エルフとの和睦交渉?
エルフとの条約成立です。
僕が、遅い朝ご飯をベンチで食べているとウォッタムが近づいて来た。
最近の、僕の食料事情は少し改善された。
ナナルが、木の実の精霊であるお蔭で霊樹の実が少し品種改良された。
結果、なぜか食パン風味の霊樹の実が出来てしまった。
パンもどきを食べられるようになったのは嬉しいが、外見が木の実なの
でなんとも言いずらい感覚を感じている。
ちなみに、そのパン味の木の実の小さい木を何本か育てている。
今後違う味の霊樹の実も登場してくるのだろうか・・?
(僕はリスか何かか?まぁ食料のバリエーションが増えたのは嬉しいことな
のだが・・何故だか素直に喜べない)
そんなことを考えていると、ウォッタムが僕の目の前に到着した。
そして、ある報告をしてくる。
「失礼します朗児様。また外にエルフ達が来ております。
如何いたしましょうか?追い払いますか?」
また来たのエルフ達?この前は、いきなりトリティアの根を燃やそうと
して来たから、僕あのイケメン族嫌いだなぁ~
「また、トリティアの根に攻撃してるの?」
そう聞くとウォッタムは頭を左右に振って違うという反応を示す。
今回は、襲撃では無いようだ。
「今回は、トリティア殿への攻撃に来たようでは無いようです。
数人のエルフ達が入り口前で座り込んでいます」
何その謎行動?ウォッタムをもう一度見るが、彼も何でエルフ達がそん
な行動をとっているのか分からないらしく肩を竦めている。
とりあえず、見てみようかな?
僕は、ウォッタムと共に入り口が見える高台の根に登った。
そこにはもうトリティアとナナルが居て入り口を見ていた。
「どう状況は?」
僕は、近くに居たナナルに聞いてみる。
「ずっと座り込んだままですご主人様」
状況に変化は無しか。にしても、エルフって皆あんなに美男美女揃い
なんだな。この前の襲撃犯達も美男なイケメンしかいなかったしな。
人の庭の入り口に座り込んで、何をするつもりだろう?
ん・・ナナル何木の実を銃弾ぽく飛ばそうとしてるの?
「え・・撃ってはダメですか?ご主人様」
この木の実の精霊さんにはアレをもう敵として認識してるのか
さて・・どうするか?
エルフside
今回の交渉には、ハイ・エルフの二人以外にも水・風・土の一族の族長
達も参加していた。
皆ずっと、魔地の入り口の前にシートを敷いて座り込んでいる。
これから、化物との交渉をするという事で皆緊張をして・・
「眠いんで帰っていいですか?」
いないエルフもいた。土のエルフ族族長チャルミル・アースモンドは
もはや交渉をする気は皆無のようだ。
「今回ばかりは、いい加減にするでゴザルよ。じゃないと叩っ斬るでゴザルよ」
風のエルフ族族長のウルド・ウィンゴートが苛立ちぎみにチャルミルを
叱るような口調で言った。
「でも~先輩、私・・交渉とか出来るようなタイプに見えます?」
そう聞かれ彼は、少しの間考えてから
「見えないでゴザルな・・馬鹿でゴザルし」
肯定の意見を述べてウンウンと頷く。
「そこまでは、私も言って無いですよね!てか先輩は私を馬鹿だと思って
たんですか?酷いですよ!」
ムスッと拗ねる彼女だが、ウルド以外の三人にも何を今更なと言うような
視線を一斉に向かれて今度は落ち込みだした。
「私・・使えない族長ですか・・なんかやれる事なさそうなので帰りますね」
そう言って立ち上がろうとする彼女の袖を
水のエルフ族族長のリアス・ウォーリザルクスがガッシっと掴んで
「どさくさに紛れて、落ち込んだフリで帰れると思わないでね」
と、笑顔で忠告して無理矢理彼女を座らせる。
チャルミルは「ちっ」と舌打ちしてから
「何だ気付いてたんですか先輩。さっすがですね」
そう言いその後は、黙って座っていた。
再びエルフ達に静寂が訪れた。
そして、ずっと黙っていたハレイドがゆっくりと口を開けて
「来た」
とだけ発言した。
他のエルフ達も空気の重みが変わったことに気づき
入り口を黙って見つめる。
やがて、入り口を塞いでいた大きな木の根が持ち上がり執事服を着た男が
現れた。エルフ達は、一瞬人間かと思ったがその男が放つ魔力で人外である
ことを悟った。
特に驚いて声を上げたのは、水のエルフ族族長のリアスだった。
「水の・・精霊・・しかもこの魔力の大きさ・・最上級精霊!」
言った途端に彼女は跪く。
彼女にとって水の精霊は崇めるべき対象だった。
「私は我が主よりの使いの者なので、そんなに固くなる必要はありませんよ」
男はリアスに頭を上げるように言う。
「ひゃい・・わかりました精霊様!」
リアスは瞬時に頭を上げて座り直す。
一様は会話が成立する相手なのを理解したハレイドは交渉を始めることに
した。
(私より数段強いなこの方は・・そんな強さの者を使者に使う主か・・間違い
なく化物だな)
「失礼だが、お名前を伺っても?」
執事服の男は、一切の淀みも無く答えた。
「我が主に仕える水の最上級精霊のウォッタムと申します
この度は何の御用でしょうか?」
ウォッタムと名乗った精霊は此方に用件を聞いてくる。
優しく聞いているようだが、彼の魔力が若干殺気を持って放たれているのが
ここからでも判る。
やれやれ、使者でこれなんだ・・この地の主の強さを考えたら馬鹿らしく
なってくるな交渉など。
「今回は、この前我が方の同族が仕出かした事への謝罪と今後お互いに平和的
に暮らせるように不可侵条約を結びたく参った」
化物に、ここまで強気で出ていいのか若干冷や汗を流す彼だがエルフの
代表として言い切った。
それを聞いたウォッタムは、若干後ろに顔を向ける。
木の管の様な物が彼に近づき何か呟いているのが微かに聞こえた。
そして・・・
「了解しました。主も別に怒っていないので不可侵条約を結んでも良いそうです」
何処で会話を聞いていたのかエルフ達は一斉に疑問を持つ。
ウォッタムはそれを察して説明してくれる。
「この、木の根やツタは私と同じく我が主に仕えている方の体の一部であるので
ここでの会話はその方を通して我が主に伝わっております」
(((((聞いてたんだ!)))))
エルフ達は一斉にそう思った。
ハレイドは彼の主に少し興味が湧き、会えないか聞いてみることにした。
「この地の主には、会えないのか?」
ウォッタムは即答で
「会えば・・皆さん立つことさえ出来ない状況になりますよ?会話も出来ないのに
会いたいですか?」
と逆に聞き返してきた。
当然か・・使者でこの強さなら我等は前に立つことなど出来まい。
今ですら、この地から流れ出る魔力に押しつぶされそうで座って会話
するのがやっとだ。
だが・・いずれ会ってみたいものだ。
「では、この前雨を降らせて頂いて有難うございます。とだけお伝えください」
それを聞きウォッタムは、分かりましたと言い中に戻ろうとする。
そこにリアスが声をかけた。
「あの~あの雨を降らせたのはウォッタム様が?」
もはや様付けである。だが、ウォッタムは頭を左右に振ると
「違います。それをやったのは我が主でしょう」
それを聞き彼女は・・
「水の最上級精霊以上に雨を降らせるような方・・その方も精霊ですか?」
だが、ウォッタムはそれも否定した。
「いいえ。主は精霊ではありませんよ・・生物的には人間ですね魔力は
神話級に大きくて強いですが・・」
その答えには、リアス以外のエルフ達も驚いた表情になる。
「「「「「人間!?」」」」」
ここに居るエルフ達は、皆この魔地の主を精霊か何かだと思い込んで
いたのでこのウォッタムの発言には大きく意表をつかれた。
「人間が・・あの大きな雨雲を魔法で作って雨を降らせた?それは・・
人間と書いて神様っておちじゃぁ・・」
リアスは心底信じられない事実を突きつけられてもはや考えることを
放棄していた。
それは、他のエルフ達も同様だった。
エルフ達が何も喋らなくなったのを、確認してウォッタムは中に戻って
行く。
エルフ達も、それに釣られてゆっくりと帰り始めた。
エルエーラだけは、立ち上がり黙って魔地の木の根で覆われた大地を見て
いた。
それに気づいたハレイドが声をかける。
「どうした。エリラ・・帰るぞ」
エリエーラは振り向き
「お父様・・私時々ここに来ていいですか?」
と尋ねてくる。ハレイドの答えは・・
「ダメに決まっているだろうが・・ここから半径数キロは立ち入り禁止にする
つもりだ。彼方が怒らないように近づいてはならぬ!」
そう答えて彼は娘の手を掴み歩だす。
だが、未だ彼女の好奇心が消えていないことを彼は知らない。
続く
火のエルフ族は復活するかな?