6-2
待ちわびたゴミの日がやってきた。気温はこの夏の頂点を極めようとしていて、早朝まだ薄暗いうちからすでに灼熱の気配を見せている。今日は車のボンネットで目玉焼きが作れるくらい暑くなるだろう。
その日はもう二度とホームレスに逃げられないように、僕も自転車に乗ってきた。今日は地獄の果てまで追い詰める覚悟だ。
団地の駐車場に自転車を止め、サドルに座って待つ事しばし。例によって油の切れたキコキコという音が遠くから聞こえてきた。腕時計を持ってる様子じゃなかったのに、何でこんなにいつも時間に正確なんだろう。半ば野生化してるせいで体内時計が異常に発達しているんだろうか?
僕が人類という種の可能性について思いを馳せていると、自転車を止めたホームレスが「やっぱり来たな」って顔をした。
挨拶を交わすと、空き缶を回収する作業の傍ら、僕の自転車に目をやる。
「いい自転車だな。俺のフロムヘル号ほどじゃないが」
油切れな上にぼろぼろに錆びている割には、随分ハイセンスな名前だ。
「そりゃどうも」
「で、何が聞きたいんだったかな?」
「僕にくれたボトルシップと、先客の事だよ」
「おお、そうだったそうだった。ちょっと待ってくれよ」
言われた通り、彼の仕事が終わるまで僕は大人しくしていた。内心、喉元まで迫った疑問で口がはちきれそうになりながら。
今週は缶が乏しいらしく、ホームレスは前回よりも早めに切り上げた。彼が自転車に戻ると、僕もその後を追ってスタンドを跳ね上げる。
早朝の町を二人並んでサイクリングしながら、僕らは言葉を投げ合った。
「で、そのガキだが、なんつったかな? ほれ、お前の言う先客だよ」
「津田海里。知らなかったの?」
「俺はお前の名前だって知らないぜ」
そう言えば、僕も彼の名を知らない。思えばおかしな関係だ。僕ら三人はボトルシップで繋がっているのに、お互いの事をほとんど知らない。
「それで、何の事から知りたい?」
「海里のこと」
「おうおう、必死じゃねえか」




