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プロローグ

拙い部分もありますが、適宜ミスなどを教えていただけましたら幸いです。

 この世に”幸せ”があるとするなら、それはどんなだろう。

 いいにおいがして、ずっとそこにいて欲しくなるのかも。

 触り心地は?もちもちして、かわいいのだろうか。

 もしくはぎざぎざして、かっこいいかもしれない。

 

 ──そうか。俺は”幸せ”を知らない。


 4月7日、春の陽光が射した道を、ずんずん進む。

 鳥のさえずりが聞こえる。なんてのはただの幻想で。

 ただ春風が吹く道を、歩いていた。

 たどり着いたここは真名古まなこ大学。

 そして今日から俺、隈ノ下純が通う大学でもある。

 必死で勉強した甲斐もあり、そこそこいい場所に入れたのではないだろうか。

 模試やオープンキャンパスで色々な所に行ったが、設備の充実度合いや荘厳さ

 等で、有名大学かどうかで差が大きかった。

 これからここに通うのかと胸にじんとくるものを感じると、

 人々の流れがどうやら自分と同じ者たちだと気が付いた。

 今日は入学式で、ホールに集められる。

 歩きながらキャンパス内を見渡せば、体育館が2つもあるんだと思った。

 俺の高校は田んぼに囲まれ、そのくせ狭い、田舎の典型的な高校だったから、

 こういうのを見ると少し感動してしまう。

 あの頃は自分にも、周りにも期待していなかった。

 だけど一丁前に不満は持つようなやつだった。

 そんな自分でも変われるような気がして、ここを受験した。

 回想と忸怩を侍らせながら、朝を恨んだ。

 …にしても、皆はもう友達ができたのだろうか、はたまた

 元々そうだったのかは知らないが、おひとり様の割合の方が少ない気がする。

 まぁ、こんな暗い雰囲気の人間に話しかけたいとは、自分でも思わないな。



 入学式も終わり手続き等も終わらせた後、

 キャンパス近くの寮の前に立っていた。

 というのも、親に無理言って一人暮らしを

 了承されたわけだが、如何せん金が無いので、

 こうして人気が一番ない寮を希望したわけだ。

 ここは、費用が少なくて済む。

 荷物はもう運び込んでもらったので、あとは整理すれば我が城の完成だ。

 インターホンを鳴らすも、反応がない。

 開いているみたいだけど、少し不用心じゃないか?

 「誰もいない…のか」

 戸を開き、中に入る。

 「今日から世話になります、隈ノ下純です」

 またも反応がない。皆出払っているのかもしれない。

 玄関の壁にネームプレートとともに鍵を発見したので、

 隈ノ下純という文字がある下の鍵を取り、自室へ向かった。

 さて、自室のある2階の一番奥に来るまでに、一つわかったことがある。

 それはこの寮が案外古びているという事。

 壁は少し黄ばみがかり、床は所々削れている。

 この大学の歴史を考えれば当然なのかもしれない。

 俺の部屋らしき前に、大量のダンボール。

 早速それらを部屋の中に入れようとしていた時、

 ガタッ!

 向かいの部屋から音がしたように思えた。

 だが今は全員出払っているんじゃ…

 ガタッ!

 …間違いない。誰かいる。

 立ちすくんでいる俺の前に、彼女は現れた。

 「ふわぁ~」

 言いながら、一人の女性が部屋から出てきた。

 あまりにラフな格好だ。寝起きだろうか。

 というか、今はもう昼過ぎなのだが。

 目が合う。こういうのって挨拶とかからなのかな。

 いや、そもそもこの人がなんなのかすらわからん訳で。

 くそ、コミュ力なんてのは何処まで行っても才能なのか!

 「ど、どうも…」

 作り笑いでどうにかこの雰囲気を良く出来ないかと思っただけだった。

 だが運が悪かった。

 「へ、へ…」

 「へ?」

 「変態!!」

 あぁ、最悪だ。 

 


 少し時間を置いたら落ち着いて頂けたみたいだ。

 居住者であるところを見るに恐らくは先輩だろう。

 「あの…」

 「はい!」

 こう人を目の前にするとどうしても緊張してしまうな…

 「もしかして、寮の新しい居住者かな?」

 「あ、すみません。自己紹介が先でした。今日からこの寮に入った、隈ノ下純です。

 今日からよろしくお願いします」

 こういう場面はしっかりしなければ。

 「うん。よろしく」

 彼女がそう言うと、

 沈黙が流れる。少し伸びをして、瞼を擦る。

 少し茶色がかった髪。

 ツインテールなんてと僕は思っていたが、この人には説得力があった。

 その綺麗なブラウンの目に吸い込まれる前に、聞いておかなければ。

 「あの、先輩…なんですよね?」

 「うん。私は小鳥遊千幸。2年生だから、君の1個上だね。」

 「小鳥遊先輩、他の居住者の人はどちらに?」

 なるべく早く挨拶しておきたかったんだけど。

 「みんなは今、多分準備してると…思うよ。」

 「準備?」

 「この大学では明日から2日間、新入生を歓迎する祭りをやるんだよ。

 学園祭みたいなね。それでサークルや部活等でそれぞれ出し物を

 するところもあるから、その準備や手伝い。」

 この大学に春祭りがあることは知っていたけど、

 まさかこんなに早いと思っていなかったな。

 「ところで、隈ノ下君!」

 「な、なんですか?」

 「君はさ、サークルどこにするかってもう決めた?」

 「いえ…特に興味があるものも無いので」

 「じゃあさじゃあさ、今日の夕方、6号館の3階に来て!」

 「え、なんでですか」

 「とにかく来てね!じゃあ私は用事あるから!」

 小鳥遊先輩はそう言うと、30分くらいで準備して出て行った。



 それから俺は一通り寮を見て回った。

 1階にはキッチン、リビング、風呂などがあり、

 2階には生徒の部屋が並んでいる。ところどころボロくはあるが、

 この低予算にしては破格の物件だった。

 何故新入生達はここを選ばないんだろうか?

 普通にマンションに一室借りるよりお得に思うんだけど。

 …事故物件だったりしないだろうな。

 俺はこういう噂とかの類は信じないが、そこに住むとなると話は別だ。

 普段は大丈夫でも、ふと夜に一人でトイレにいったりすると3割増しで怖がってしまう、

 そんなような人間だ。

 ふとこの静寂にゾクっとして、1階のテレビを点けに行く。

 リビングの窓から鳥たちの声が聞こえ、ようやく一息つく。

 ”春のおすすめコーデ”って言ったって、

 明日からが不安すぎる今の自分にとっては正直どうでも良かった。

 そうやって物事を、どこか引いて見ていた。

  


 「おっと」

 アナウンサーが午後4時を知らせる。小鳥遊先輩との約束の時間まで、

 もう少ししかない。重い腰を上げ、部屋に戻る。

 祖父母の家に行った時のような、あのどこか懐かしい匂いを嗅ぎながら、

 とりあえず荷物を全て部屋に入れて、寮を出た。



 明日から春祭りか…交友関係も定まらないこの時期なんて、

 明らかにおかしいだろ、とは言わないが、そういえば

 高校時代も球技大会はこの時期だったのを思い出した。

 そんなことを考えながら、大学をぶらついていた。

 最も大きい広場には特設ステージが設置されている。

 看板に1日目、2日目のスケジュールが書いてある。

 1日目はダンス部や軽音楽部、アンサンブル部等がここで 

 披露してくれるようだ。

 2日目は…なるほど、外部の人がトークショーをやると。

 しかもそこそこ人気のタレント達ではないか。

 テーマは『幼少期における人格形成』…ね。

 時間があれば、見に行ってみるか。



 夕方、日の色も少しずつ橙がかってきた頃。

 どこか浮ついた気持ちで、歩を進めた。

 キャンパス内の道の左右には屋台があり、色々なものがあった。

 なのでどんなものがあるか少し見ていた。

 たこ焼き、チョコバナナ、スムージー、などなど。

 室内にはどうやらパッチワーク教室など体験系もあるようだ。

 在籍人数やキャンパスのデカさを考えれば妥当なのかもな。

 どうやら黄昏ているままに約束の場所に着いたようだ。

 人気はまったくなく、異様なまでに静かだ。 

 3階に着いたが、小鳥遊先輩の姿は見当たらない。

 少し待ってみたが、どこへやら。

 日はもう落ちかけ、初日から厄介なことになったと

 頭を悩ませていた。

 にしても、さっきから奥の部屋が騒がしいな。

 小鳥遊先輩はそこにいるのかも、そう思い、部屋の前に立つ。

 「もう知らない!」

 目の前のドアが開いたかと思うと、知らない女子が怒って飛び出していった。

 部屋の奥にいる人を、俺は知っていた。

 見紛うことなどあろうものか。小鳥遊先輩だ。

 そう思ったのも束の間。

 「とりあえず入って!話はそれから!」

 「ちょっ」

 何の因果か。

 服を引っ張られ、俺はその部屋に入室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 



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