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0.3秒の王国 ―アルゴリズムの王と宰相―  作者: Furi0804
第2章 透明性の代償
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王の言葉(10)

星河互娛本社役員会議室。


役員会では、ガバナンス改革案が正式に議題に上がっていた。




啓文は賀総の前に資料を置いた。




「アンダーライターへの回答案です。ご確認ください」




資料には、重大インシデント時の対外発信に関する事前承認プロセス、トップマネジメント層の個人SNSも対象とするルール、エスカレーション手順が記されていた。




賀総は資料を黙って読み進めていた。


表情はほとんど変わらないが、指先がわずかに資料の端を握りしめているのが見えた。




テーブルには、未成年保護規程の強化案、危険企画制限の詳細、コンテンツ推薦ロジックの調整案も並んでいた。


外部取締役と法務部長は淡々と議論を進めている。


賀総の視線が一瞬、調整案の上で止まった。





企業経営者として、彼は現実を理解していた。




小鹿の家族が動いている。


上場審査は厳しくなっている。


社員の雇用。


クリエイターたちの生活。


広告主の信頼。


投資家、市場の目―――。




すべてが、もう「自分の作品」だけでは片付けられない規模になっていた。




賀総はゆっくりと息を吐き、ペンを取った。




「……俺が黙ることで、星河を守れるのなら」




彼は承認書に署名した。


王は王国を守るために、自分の声を削ることを選んだ。




ペンを置いた音が、静かな会議室に小さく響いた。


役員会が終了する。


賀総は静かに立ち上がり、会議室のドアに向かいながら、背中で小さく言った。




「啓文」




「はい」




「……星河は、まだ続くんだろう?」




啓文は答えず、ただ静かに頷いた。





(第2章 了)

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