表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第五A章 アニスとシズア、公都パルナムで戯れる
96/328

5a-5. アニスはシズアに心配される

「アニー、おっそーい。どこまで行ってたの?心配してたのよ」


アニスが宿に戻ったシズアの第一声がそれだった。


そこまで待たせたつもりはアニスには無かったのだが、シズアにとってはそうではなかったらしい。


「ごめん、シズ。結構早く宿に戻って来てたってこと?」

「ええ、そう。ラウラ達はこの後も用事があるとかで。でも、約束通りに私をここまで送ってくれたからね。あと、残っていた食べ物を貰って来たけど、アニー食べる?」

「ありがと。でも、今は良いや」


背中から収納サックを下ろし、剣を枕元に立て掛けてからベッドに腰掛けると、アニスは装備を外し始めた。


「それで、アニーは店を出てから何をしてたの?」


アニスの様子を眺めながら、シズアが問う。


「えーと、まあ、色々あったと言うか何と言うか」


言えないことがあるために、シズアの顔色を見ながらどう話すかを考えようとしていたアニス。

最初は非常に大雑把な返事にしたため、当然、シズアはそれでは収まらない。


「何か私に言えないことをしてたの?」

「い、いや、そんなことはないよ。ちょっと説明が難しいだけで」


やっぱりシズアは鋭いなぁと思いつつ、早いところ本題に入ってしまった方が良さそうだと判断した。


「シズ、ラウラが泥棒の話をしてたのを覚えてる?」

「貴族ばかりが狙われているって言う泥棒のこと?」

「そうそう、それ。その泥棒のこと」


そこでアニスは上目遣いでシズアを見つつ、遠慮がちに口を開く。


「実はさぁ、さっき、その泥棒に会っちゃったんだよね」

「は?」


シズアは目も口も丸くしてアニスを見た。


「どうしたら、そう言うことになるの?」


シズアの疑問も(もっと)もだ。


「いや、まったくだよね。最初は、強い魔力を感じたから気になって行ってみたんだけど、そしたら貴族街から逃げてきた泥棒にかち合っちゃったんだ。本当にもう吃驚(びっくり)だよ」


アハハと笑いながらもシズアの様子を気にするアニス。

なるべく嘘は吐きたくないと思いながらも、流石に魔女の力とは言えずに魔力と言い換えた。途中の経緯も思い切り省いたので、突っ込まれると誤魔化し切れるか自信が無い。

だが、シズアはアニスを問い詰めると言うよりも心配そうな表情を見せた。


「泥棒に攻撃されたりしなかったの?」

「え?ああ、全然攻撃的じゃなかったよ。ちゃんと話は通じたし、悪い人じゃなかったし」

「どういうこと?」


怪訝そうな表情でシズアはアニスを見る。


「その泥棒は、盗んだお金を貧民街の支援者たちに匿名で寄付してたんだよ」

「それって、義賊ってこと?」

「そうだね。自分達ではそうは言ってなかったけど」


この辺りの話題になればシズアに話せないことはない。


「ふーん。でもどうして義賊なんてやってるの?」

「聞いた話では、最初は別の人がやってたんだって」

「別の人?」

「そう、お年寄りのお爺さんが二人で」


それは、アニスの作り話ではなく、キョーカ達から教えて貰った話である。勿論、それは二人の作り話ではないとアニスは信じている。


「お爺さんが二人で義賊?どうして?」

「理由は知らないらしい。今泥棒やってる二人は、元々は貧民街の支援者に頼まれて匿名で寄付している人を探してて、それでお爺さん達にたどり着いたそうなんだけど、バレちゃうと寄付できなくなるから黙っていて欲しいって、お爺さん達に頼まれたそうだよ。その時に泥棒をしている理由を聞いたんだけど教えてくれなかったって」


「それは分かったけど、どうしてそのお爺さん達から今の二人になったの?」

「出会って半年くらいしてから、お爺さんの一人が訪ねてきたんだって。相棒だったお爺さんが病気になってしまって泥棒を続けられなくなったって言いにね」


「それで、今の二人が引き継いだってこと?」

「うん、そう。それが大体五年くらい前の話」


「あれ?でも、泥棒による被害の発生は、この一年くらいのことだって、ラウラは言ってたような?」


その話はアニスには初耳だったが、心当りはある。


「最初は盗りに入るお屋敷が決まってたらしいよ。そこが一番の悪者だからって。でも、当たり前だけど、盗んでいくうちに金庫が空になっちゃったんだよ。それで、他の貴族の屋敷に入るようにしたんだって。それが大体一年前って聞いたから、時期が合うよね」

「合うには合うけど、それまで騒ぎになっていなかったのよね?なら、最初に盗まれてた貴族は盗難を届け出ていなかったってことよね」

「確かに」


一度でも盗難にあっていれば、普通なら憲兵に連絡しそうではある。


「何か、憲兵に言えないような後ろめたいことがあったんじゃない?盗みに入るのは、悪いことをしている貴族に限定していたようだし」

「そうした理由はあったのかも知れないにせよ、少し引っ掛かるわ」


「どこらへんが?」

「一つは、盗難を届け出ていないことだけど、もう一つ、お金を盗まれるままにしていたように聞こえることよ」


キョーカ達から話を聞いている時には流してしまっていたが、指摘されてみると確かに不自然な気がしてくる。

いや、それでも変ではない状況はありそうではあるが。


「盗まれていることに気が付いていなかったとか?」

「自分のお金が減ってることに気付かないなんてあると思う?」


「それだったら、そのお金が自分の物じゃなかったら?あ、ほら、先代の隠し財産で、そんなお金があることを知らなければ、減ってることにも気付けないよね?」

「それはそうだけど」


シズアは顎に手を当てて考える。


「なら、なぜ貴族が知らないお金のことを、泥棒は知ってたの?」

「うーんと」


アニスは頭を回転させる。


「泥棒のお爺さん達が先代の貴族の仲間だったとしたらどう?仲間にはどこにお金を隠してたかを教えてて、家族には伝えないうちに亡くなったとか」

「まあ、その可能性も無くはないけど、どうかしらね」


シズアには迷いがあるようだった。


「でも、盗まれた貴族が、盗まれたお金のことを知らなかった可能性はありそうな気がするわね」


半ば独り言のように呟くシズア。


「だよね?」


自分の考えが認められてアニスは喜ぶが、そこで別の考えが頭をよぎる。


「ねぇシズ、ここで泥棒のことを突き詰める必要はないと思うんだけど?」

「完全に他人事ならね。でも、アニーが関わってしまった以上、他人事とは言えなくなった訳だし、今のままで良いとは思えないのよね」


「駄目なのかな?」

「当たり前でしょう?義賊とは言え他人のお金を盗んでいることには変わらないもの。しかも貴族が相手よ。今は良くても、いずれしっぺ返しに遭うわ。そうでなくても、お金が貧民街に流れていると知れたら、どうなると思う?」


「あー、それは不味いね」


魔女であるあの二人が失敗するとも思えない、いや、何度か失敗したと言ってたことを思い出したアニス。

楽観視するのは無理そうな気がする。


「でも、どうする?」


特に策が思い付けないまま、アニスはシズアに尋ねてみる。


「元々お爺さん達がどうしようとしていたかを調べてみない?それが重要な気がするのよね」

「それってシズの勘?」


「そうね。敢えて言えば」


と、そこでシズアは眼鏡を取り出して顔に掛ける。


「名探偵シズア先生の勘ですっ」


眼鏡のつるに手を掛けて、澄まし顔しているシズア。


結局シズアであることには変わりないよね、とか、そもそも眼鏡する前の発言だよね、など、突っ込みどころはあるが、楽しそうなシズアに突っ込むのはよろしくないと控える。


「分かったよ、シズア先生。それで、調べるために何をする?」


「手掛かりになりそうなのは、最初に盗みに入っていた貴族の屋敷かな?アニー、誰の屋敷か分かる?」

「聞いてはいないけど、情報屋に会えば分かると思う」


「情報屋?」


新しく出てきた言葉にシズアは首を傾げてみせた。


「泥棒が忍び込む貴族の屋敷を決めるのに使っている情報屋のことだよ。最初の貴族の屋敷のことも知ってると思う」

「なら、早速、明日会いに行こう?」


「良いけど、その前に公爵様との面会の予約を取らないとだよ」

「ええ、勿論、そちらが優先ね」


シズアが頷いたのを見て、アニスも笑顔で頷く。


「アニー、ところでなのだけど」

「何?」


「アニーが夕食を中断してまで追い掛けた魔力の強い人のことは、どうなったの?」

「えっ?」


まさかそこに話が戻って来るとは想定しておらず、ドギマギしてしまうアニスだった。


まあ、そう簡単にシズアは誤魔化されないと言うことで...。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ