1385 星暦559年 藤の月 28日 魔力認証結界(13)
「雷撃っぽいので体を麻痺させるのと、重力を大幅に上げて動けなくするのと、眠らせるのと、中の人間を魔力的な縄みたいのでぐるぐる巻きにする結界を展開するのと。
捕縛結界って言っても色々とあるね~」
昨日はまたもや魔術院に行って特許を色々と漁ってきた。
捕縛結界も軍事的利用が出来るから秘匿指定されていて、一般公開されてないかも?と心配していたのだが、警備兵が使うのや、貴族の屋敷とかの防犯用の魔具に使う為のとかが色々とあったので全部取り敢えず料金を払って写してきた。
防犯用なんだから秘匿しなくていいんかね??と思ったが、まあ考えてみたら国や軍と違って盗賊は魔術回路を研究出来るような素養のある人間はほぼいない。
そう考えたら、秘匿して特許料を取り損ねるよりは、金持ちにガンガン自分の屋敷の防犯用に使わせて金を儲けたいという事になったんだろうな。
「眠らせるのは流石にナイフを突きつけているのと突きつけられているのとで興奮状態にある人間には効きにくいだろうから、駄目だろうな」
いざとなれば、一瞬自分の腕にでもナイフを突き刺したら否が応でも目が覚める。
「ぐるぐる巻きにする結界は警備の人間が来た際に専用の解除用の魔具を持って来ないと当主側も救出できないからなぁ。
やはり電撃でびりびりと動けなくしておくのが一番かな?
あれは解除してからも暫くは体が上手く動かなくなるから」
アレクが言った。
「まあ、取り敢えず雷撃と重力のを作ってみて、実際に試してどのくらい効果があるか実験してみよう」
シャルロが提案した。
雷撃も重力も、あまり居心地がいいもんじゃないとは思うが……まあ、しょうがないか。
ついでに誰かにナイフを突きつけている体勢で術が放たれたらどうなるかも確認しておこう。
うっかり首にナイフを突きつけている時に雷撃を受けて、変な感じに首や頭に雷撃が強い感じに集中したなんて事になったら不味そうだ。
という事で、先日俺が鎧通しもどきで穴を開けた魔具の修理してのを工房の扉に設置して、それに捕縛結界(電撃版)を繋いで扉の取っ手とも繋ぐ。
探知結界で魔力が登録されていない人がいるとベルが鳴った際に捕縛結界の魔術回路に魔力が通るようになり、扉の取っ手を上に回すと捕縛結界の魔力が遮断され、下に回すと捕縛結界が起動するようになっている。
そんでもって捕縛結界が起動したときに警備室に繋がる呼び鈴を引くよう、『引く』という動きの魔術回路にも繋げておいた。
で。
シャルロが外に出て、俺が再び後ろから忍び込む役。
シャルロが魔力認証のプレートに触れて小屋の扉を開け、防御結界が凹む中に入っていく。
俺もシャルロの背中にナイフを持った形でその後ろに続いたら、小屋の中に入ったところでベルが鳴った。
「じゃあまず、取っ手を上に回すね」
シャルロが宣言して、上に取っ手を回して工房の中に入った。
一歩進んだところで取っ手を下に回してみたようだが、何も起きなかった。
「一度取っ手を上に回すと捕縛結界の魔術回路の魔力が解除されるから、いつも通りに上に回してから思い出して下に回しても手遅れだな。
これは完全解除は扉を開けて閉めてからってことにするか」
うっかりいつも通りに開けてから、『そういえば!』と思い出した時に対処しようがないと勿体ない。
「そうだね~。
じゃあ、もう一度外に出て今度は下に回してみるね」
シャルロがそう言いながら俺に小屋から外に出るようにと庭に向けて押してきた。
ほいほい。
もう一度庭に出て、シャルロが入るのに続き俺も入ったらやはり今回もベルが鳴る。
シャルロが徐に工房への扉の取っ手に手を置き……下に回した。
バリバリバリ!!
一気に捕縛結界の電撃が流れ出して、動きが取れなくなった。
「あばばばばば!
痛いぞ、これ!!」
痛いが体も動かない。
痛いのを無視して動くことも出来るかもと思っていたが、痛みとは関係なしに体が言う事を聞かない。
長時間あったら何とか魔力を練って結界を止めるなり自分の体の一部だけでも解放できるかもだが、時間が掛りそうだ。
と言うか。
これってスパッと止めるスイッチを入れてなかった!!!
どうするかと思っていたら、アレクが工房側の扉を開けて、取っ手を上に回した。
それで結界が解除される様になっていたのか、良かった。
「……助かった~。
かなり痛いね、これ」
シャルロがほっと息を吐きながら膝をついて言った。
「考えてみたら内側からしか止められないと困るから、廊下側の扉からも切れるようにしないとだな」
アレクが指摘した。
「ちょっと痛すぎるだろ、これ。重力のだって変に力が加わって骨折とかした困るし。
ちょっとみっともないが、警備兵用のぐるぐる巻きになる捕縛結界が一番安全じゃないか?
ちょっとこれ、痛いせいで解除した時に時間が掛りすぎると当主が煩く文句を言いそうで、駄目じゃないか?」
それこそ警備の人間に当主が捕縛結界の痛さに関して苦情とか言っていて注意がそれていたら、盗みに来た人間が逃げるなり、もう一度当主にナイフを突きつけるなりしそうだ。
泥棒を捕縛できても痛いとクレームがガンガン来そうw




