表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/116

6-7

「後は兄ちゃん次第だぜ」

 僕が受け取ったレシートを見下ろしていると、彼が軽く肩を叩くのが感じられた。

「正直感心したぜ、兄ちゃんがここまでやる気のある奴だったとはな。ボトルをやった甲斐があるってもんだ」

「あのボトルシップはどこから持ってきたの?」



 最後の疑問をぶつける頃にはもう、彼は自転車にまたがっていた。後ろ手に手を振り、答える。

「次の機会に教えてやるよ。じゃあな」

 一人取り残された僕は、もう一度レシートを見た。

 とうとうこの時がやって来たんだ。本心では恐れ、出来れば永久に来なくてもいいと思っていた、現実と相対する時が。



 急いで家に帰り、部屋に籠もってパソコンを起動する。ネットに繋いでルート検索サービスを利用し、レシートの病院を打ち込んだ。

 わずかな時間、読み込みが行われ、すぐに画面の地図上に黄色い線で最短距離が表示される。想像以上に遠い。自転車で行ける距離じゃないし、面会時間というのは昼間だけだろう。いや、そもそも赤の他人である僕が面会出来るのだろうか?



 本当はわかってる。理由を並べ立てて、行きたくないって事を正当化したいんだ。このまま何もせずに過ごし、ただ周囲の流れに任せようと……お決まりの無抵抗、無反応、無気力。

 地図を印刷してからパソコンの電源を落とし、布団の上で仰向けになると、両手の指を腹の上で組んだ。目を閉じた僕は、自分の本音を探ろうとした。頭の中ではなく、胸の中をだ。いつだって本当の答えはハートに隠されている。



 答えか。考えるまでもないよ。僕は恐れている。死ぬほど恐れている。海里に、本当の僕自身の姿を知られてしまう事を。

 学校に行く事も出来ず、友達もおらず、藁の犬のように無力な僕。彼女に軽蔑されたらどうすればいい? もし実際にボトルの外で出会った時、僕の姿を人目見た彼女が「ゲッ」ていう顔をしたら僕はその時、一体どうすればいいんだ? 



 今の海里との関係は結構良好じゃないか。彼女は僕のただ一人の友達と言ってもいい。ならもう、このままにしておくべきじゃないか。下手に突っつき回して、それでどうする? 海里だってそんな事はきっと望んでない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ