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よりによって僕が……ネットで体験談を聞く度に「こんな事にならないように、僕は外に出ないでおこう」って誓っていたのに、よりによって僕が……
最悪なのはカツアゲされるって事じゃない。だって、ポケットの中には五百円しか入ってないんだから。最悪なのは、相手がその事実を知って激高したら……その時は、僕の体もプライドも、すべてがグシャグシャにされる……
自分の無力さと恐怖に顔色をコピー用紙と同じにした僕は、胸ぐらをでかい奴に捕まれ、高架下の砂地に連れ込まれた。不法投棄の場になっているらしく、四隅に壊れたテレビや何が入っているのかわからない段ボールが積まれている。
僕がその中心にいた。で、正面に三人、奴らがいる。
「ねえ、どこの中学? こんな時間に何やってんの?」
僕は金魚のように口をぱくぱくさせた。連中にとって幸いであり、僕にとって地上最悪の不幸であった事に、表の通りに人通りはまったくなかった。
「煙草代貸して欲しいんだけどな」
「ちゃんと返すから」
態度と口調、そして何よりその荒んだ目の中で、「こっちはいつでもキレる準備がある」という凶暴性をこれ見よがしにひらけかしている。反撃して来ないという太鼓判が押してある奴に対しては、どれほど威圧的に振る舞っても許されるという感覚の持ち主だ。僕の母親と同じさ。
石になっている僕は何も堪えられない。氷のように冷えた睾丸が体の中に二十センチも潜り込んでしまったかのようだ。
例の一際体格のいい、というか太った奴は、その腹周りの肉からして明らかに特定の栄養素が足りてないらしかった。瞬間湯沸かし器並みの速度でブチ切れると、一歩前に出て片手で乱暴に僕の髪を掴んだ。
「どうなんだ、てめえ!」
毛根を引っ張られて僕が声にならない悲鳴を上げると、そいつは突然頭を下げて僕の目の前で土下座した。突然奴の中で慈愛が目を覚まし、僕に許しを乞おうとしたのだろうか。
もちろん、そうじゃなかった。デブの隣にいた黒人ファッション(そう言えばこいつはそれまで一言も口を利かなかった)の男が振り返った瞬間、ひゅんと空気が唸りを上げ、その顔面に何かが叩き込まれた。




