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自己主張は得意じゃなかったが、とにかくホームレスから百五十円で買ったボトルシップに吸い込まれた事を話し終えると、彼女は呆れたように笑った。
「百五十円。百五十円か、あんた得したね」
「君も買ったの? あのボトルシップ」
「まあね。あたしん時は千円だったよ。あのおっさん、特別価格だとか最安値とか言ってさー」
「ここはどこなの?」
「いやあ、わかんないな。結構長く住んでるけど、詳しい仕組みはね」
海里は海の方を見た。
「あんたも潜ってみたら?」
「泳げない」
「大丈夫、この海じゃ溺れないよ。もしかしたら底の方でヒントが見つかるかもね」
「ヒントって?」
「わかんない。でも、色んなもんが沈んでるよ」
そう言うと自分の寝椅子に戻り、サイドテーブルに置いてあったラジオを入れた。ボブ・マーレイのキャッチ・ザ・ファイアが会話を断ち切り、海里は後はもう僕には見向きもせず、顔に帽子を被せた。
僕に対する関心を使い切り、今はもうここに立っている少年はただの石ころと同じになったのだろう。僕としてもすでにそわそわし初めており、それがイライラに変わりつつあったので、訪れた沈黙には気が安らいだ。
人と話すのは苦手だ。相手が気分を害し、突然怒り出したらどうしようって、そればっかりが気になるんだ。僕の母親がそうだったからね。
僕は船の縁に近寄り、深く澄んだ海を見下ろした。この中に何があると言うのだろう。この世界の謎を解く鍵があるのだろうか? 僕にだって一応、探求心のようなものがあるんだ。なんだかワクワクしてきて、入ってみようって気になってきた。こんな興奮、どのくらいぶりだろう。
ラジオの音を掻き消されないよう、海里が背後で声を張り上げた。
「気を付けてね。迷子になっても、あたしは探しに行かないから」
率直極まりない挨拶に僕は「わかった」とか何とかぼそぼそ答え、階段を降りて行った。
彼女が視界から消えた事を確認してからシャツとスウェットを脱ぎ捨て、薄青のボクサーパンツ一枚になると、そろりそろりと水中に入る。海水の冷たさは心地良く、日差しに焼けた肌を癒してくれた。




