1411 星暦559年 赤の月 19日 消火用魔具(13)
一応扉代わりの板を少しずらして奥の箱の中も見えるようにはしたが、やはりはっきりとは見辛い。
なので心眼で箱を確認してみると、意外と炎の様子が心眼に浮かび上がっている。
心眼って魔力とかその元である魔素を視る能力だと思っていたが、炎も視えるようだ。
それとも、炎が燃えるときに魔素を使うとか、燃えた物の一部が魔素に変わるとか、何か効果があるのかね?
取り敢えず燃えている部分と、その傍の熱くなっている部分が心眼で明るく視える。
明るさ=熱量だと推定するなら、着火して暫くは温度そのものに関してはどちらの木箱の中もそれほど違いは無い様だったが、やがて壁紙もどきを付けた方の木箱の方で壁紙が燃え始めて、それで一気に木箱の中が明るく(熱く)なった。
『錫合金テスト1、錫合金テスト1』
奥の方の壁紙付き木箱の錫合金の火事探知機に繋いだ警報器が鳴り始めた。
「お、やっぱり熱感知の方が早いな」
『煙探知テスト11、煙探知テスト11』
やがて煙探知の方の試作品の警報器も鳴り始めた。これは壁紙付き木箱の手前の方の扉モドキな傍に設置したやつだな。
「燃えている部屋の中よりも、隣の部屋へ繋がる扉の傍の方が煙が多いんだね」
ちょっと首を傾げながらシャルロが言った。
『煙探知テスト10、煙探知テスト10』
奥の壁紙付き木箱に設置した煙探知の試作品も警報を鳴らし始めた。
「煙に関してはそれ程極端に違いはないんだな。
錫合金の方は隣の部屋で燃えているだけだと反応しないようだが」
『錫合金テスト3,錫合金テスト3』
壁紙無しの木箱の方も火をつけた箱側の警報が鳴り始めた。
「やはり壁紙があるとそれなりに燃え広がる時間に違いがあるようだな」
アレクがメモを取りながら言った。
「だな。
まあ、壁紙の種類とかでも違いがあるんだろうが。
木箱の内側に漆喰を塗って乾かしたのも作って試してみたいところだな。
薄く塗って送風の魔具でも使って急いで乾かせば、明日にでも実験できるんじゃないか?」
実際に家の壁に使う時なんかは乾燥させるのに外壁だったら数日から10日ぐらい、内壁でも数日は掛かると聞くが、ごく薄く塗る程度だったら一晩風を吹き付けておけば乾くだろう。
多分。
そんなことを話しながら様子を見ている間に、4つの木箱がごうごうを燃え上がってきた。
「もう火を消して止めるか?
全部の警報が鳴り始めたし、灰になるまで燃やす必要もないだろ?」
燃え残った部分を着火する際の材料に使えるし。
乾けばだが。
「そうだな」
アレクが頷き、シャルロが何か一言呟いたと思ったら次の瞬間に、全ての炎が消えていた。
おお~。
しかも先ほどまでは近づくと火傷しそうなほどに熱かった木箱自体の熱も消えているし、手を差し出してみたら燃えさしは濡れてもいない。
もしかして、温度を下げたのか?
蒼流って水を出すだけじゃなくて温度の調整とかも出来たのか??
まあ、水を凍らせるのだって出来るのだ。
空気中の水の欠片を氷の欠片にすることで温度を冷やすのも可能なのかな。
と言うか、俺たちが魔術で出来ることなのだ。
精霊ならば水という媒介を使わなくてもある程度の温度の変化なんて簡単にできるのかも。
「これ、冷却用の魔具の試作品で着火しないか確認するだけじゃなく、消火も出来るか試してみる?
実際には水で消すのが早いだろうけど、水を撒きたくないところで使える消火用魔具として売れるかも?」
同じく木箱の燃えさしを手に取っていたシャルロが提案する。
「そうだな。
折角だから試作品を幾つか試してみるか」
アレクが頷く。
火事探知の試作品を試した後に、火が付いた木箱の横にある木箱に冷却用魔具を付けた火事探知の魔具を設置したらどうなるか試そうと持ってきたのだが。取り敢えず幾つかそれを分解して消火用に使ってみても良さげだ。
消火出来る道具があれば実験の効率も上がるだろう。
シャルロが蒼流に頼めばそれでいいんだけどね。
『清早も濡らさない鎮火って出来るのか?』
そっと念話で相棒に尋ねる。
『その木箱程度ならね〜。家の本格的な火事とかだったら難しいかな』
清早が教えてくれた。
なるほど。火事には要注意ってことだな。
シャルロ(と蒼流)が居れば良いだけな話かもだが。
やっぱ蒼流は別格w




