かに、我の私室の防御障壁ならば耐え抜く事は可能であったな。汝がそう想定してもおかしくはない」


 リリアは納得したようだが、メリジューヌさんはまだ納得していないようで、オーカスさんを睨みつけて問いかける。


「しかしですね。姫様が傷を負われたという事実は有ります。親衛隊の方々はその点をどのようにお考えですか?」

「まさか、姫様が3層最初の部屋にいらっしゃるとは思いもしなかったのであります」

「うむ、召喚に適した部屋があの部屋しかなかったのでな」

「ですが、そもそもに3層に抜けられた時点で親衛隊の――――」

「もう良い。今回は我が居た場所に問題が有った。メリーが私を思う気持ちは有り難いが、オーカス達に我が傷を負った責は無い」

「姫様がそう仰るなら私からはもう何も言う事はできません。出すぎた事を言いましたオーカス卿。お許しください」


 メリジューヌさんはリリアに窘められると、瞬と萎らしくなりオーカスさんに謝った


「いえ、メリジューヌ殿の仰る事はごもっとも、責任は我輩達親衛隊にあります。メリジューヌ殿にはいつも心労をかけて申し訳ないですな」


 オーカスさんも気にした風もなく自分達の責任を認めた。

 メリジューヌさんは親衛隊をあまり良く思ってないようだし、この二人はもしかするとこの様な事を頻繁にやっているのかもしれない。


 そして、メリジューヌさんの親衛隊の責任追及が終わった所でリリアが口を開いた。


「だがなオーカスよ。我を守ってくれようとしたのは良いが、それでは広間の民達に被害が出ていた可能性があったぞ」

「広間にはわずかにですが待機戦力が居りましたので、しばらくは持つものかと思っておりました」

「だが、それでは民に被害が出たであろう。汝らが善戦してくれたのは分るがな、我を守って民に被害が出ては意味がない。オーカス、汝は今回の結果踏まえて戦力配分と防衛線の布陣を再構築をせよ。」

「ハッ!この軍議が終りましたら直ぐに取り掛かります」

「うむ、宜しく頼む。細かい戦況の内容は後で聞くとしよう。次の報告を聞こうか、ベアトリス魔獣達の怪我はどうだ?」

「んにゃあ、まだ駄目ですにゃ。マルの話にゃと一番傷の軽い子達でも後10日は戦いにゃ出せにゃいです」


 マルというのはマルトメントさんだろうか?魔獣の傷まで診れるのかマルトメントさん


「やはり厳しい状況であるな。獣人達の様子はどうだ?今回は大分被害が出たようだが」

「士気自体は高いですにゃ。ただ、ずっと此処に居るので鬱憤が溜まって暴れるのがちらほら居いますにゃ」

「ふむ、そういう者はグシオスの偵察部隊に回させよ。外の空気を吸わせて少し落ち着かせるのだ」

「姫様がそう言うにゃら犬野郎の部隊に鬱憤溜まってるにゃつは回すにゃ」

「うむ、宜しく頼む。してベアトリスよ、グシオスが敗残の冒険者を追っていると言っていたな?どの程度逃がした?」

「リーダー格らしき、白い鎧のにゃつととデカイ魔術を使った魔術師と鉄鎧2人だにゃ」

「ここの構造を知られた以上、出来れば全員始末して欲しいが……いや、無駄か冒険者共は死んでも復活してくる。死ぬ前の記憶が残っている可能性が高い」


 リリアの言っている事は間違っていない。

 この世界で死んでも、AO(アバターオンライン)のプレイヤー達は、僕の世界で悔しがっている程度で記憶を失う訳ではない。


「んにゃ、じゃあ犬野郎の追撃は、まったくの無駄骨という事かにゃ?」

「その可能性も有るが、奴ら不死身なのに撤退したのが気になる。何か死ねば不都合が有るやもしれるぬから、一概に無駄とも言えんな」


 リリアは良い線を行っている。

 確か、AOはレベルが高くなればなるほどデスペナルティが強くなったはずだ。

 しかも、装備ロストも有ったはずだ。


 しかし、これはやはりAOの事をリリア達に一度機会を設けて伝えた方が良いな……ただ僕自身AOについては少し情報整理する必要がある。

 一度落ち着いた時に、AOについて頭の中の情報を整理しよう。

 その後、整理が終った情報をリリアには伝えれば良いだろう。


「まぁ、後はグシオスが戻ったら我自ら報告を聞こう。次はコッセル。バリケードの修復は可能か?」

「そうっすねぇ。木材がもうギリギリっすけど、修復だけなら可能だと思うっす」

「分った。早急に頼む。足りぬ資材は木材以外あるか?」

「全体的に資材は何もかもが足り無いっすけど、それよりツルハシやらスコップの道具類が大分痛んできてるっすね」

「ふむ、まだ持ちそうか?」

「どうすかね。後、1月はなんとか持たせて見せまっす」

「苦労をかけるな宜しく頼む。次にメリー、エルフの国からの支援の事を皆に説明を」

「はい姫様。私がエルフの国に――――」


 メリジューヌさんは広間に向かう途中にリリアに話していた事を議場の皆に話した。

 その話を初めて聞いた面々は沈黙してしまった。

 それもそうだろう。

 この遺跡を出て皆で助かる方法が無くなったと言って良い事態なのだ。


 そして、皆が黙り切ってしまった時にリリアが明るい声で口を開いた。


「確かに民達を逃がす手段は無くしてしまったが、幸い食料の支援は来る。しばらくは篭城して様子を見ればいいのだ」

「我輩、姫様がツルギ殿にこの遺跡の迷宮化を命じたのを不思議に思っていましたが。そういう理由でありましたか」

「でも、今回の襲撃だけでこんにゃに被害が出たにゃに次奴等が来たら耐えれるか分らないにゃ」

「確かに奴等は脅威ではあるが、その為にツルギを我が召喚したのだ。そう悲観してはならぬ。のうメリーよ」

「そうですね。ツルギ様は私と戦い無傷で済んでいるような猛者です。しかも私に勝っています。皆様そう悲観し過ぎる事もないかと」


 やめて!リリア!メリジューヌさん!その期待は嬉しいけど、ちょっと敷居が高すぎてプレッシャーを感じる。

 後無傷じゃなくて、実際は激痛に襲われてる!多分何処か見えない所が傷付いてると思うの!内蔵とか。


「メリーの言うとおりだ。10日も経てばメリーの傷も回復し、魔獣達の傷も回復するかもしれぬ。希望を失ってはならぬ」

「そう、うまく行くかにゃ~」

「10日間我輩達とツルギ殿でやるしかあるまいて」

「うむ、前線に出る者達には苦労をかけるが宜しく頼む。他報告がある者は居ないか?」


 リリアは今とても、明るい声で皆に希望を持つように言っている。

 だが、リリアのこのポジティブ振りは恐らく空元気のような物だろう。

 本心では、悲観して泣きたいに違いない。

 彼女は僕とメリジューヌさんの前では涙目を見せていた。

 実際このままでは全滅を免れえぬ状況だ。涙目にもなるだろう。

 だが、指揮する者が悲観していたのではその下の者達も悲観してしまう。

 故にリリアは悲観する訳にいかない。

 家臣達の前では気丈に振舞わなければいけない。

 無理にでも希望を持たせて皆の士気を維持しようとしている訳だな。

 一見尊大で高圧的なイメージが有り残念な子に見えるがその実は、自分の治める民と部下達を第一に思う良い子だ。


 そして、僕はメリジューヌさんと同じ理由で、まだ会って一日も経っていない彼女に心を引かれ始めているのだと思う。

 多くの守るべき者を守る為に気丈に振舞う姿を見て、リリアの空元気を元気に変えて上げたい。

 そう思った。


 ならば僕は出来る事を全てやる!

 あの名無しの魔神が言っていた様にこの遺跡にガチガチの防衛体制を作り誰も彼女達に手を出す気を無くさせる。

 帰るのはそれからだ!


 そうと決まれば必要な物が有る。

 それを用意してもらおう。


「報告ではないけど、リリアお願いがある」

「なんだ、申してみよ」

「僕に割り振られた仕事をする上で必要な物が有る」

「言ってみよ」

「まずはこの遺跡の各階層の地図が欲しい」

「む、遺跡の地図は1層2層3層全てか?」

「出来れば全て欲しい」

「1層は単純な構造ゆえに地図は作っておらぬ。それでも必要か?」

「どうしても必要な物なんだ。頼む」


 これは迷宮化を進めるにも迷宮を防衛するのにもどうしても必要な物だ。


「分った。直ぐ作らせよう。2層と3層は我が使っている物を渡す、後で私室より取って来よう」

「ありがとう。それとこれはもし有ればだけど、周辺地形の地図はあるのかい?」


 これは迷宮化が完了し防衛が安定してから行なう先を見据えた布石の為だ。


「手持ちには今無いが、それもどうしても必要か?」

「あぁ、これからリリア達が生き延びる為にどうしても必要なんだ」

「分った。我の魔力が回復し次第、使い魔を使って周辺の状況を確認する。その後に我自ら描いてやろう光栄に思え」

「リリアが作ってくれるならもう1個お願いが有る。我侭になってしまうけれど、出来れば土地の高低差なんかも明確に表記してくれると嬉しい」

「本当に我侭な奴だな汝は……だが、可能であればやってやろう」


 リリアには悪いがこれは最低限必要な物だ。

 我侭を言ってしまったが仕方ない。


「ありがとう助かるよ」

「必要な物であれば仕方あるまい。他必要な物は無いか?」


 他必要なの物は……当座はこれで済むけど、今後を見据えれば必要なものが有るな。

 この迷宮は3層歩いただけでも広大さが分る広さだ。

 僕だけじゃ手が足りないはずだ。

 指揮権も貰えるみたいだし、人員も貸してもらおう


「じゃあ最後のお願いなんだけれど1層の地図が完成したら、何人か足の速い兵と土木作業をやれる人を貸して欲しい」

「ふむ、元々汝にはどこかの部隊を指揮させる予定であるしな。分ったでは機動力の一番あるベアトリスを――――」

「ふざけんにゃ!!」


 バンッと木テーブルを叩いてベアトリスさんが席から立ち上がり、リリアの言葉を遮った。


「姫様がなんでも許すからにゃんでも要求して、あたしお前みたいな新参者の部下にはにゃらない、分を弁えろ人間」


 ベアトリスさんは僕を見て猫特有の「フーッ!」という威嚇音を出している。

 こういう所は猫なんだな。


 しかし、少し過剰な要求をし過ぎたかこれは、確かに新参者が色々要求したのはまずかったな。

 だけど今要求したものはこれから迷宮作成と防衛に最低限必要なものだ。

 ここで要求を取り下げるわけに行かない。

 理由を説明して分ってもらおう。


「あの、確かに新参の僕が――」

「愚か者め、姫様の決定は絶対である。文句が有るのなら我輩の剣の錆びにするぞ。獣人」


 僕が理由を説明しようとした所、オーカスさんが立ち上がり静かな怒りを篭った声でベアトリスさんを睨みつける。

 ああ……いけない雰囲気だこれは。


「オーカスのおっさんは、こんな新参者にデカイ顔されて悔しくにゃいのか?それにソイツの座ってる席はあたしの席にゃ、こんにゃ奴は末席に座らせればいいにゃ」


 あー。なるほど定期的に睨みつけてきたのはそれが原因か。

 とりあえず席を譲って……駄目だなこの怒り方を見るにもうそれじゃあ収まりそうにない。

 どうするか……


 その時大きなため息を吐いてリリアが口を開いた。


「許せベアトリスよ。今はもう通例どおりの慣習なんぞに習っていては事態を打開できぬのだ。」

「でも、酷いにゃ!あたし達半獣人はみんにゃ姫様に認められたくて付いてきたのに……あたしはその席に座れることを誇りに思っていにゃのに」


 半獣人?ベアトリスさんが人間とあまり姿が変わらないのは、その名前に理由が有るのだろうか?


「黙りなさい駄猫、姫様が態々許せと仰ったのです。承服しなさい。後、その席はツルギ様が座るのが正等です。ツルギ様は私に勝ったのだから正しい序列です」

「そんにゃ……酷いにゃ!メリーちゃんは友達だと思ってたのに!皆あたしを裏切るにゃあああ」


 泣きながら叫んでベアトリスさんは部屋から出て行った。


「すみませんツルギ様、うちの駄猫が失礼をしまして」

「あぁ、いえ新参の僕が無理な要求を通し過ぎたんです。ベアトリスさんが怒られるのも無理は無いかと」

「我も席の件は短慮であった」

「あの駄猫が悪いのです。その席が欲しければツルギ様に決闘でも申し込めば良いのです」


 決闘ってそんなもの申し込まれても困るんだが、それにこの席にそんな拘りがあるわけでもないし……

 しかし、決闘で座る位置が変わるっていうと強さで座る位置が変わるのか?これは


「席ってやっぱりこれ序列みたいなものがあるんですか?」

「ええ、魔族が会議を行なう場合は最上位の者が上座にその左右に序列順に座っていくのです。」

「序列というと、軍の階級とかですか?」

「そうですね。指揮系統上からと個人の戦闘能力が指標になります」

「指揮系統は分りますけど、戦闘能力もですか?」

「はい。魔族は個人の戦闘能力を重要視する文化ですので、もし階級が同じ場合は戦闘能力を参考にします」


 ベアトリスさんがあのタイミングで怒ったのはそういうことか、僕の配下になったらもうこの席に座れなくなってしまう訳だ。

 それに加え、戦闘能力は僕がメリジューヌさんに勝ったので僕の方が上という事になってしまった。


「なるほど。まぁポッと出の僕に座られたら怒るのも当然ですね」

「うむ。メリー、ベアトリスをあまり悪く言うな、アレの怒りは正等だ。我が悪い」

「まぁ、獣人の若いうちはあんなものかもしれませんな。逆に考えれば姫様への忠誠が高いからこその怒りと言え無くもないですしな」

「ですが……ベアトリスは姫様の決定に口答えをしました。ですので……」


 おや?メリジューヌさん出口の方を見てソワソワしている。

 ベアトリスさんは、メリジューヌさんの事を友達と言っていたし、メリジューヌさんもなんだかんだ心配なんじゃないだろうか?


「メリー命令だ。ベアトリスの元に行き、我が謝っていると伝えてくるのだ。それとツルギの配下にするという話も無しにすると伝えよ。」

「はい。姫様の命令なら仕方ありませんね。行って参ります」


 メリジューヌさんは困ったような嬉しいような判別しにくい顔で部屋を出て行った。


「ごめん、リリアもう少し此処のやり方に慣れてから進言するべきだった」

「良い。ツルギも必要な事だから我に進言したのであろう?汝が気にする事ではない」

「そう言ってくれると助かる」


 これはゲームとは違う。事を起こす場合は、人間関係も気にしてばやらなければいけない。

 次からは気をつけよう。


「しかし姫様、我輩の部隊は重装故に足が遅い、後は足の速い者となるとグシオス本人とその配下の者となりますが、如何されますか」

「グスオスか、あれはベアトリスに比べて足は遅いが持久力も有る。適任であろうな。ツルギ兵は何人欲しい?」

「えーっと、2層の広さを僕はまだ知らないから何とも言え無いけれど伝令用に2~3人は最低限必要だと思う」

「では、グシオスと配下達を丸ごと貸し与える」

「丸ごとって……あんまり多くても僕じゃ制御できないかもしれないぞ?」

「グシオスの正式な配下は5名程度だ。あれ等はまとめて運用した方が良い。巧く使ってみせよ」

「分った。やるだけはやってみるよ」

「良し、ならば後は土木作業の者は何人欲しい?」

「そっちは一度遺跡の規模を確認してからになるな、でも本格的にやるようになったら出来るだけ人手が欲しい」

「では、必要になった時はコッセルの方に直接伝えよ。コッセル、ツルギに力を貸してやってくれ」

「ういっす。自分等はよく作業で出払っている事が多いんで用事がある場合は事前に広間の受付に言っておいて欲しいっす」

「分りました。コッセルさん、これからご迷惑をかけることも有るかも知れませんが、宜しくお願いします」

「ういっす」

「うむ、では他に議題がなければ本日の軍議は解散とする。何か他に有る者は居るか?」

「我輩からはありませぬ」

「無いな」

「ないっす」

「うむ、皆ご苦労であった。本日の軍議は解散とする」


 リリアがそう告げるとオーカスさんコッセルさんは別れの挨拶をして部屋を出ていった。


「で、僕はどうすれば良い?」

「ん?ああ、今日はもう休んでよいぞ」

「あーうん。で、僕は何処で休めば良いんだ?広間で雑魚寝する感じか?」


 避難している人達は広間に雑魚寝しているようだし、僕だけ特別という訳にもいくまい。


「そうであったな。汝も前線に立って指揮をする訳なのだからな個室を与えてやろう」

「え、良いのか?避難している人たちに悪くないか?」

「戦士階級で尚且つ指揮を執る者が広間で雑魚寝だと兵士や民達に示しが付かんであろう」

「そういうものなのか?」

「そういうものだ。まったく、汝には色々と教えねばならん事も多いな。仕方あるまい我自ら明日から色々教えてやろう。有り難く思うが良い」


 うん、やはりこの子は良い子だ。

 なんだかかんだ言いながら面倒を見ようとしてくれる。

 素直にお礼を述べておくべきだな。


「有難う助かる。しばらくはリリアの優しさに甘えさせてもらうよ」

「べ、別に汝の為にではない。わた……我等の為になるから教えるだけだからな!」


 しかも少しツンデレ傾向があるな。

 僕割りとツンデレは嫌いじゃない。猫好きはツンデレ好き。


「じゃあ明日から宜しくむ。リリア」

「うむ、汝の働きに期待しておる」


 こうして僕の迷宮の守護者生活が始まった

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