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馬鹿にされたようでムッとすると、ホームレスは笑ってその意思がない事を示した。
「人生一つくらい、必死になる事がねえとな。で、そのガキの事だが」
住宅街を抜け、僕らは大通り沿いの歩道に出た。まだ車の通りはほとんどなく、空気は澄み渡っている。
ホームレスは集積所を渡り歩き、資源ゴミを回収する傍ら、僕に話した。
「俺も多くは知らんぜ。名前もわからなかったくらいだしな。わかってるのは、会ってボトルを売った場所と、その後の事だ」
「その後って?」
「もうちょっと行ったらその場所だ」
これには随分驚いたもんだ。まさか現実の海里がこんな近くにいたのかって。もっともホームレスの言う「もうちょっと」はあくまでも彼の基準であって、僕からするとバターン死の行進も同然だった。
大通り沿いに街道を上がり続けると、徐々にビルが増えオフィス街に入る。都市の中心だ。
「もうちょっとって、まだ行くの?」
「好いた女の為だろが。弱音を吐くなって」
団地を出てもう一時間は過ぎている筈だ。すっかり夜は明け、ちらほらと早朝出勤のサラリーマンやOLの姿が見える。
こんな時間に寝間着兼用の格好でホームレスと走っている子供がいたら、そりゃあ随分目立った事だろうが、彼らは都会人特有の無関心さでこっちを見向きもしない。例えホームレスが馬に乗っていて、両手足を縛られた僕がそれに引きずられながら「お許し下せえ、お許し下せえ」って叫んでいたとしても、頭の中は仕事と請求書の支払いの事でいっぱいなんだろう。
不意にホームレスがブレーキを踏んだ。キッと一際甲高い音が上がり、停止する。もちろん僕もそれに倣った。
「ここだ」
ビルの合間にあるネットカフェの前で、「ネットカフェ ループループ 大曽根店 二十四時間営業」という看板が降りている。通りに面した壁は一面が強化ガラス製だが、ネットゲームやら新刊入荷やらを知らせるポスターをべたべた貼ってブラインドを兼ねている。その合間からカウンターと、奥の各ブースへ続く通路が見えた。こんな時間でも人が出入りしているのがかろうじてわかる。
「確かここで寝泊まりしてたぜ。俺が裏のゴミ箱を漁ってる時に会ったんだ」
僕は息を飲んだ。急激に鼓動が激しくなるのを感じながら。




