表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/116

3-4

 自己主張は得意じゃなかったが、とにかくホームレスから百五十円で買ったボトルシップに吸い込まれた事を話し終えると、彼女は呆れたように笑った。

「百五十円。百五十円か、あんた得したね」

「君も買ったの? あのボトルシップ」

「まあね。あたしん時は千円だったよ。あのおっさん、特別価格だとか最安値とか言ってさー」

「ここはどこなの?」

「いやあ、わかんないな。結構長く住んでるけど、詳しい仕組みはね」



 海里は海の方を見た。

「あんたも潜ってみたら?」

「泳げない」

「大丈夫、この海じゃ溺れないよ。もしかしたら底の方でヒントが見つかるかもね」

「ヒントって?」

「わかんない。でも、色んなもんが沈んでるよ」

 そう言うと自分の寝椅子に戻り、サイドテーブルに置いてあったラジオを入れた。ボブ・マーレイのキャッチ・ザ・ファイアが会話を断ち切り、海里は後はもう僕には見向きもせず、顔に帽子を被せた。



 僕に対する関心を使い切り、今はもうここに立っている少年はただの石ころと同じになったのだろう。僕としてもすでにそわそわし初めており、それがイライラに変わりつつあったので、訪れた沈黙には気が安らいだ。

 人と話すのは苦手だ。相手が気分を害し、突然怒り出したらどうしようって、そればっかりが気になるんだ。僕の母親がそうだったからね。



 僕は船の縁に近寄り、深く澄んだ海を見下ろした。この中に何があると言うのだろう。この世界の謎を解く鍵があるのだろうか? 僕にだって一応、探求心のようなものがあるんだ。なんだかワクワクしてきて、入ってみようって気になってきた。こんな興奮、どのくらいぶりだろう。

ラジオの音を掻き消されないよう、海里が背後で声を張り上げた。

「気を付けてね。迷子になっても、あたしは探しに行かないから」

率直極まりない挨拶に僕は「わかった」とか何とかぼそぼそ答え、階段を降りて行った。

 彼女が視界から消えた事を確認してからシャツとスウェットを脱ぎ捨て、薄青のボクサーパンツ一枚になると、そろりそろりと水中に入る。海水の冷たさは心地良く、日差しに焼けた肌を癒してくれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ