7-3
ああ、全然気がつかなかったけど、もう夏休みなんだ。小学生らしき子供たちがはしゃいでいるのを見て、ふとその事を思い出した。もうどのくらい祝日祭日と無縁な日々を過ごして来ただろう。
しかし、そうでなければヤバかったよな。平日に僕みたいなのがうろうろしてたらあっと言う間に補導されてたんじゃないか。
しかし、補導ねえ。これも何だか不条理だと思わないか? 学校にも行けない、補導員のせいで外にも出られない。社会は引きこもりを永遠に閉じ込めておきたいんだろうか。納屋の置物みたいに。
人が多いところに出ると例の強迫観念というか、「嘲笑幻聴恐怖症」みたいなものがひどくなる。僕は帽子を目深に被り直し、早足にその場を去った。途中、海辺へ向かうカップルの背に密かに敬礼を送る。幸せになれよな。
後は徒歩だが、十五分の距離の筈だ。潮風の漂う町に出た僕は、地図をひっくり返したり真っ直ぐにしたり、あるいは看板を辿ったりした。日が昇ると共に人と車の流れが増え始め、静かだった町に喧噪が溢れ出す。オンシーズンのせいだろう、パーキングに我先に入る車をよく見かけた。
日中に町に出る事がなかった僕は、次第に焦って来た。人ゴミは苦手なんだ。
平均時間の倍近く、つまり三十分くらいかけて、とうとう病院を見つけた。入院施設を備えた巨大な白亜の建物がそびえている。
腕時計を見る。朝八時。まだ外来の受付すらしていないんじゃないか。とりあえず胃が無精無精ながら活動を再会し初めていたので、コンビニでサンドイッチを買い、海まで戻った。
防砂壁ってのか、砂浜と町を隔てるコンクリートの壁の上に座り、朝食を食べつつ海を眺める。今日もいい天気だ。ここも昼頃になれば人でいっぱいになるだろう。
時間を潰すのはそれほど苦じゃなかった。海辺でヤドカリを見つけたり、何故砂浜には必ずイチジクカンチョーが落ちているのだろうと疑問に思ったり、駐車場の物陰で着替えている女の人を見つけてうわあああ! と思ったら下にすでに水着を着ていてガッカリしたり(こればっかりだな僕は)、まあ一人ぼっちではあったけど、結構退屈せずに過ごせたんだ。
海はいいよな。つくづくそう思ったもんだった。
昼前になるともう日当たりのいい場所にはいられなくなり、僕は病院に戻る事にした。九時五十二分。もういいだろう。
病院は、まあ大手はいつでもそうだが混雑していた。視線や囁き声が聞こえないよう、なるべく意識を反らしておき、受付窓口へ向かう。
海里との会話のおかげで人と喋るのはそこまで苦痛じゃなかったが、関係を説明するのは難しかった。




