幕間
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「――ツヴァイ」
白い塔。天上が吹き抜けになっており、窓から月の光が差し込んでいる。少女は四方に置かれた神々の彫刻を見つめたまま、微動だにしない。
「機嫌が悪いのは分かる。しかし、質問に答えよ」
低く少し枯れた声が、光の差さぬ闇から問いかける。
「宝玉とは、如何様なものであった?」
僅かに口元がこわばり、声もいくらか硬い。
「……白き玉」
ツヴァイは感情の篭っていない声で、静かにそう言った。すると、声の主は不満そうな面持ちで、ツヴァイの背中を見る目を細める。
「それだけか?」
「適合者との共鳴は……」
そこでツヴァイは言葉を切る。表情が曇り、ゆっくりと後ろを振り向く。
「宝玉が適合者の身体のうちに宿る」
ツヴァイの瞳には、深い恨みと、嫉妬がある。声の主は、その瞳に僅かに怯む。
「ツヴァイ。しかし、我らとて、世界が消滅しても困る」
月明かりの元に、それは踏み出す。歩くたびに、カツカツと硬質な音が響く。
「……消滅? それ、どういう意味なの」
「知らなかったか? 聖玉の役割は知っているだろう?」
その言葉で、ツヴァイは理解した。
「均衡を保つ玉は、封印されて初めて、その役割を果たせるってわけね」
「その通り。制御されていない玉は、ただの危険因子にしか過ぎん」
ツヴァイは神の彫刻に向き直ると、深々と頭を下げた。
「……フフ。適合者が旅を終えた時、それが狙いってわけなのね?」
口元を歪ませ、後ろの老人に問いかける。ツヴァイは歪んだ思想さえも美学として捉えている。
「ツヴァイ、ランティア、ノイン、エルフ……後は私に任せておくが良い」
ゆらりと、影が揺らめく。闇の中にはキルデレット魔法学校を代表する面々がいた。影たちはゆっくりと頷くと、そのまま消えてしまう。
「……アハト、私もそろそろ通信をきるわ」
ツヴァイも影が段々と薄くなり、足が陽炎の様に揺らめいてゆく。
「世界の行方、ゆっくり傍観しましょう――」
普段のツヴァイからは想像出来ない様な高笑いが木霊し、いつの間にか消えてしまっていた。闇の中、アハトと呼ばれた老人も、口元を歪ませ、影を揺らめかせていた。




