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8-4

 設問1

僕が兄貴の下で暮らした場合、起こりうるすべての現象にチェックを入れよ

□ 1.生まれ変わったように性格が明るくなって学校に通い始め、友達を百人作って毎晩別の彼女をラブホテルに連れ込む

□ 2.環境の変化に堪え切れず発狂、包丁を持って家を飛び出した後は記憶がなく、気が付くと鉄格子付きの病院にいる

□ 3.何の変化もなく引きこもり生活を続行する。

 


 ……まあ、2か3ってところだろう。いや、もう一つある。



□ 4.津田海里の事を永久に後悔し続ける。



 これもチェックを入れるべきだよな。

 僕は想像してみた。四十年か五十年後のベッドの上で、あるいはもっと近い未来、車にひかれるとかして臨終の際となった僕が、「生まれて来なきゃ良かった」以外の事を考えるとすれば、それはやはり海里の事ではあるまいか。

 その時思い浮かぶのは、彼女の何だ? どの事だ? 多分、楽しかった思い出じゃないと思う。それがよぎったとしても一瞬で、後は彼女を裏切ったという底知れぬ後悔が僕を突き落とすだろう。永遠に救済の訪れない、深い暗闇の底へと転がり落ちて行く。



 この時、僕は気付いたんだ。彼女との思い出が、僕の人生で何より大切なものになっていたって。笑顔が、声が、励ましが、そのすべてが今なおハートの中で輝き続けている。

 裏切りは確実にそこから光を奪ってしまうだろう。何とか形になりかけた……きっと、海里の姿を描こうとしていた、僕のちぐはぐなステンドグラスは、再び砕け散ってバラバラになってしまうだろう。

 ああ、そうか。前ほど僕が「バラバラである事」、つまり自我の曖昧さってのか、自信の無さに苛まれなくなったのは、彼女が接いでくれたからだったのか……



 ちょっとだけ、体がうずうずして来た。体の重さが多少薄れ、じっとしていられなくなる。

 とにかくあの男に会いに行こう。あの人なら的確な答えを教えてくれる筈だ。諦めるにせよ何にせよ、まずはそれが先じゃないか。



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