愛しき貴方に喝采を!
電子書籍化記念
暴走二菜の話になってしまった
疲れた顔をしている旦那様(重要!)な終夜さんにはちょっとだけ申し訳ない気持ちがあったりするけど、後悔はない。
たくさん、たくさん撮った二人のウェディングフォトににっこりしていると、「二菜、わかってるね?」という愛しの終夜さんの声が耳元で響いた。
この『魔のウェディングフォトロード』なんて私の周囲で言われている出来事は、終夜さんが「君と同じ回数はお色直しをするよう」と発言した事で、私が暴走したことがきっかけになっている。丸一日かけて披露宴をやろうとした私に危機感を募らせた周囲が終夜さん抜きで相談した結果、ウェディングフォトは何枚でも撮って良いからお色直しの回数は三回までにしてくれ、と頼み込んできた。時間も指定してきた。
結果として月岡くんや風凪先生を始めとする、結婚式に参列予定の皆様はスタジオを一日貸し切り、しかも大量の婚礼衣装を持ち込んで「さぁ、満足いくまでやれ!」と終夜さんとカメラマンを連れてきた。状況を理解した瞬間の終夜さんは顔面蒼白だった。
もうそうなれば私を止められる人間がいるはずもなく、現在進行形でたくさん写真を撮っている。
「これが終わった後、一日空けてってやつですね!!全然おっけーです!!」
軍服姿の終夜さんを見ながら超絶ご機嫌の私は、なんだか悪巧みしている感じの笑顔にもきゅんきゅんしながら次の衣装を見繕っていた。
「僕も君のドレスを選びたいな」
「待ってください、先にこれ!!マント付きで行きましょう!きゃー、最高!!なんでも似合う!!国宝!!」
「君……ほんっとうに僕の顔が好きだね」
「大丈夫です、中身も愛してます」
キリッとした顔でそう言うと、「知ってるけどね」と溜息を吐かれた。遺憾の意!
「ふふ、可愛い膨れっ面」
ほっぺを突かれた。なんのかんの、終夜さんは私に甘いので、疲れてはいるけど優しくはされている。好みに合わない格好(王子様系とか)をさせた時は「月岡くんたちも覚えているといい。後悔させてあげるよ」と呟いていたけど、まぁそんなに大したことはしないだろう。写真撮ってるだけだし。
撮ったものの中から特にお気に入りをピックアップして引き伸ばしてもらうことにする。部屋にどどーんと飾るつもりだ。ちゃんと二人で写っているものだからか、終夜さんのお小言を免れた。大丈夫。終夜さんだけを切り取ったものは私個人のファイルに全部送ってもらうことにしたから!!終夜さんアルバムが潤う。
「ところで二菜。これは君に結婚式で衣装関連を任せる代わりに今僕が犠牲になっているという話だけれど」
「犠牲……」
「僕に何着着せたと思っているんだい。君は」
若干の恨み辛みが込められた言葉に黙った。続きを促すように、終夜さんを見る。
「だったら、その約束は無しで全部僕が決めて良いってことかな?」
「なんで二人で決めるって選択肢が出てこないんですか」
私がそう言うと、真顔で「僕の衣装を決めるのにどれだけの時間と金額をかけるか想像がつかないからだよ」と言った。
「それ込みで結婚式じゃないですかー!」
結局、終夜さんは帰宅後に、おじいちゃんに説得されて対外的な結婚式はちゃんと二人で打ち合わせをした。
ついでに、私はこの後日、終夜さんとの約束で一日空けた。そうしたら、一日ベッドから出してもらえなかった。
ひっどい目にあった……。夫はあんまり怒らせるべきじゃないです。
でも、終夜さんの写真はめちゃくちゃ最高だったので、写真の束を見ながら声をあげて賛美してしまった。年一くらいでまたやらせてくれないかな……。




