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つまり、僕は彼女の何なのか? 訝しげな事務員に対し、あらかじめ用意しておいた答えはこうだった。
「友達なんです。ネットカフェで倒れて、そこの店員にここに運ばれたって聞いて」
知り合いである事を可能な限りアピールすると、幸い向こうは信じてくれた。病棟の四階、四○五室にいると教えてくれ、更にそこへ向かう通路も説明してくれた。
「係りの者がご案内します。そこに座ってお待ちを」
言われた通り、長椅子に座って僕は待った。
病院は嫌いだ。消毒液の臭い、白い廊下と重苦しい空気。天井の明かりを反射した床に蜃気楼みたいに逆さの僕が映っている。
ここに来て突然、勇気が萎えるのを感じた。このまま会わずに引き返したくなり、足が竦む。現実の彼女を知るのが怖くなったんだ。この時の抵抗の正体については、後に気付く事になるんだけど、まあ今は先を続けよう。
事務員はどこかに電話をかけていた。それが済んで数分もすると、若い医者がやってきた。インターンってやつだろうか、まだ大学生くらいに見える男の人で、白衣がいかにも似合ってない。両側と胸の三つのポケットから色んな器具が覗いているところを見ると、まだ状況に応じてどれを持ち歩けばいいかもわからないと見える。
彼は受付で話を聞いた後、事務員が手で示した僕の方へ向き直った。思わず弾かれたように立ち上がって頭を下げる。
「津田海里さんのお友達で?」
「そうです」
おっと、帽子を取ってなかった。手で取り、胸の前に握り締めた。
「僕はここの医者で西堂と言います。津田さんの様態については僕から説明しますので、こちらへ」
一緒にエレベーターを上がり、患者や医者が行き交う廊下を更に進むと、とうとうその部屋の前にたどり着いた。僕にとって運命の女がいる部屋に。
再び足が止まってしまったが、西堂さんが先に入ってしまった。僕だけがここにいるわけにはいかない。
中は六人部屋で、埋まっているベッドは三つだけだ。そのうちの一つはクリーム色のカーテンで覆われていた。他の二つのベッドに横たわっているのはおばさんとじいさんだ。どっちも僕を見たものの、知り合いじゃないとわかるとすぐに興味なさげにテレビと雑誌に視線を戻した。




